彝文字
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 14:38 UTC 版)
彝文字 | |
---|---|
類型: | 音節文字 (かつては表語文字として用いられた) |
言語: | 彝語 |
時期: | 15世紀頃-現在(音節文字としては1974年以降) |
親の文字体系: |
不明
|
Unicode範囲: |
U+A000 - U+A48F U+A490 - U+A4CF |
ISO 15924 コード: | Yiii |
注意: このページはUnicodeで書かれた国際音声記号 (IPA) を含む場合があります。 |
歴史
彝文字がいつから使われているかは明らかでないが[1]、現存する彝文字の文献は500年の歴史がある[2]。例えば雲南省禄勧イ族ミャオ族自治県の鐫字崖(せんじがい)という碑文は明の嘉靖12年(1533年)のものである。
もともとは漢字と同様の単音節の表語文字であり、縦書きに書かれた。
イ族はその住む地域が分散しており、文字は統一されていなかった。たとえば「胃」を意味する字は40種類ほどもあった。また文字数が多く不便であった。そこで1970年代から中国政府によって規範化が進められたが、このときに同じ音の字をただ一つの文字にまとめる音節文字化が進められた[3]。各地で規範化が進行しているが、代表的なものは四川省の大涼山方言を標準とした涼山規範彝文で、活字化され出版に用いられている。雲南省では楚雄方言を基本とした整理標準化が行われている。また、貴州省でもこうした動きがある。
規範彝文に採用されなかった字形(古彝文)として、Unicodeで88613字が追加提案されたことがあるが[4]、2023年現在まだ追加されていない。全ての彝文字の合計字数は少なくともそれ以上になると考えられる。
涼山規範彝文
涼山規範彝文(りょうざんきはんいぶん)は、彝文字の一種。別名四川規範彝文、あるいは単に規範彝文ともいわれ、大涼山地区で話されている北部方言のシンジャ方言を基盤とし、喜徳県(シド県)の発音を標準として作られた。 各地の彝文字のうち最も早く文字体系が整備され、1976年1月から試用が開始された。現在は四川省内での彝語出版物は全てこの文字によっている。
左から右への横書きで書かれる。文字数は819文字で、ほかに反復記号1文字がある。涼山イ語には4つの声調があるが、高平調(55)・中平調(33)・低降調(21)についてはそれぞれ無関係な文字が用いられる。中昇調(34)は中平調の文字の上に円弧を加えることで表される[5]。涼山イ語では文法的に中平調から中昇調に変調することがしばしばあるので[6]、これは理にかなっている。
涼山イ語にはゼロ子音を含めて44の音節頭子音、10の母音、4つの声調があるので、理論的には1760字が必要になるが、使われない組み合わせがあることと、上記のように中昇調を記号で表すために実際の文字の数はそれより少なくなる[7]。
規範彝文は1999年のUnicodeバージョン3.0で基本多言語面のU+A000からU+A48Fまでに収録された。登録されているのは1165文字であり、中昇調の字は合成によって表すのではなく独立した文字として扱われる[8][9]。またU+A490-A+A4CFには部首が収録されている。Windows XP以降やmacOS上で使用可能である。
- 彝文字のページへのリンク