愛情物語 (1984年の映画) スタッフ

愛情物語 (1984年の映画)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/13 16:30 UTC 版)

スタッフ

製作

企画

映画監督の大林宣彦によれば、プロデューサーでもある角川春樹が大林に対し、「大林さんで、(原田知世の主演映画を)最低2、3本続けて撮ってください」と当初言っていたが、尾道での『時をかける少女』のロケ撮影を見学した角川が、カメラの前で大林にすべてを委ねる原田に嫉妬し、「自分の方を向かせたい」「2本目の知世の映画は(略)僕が自分で演出したい」として、角川自身が監督をすることになったという[2]。一方の角川は、『時をかける少女』の陣中見舞いで尾道を訪れた際、原田が2週間前のにっかつ撮影所クランクイン時と比べて、芝居が見違えるほど成長し、大林から「原田知世は天才です」という文面の手紙をもらったことで、「私がこの天才女優を第2作で本物の女優に育て上げよう」と思い立ち、「映画監督はアイドル映画を通過して、時代の息吹を肉体に吹き込むことが必要だ」という自身の信条にのっとった結果でもあったと述べている[3]

赤川次郎の原作は、映画化を前提に角川春樹の依頼で、角川書店の雑誌『小説 野性時代』に『カーテン・コール』という題名で連載され、連載終了後に『愛情物語』に改題されてカドカワノベルズから新書版が出版された[4]。「あしながおじさん」の設定は、原作の段階で設定された。これは原田主演の第1回マクドナルドミュージカル『あしながおじさん』を観劇した角川が赤川へテーマとして盛り込むよう指示したことによる[5]

撮影

角川は本作を「原田知世のプロモーションフィルム」と位置づけ、上映時間100分を100シーンのアルバム映画として構成した。これは当時新鋭のビデオメディアだったレーザーディスクでの視聴を念頭に置いた構成だった。作中のミュージカルの上演場面は当時のミュージックビデオを参考に編集と画質調整が行われた。

本作公開の前年に洋画『フラッシュダンス』がヒットし、角川は打倒『フラッシュダンス』を目標に、主演の原田を吹き替えなしで踊らせようと、米国から振付師のミゲール・ガドリューを招き、ダンサーもニューヨークから35名を招致した。原田は上記のミュージカル『あしながおじさん』に出演するために、ブロードウェイのダンサー兼インストラクターだったデビッド・ストーリーに師事しており、ダンスシーンの撮影は問題なく進められた。

角川は、渡瀬恒彦が演じる篠崎拓次に自身を仮託し、津田ゆかりが演じる拓次の妹・真理を、自殺した実妹の眞理への鎮魂と贖罪として演出した。物語中で真理が自殺する場面は、眞理の実母である角川照子がショックを受けないよう、「務めて綺麗に」撮影した。また本作の色調は赤で統一され、赤いトゥーシューズに始まり、赤いバンダナで終わる構成となった[6]

音楽

『愛情物語 オリジナル・サウンドトラック』(EASTWORLD WTP-60487~88)収録曲は以下の通り。

評価

興行成績

メイン・テーマ』との二本立て興行で約18億5000万円の配給収入を得て、1984年度の邦画作品で2位となった[1]

受賞歴

批評

文芸評論家の山本健吉や劇作家のつかこうへいは評価したが、多くの映画評論家は本作を黙殺した。また映画監督の森田芳光は、拓次の妹の自殺場面の演出について、「そういう拘りは気をつけて下さい。それが一番落とし穴ですから」「ダメですよ。情念を持ち込んで受けようというのは。映画のデザインとして面白ければ良いですけど」と角川に忠告したとされる。一方で俳優の松田優作は「自分が拓次をやったら、もっとぎゅっと美帆を抱きしめる」と語ったという[7]


  1. ^ a b 1984年配給収入10億円以上番組 - 日本映画製作者連盟
  2. ^ 大林宣彦『映画、この指とまれ』徳間書店アニメージュ#アニメージュ文庫〉、1990年、89-90頁。ISBN -4-19-669627-9 
  3. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P221
  4. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P202
  5. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P203~204
  6. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P206~207
  7. ^ 『最後の角川春樹』、2021年11月発行、伊藤彰彦、毎日新聞出版、P206~208


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