小説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/27 06:33 UTC 版)
分類
長さ・発表形式による分類
内容による分類
- 私小説
- 恋愛小説
- 青春小説
- 冒険小説
- 推理小説(ミステリー、ミステリとも)
- サイエンス・フィクション小説(SF小説)
- ファンタジー(幻想小説)
- ホラー小説(怪奇小説)
- 歴史小説・時代小説・伝奇小説
- 武侠小説
- 児童文学
- 官能小説(劇画系、美少女系、耽美系などに分かれる。)
- 鬱小説(読後感が不快な小説)
- 教養小説
- 鍵小説
- 企業小説・経済小説
- 政治小説
- ゴシック小説
- スパイ小説
- 大河小説
- 心理小説
- 芸術家小説
- 学園小説
- 紀実小説
- 天皇小説
特殊な分類
純文学と大衆文学
小説は19世紀以降純文学的傾向のものと大衆小説的傾向のものとに分類されることが一般的となった。それ以前の小説は、セルバンテスやラブレーがそうであるように芸術性と通俗性を区分することなくひとつの目標として追求することが多かったが、小説の読者がひろがり、技法的な発達を見せるにしたがって、交通整理が行われるようになってくる。各国の事情によって多少の差はあるが、現代文学では両者の傾向を分けて考えるのが一般的である。日本の場合は純文学、大衆文学と呼ばれる。
区分が具体的になってくるのは明治末年ごろの文壇からで、大正期のメディアの発達によってこれが具体化・固定化し、芥川賞・直木賞の制定によってひとつの度として捉えられるようになった。戦前から戦後のある時期までは、純文学は芸術性を指向し、大衆文学は通俗性・娯楽性を指向するものであるという区分が明確で、「自分のために書く小説、読者のために書く小説」といった言いかたをされることもあった。この時期は純文学の主流は私小説、大衆文学では時代小説であり、それを書く作家が固定していたのも特徴である。ただし当時から一人の作家について通俗的作品、芸術的作品と分類されることもあり、単純ではない。
現在では純文学、大衆文学の境界はあいまいで、双方の作品を発表する作家、一方から他方へと移行する作家、自作について特段の区分を求めない作家が多くなってきている。実態としては純文学・大衆文学の区別は掲載誌によって行うことが一般的である。
文学賞では、芥川賞は純文学、直木賞は大衆文学の賞であり、受賞作家・作品をみればある程度捉えられていた。しかし、芥川賞作家が娯楽作品を執筆することもあり(たとえば奥泉光、宇能鴻一郎)、作家名で判断することはできなくなっている。純文学作家の三島由紀夫も大衆文学を書いている。逆に大衆文学の作家が純文学的作品を書く例もある(筒井康隆など)。また、最近では芥川賞=純文学、直木賞=大衆文学と単純に言えない例も出てきた。第二次世界大戦後、中間小説という分類をおくこともあった。
純文学小説の堕落と見る向きもあるが、19世紀的な芸術/娯楽という二項対立的分類が、現代文学の状況を正確に把握しきれなくなったためではないかという指摘もある。海外でもチャンドラーやグリーンのように通俗性を保ちつつ高度の芸術性を発揮する小説作品が少なくない。
内容・分野によれば、通俗恋愛小説、冒険小説、推理小説、時代小説、通俗歴史小説、サイエンス・フィクション、ファンタジー、ホラー小説、武侠小説などは大衆文学とすることが一般的であるが、これらの性格を持ちながら純文学とされる作品は戦前から少なくない。
- ^ 漢書 卷三十 兿文志 第十 中国語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:漢書/卷030
- ^ 「小說家者流,蓋出於稗官。街談巷語,道聽塗說者之所造也。」
- ^ 「諸子十家,其可觀者九家而已。」
- ^ 雜篇 外物第二十六。雜篇は後世の撰述と推定されている。
- ^ 原文は「飾小說以干縣令、其於大達亦遠矣」 中国語版ウィキソースに本記事に関連した原文があります:莊子/外物
- ^ 『中国小説史略』1/2 中島長文 訳 1997年 平凡社 東洋文庫 1)ISBN 978-4582806182、 2)ISBN 978-4582806199。
- ^ 『中国小説史略』上/下 今村与志雄 訳 1997年 ちくま学芸文庫 上)ISBN 978-4480083692、下)ISBN 978-4480083708。
- ^ かくしょうぎょくでん、蒋防(中国語版) (生没年不詳、一説に792-835年)作、後世ひろくながく愛読された。日本語訳は今村与志雄 訳がある。唐宋伝奇集 上『6 紫玉の釵―霍小玉伝』(今村与志雄 訳、1988年 岩波文庫)ISBN 978-4003203811、p.82-99 。
- ^ てんぎょくかんのん 京本通俗小説(中国語版) 第十巻。日本語訳は 吉川幸次郎 訳がある、『玉の観音』 1958年 平凡社 中国古典文学全集7 p.3-12 。種本とされる『警世通言(中国語版) 第八巻 崔待詔生死冤家』の日本語訳には 松枝茂夫 訳 がある、『玉細工師崔寧 幽霊妻と暮らしたこと』 1960年 平凡社 中国古典文学大系25 p.86-100 。
- ^ さくざんさいねい 京本通俗小説 第十五巻。日本語訳は 吉川幸次郎 訳がある、『崔寧の不運』 1958年 平凡社 中国古典文学全集7 p.49-60 。種本とされる『醒世恒言(中国語版) 第三十三巻 十五貫戯言成巧禍』の日本語訳には 松枝茂夫 訳 がある、『十五貫の冗談から思わぬ禍を招いたこと』 1960年 平凡社 中国古典文学大系25 p.223-238 。
- ^ 残存するのは、この2編のほか『菩薩蛮(ぼさつばん)』『西山一窟鬼(せいざんいっくつき)』『志誠張主管』『拗相公(ようしょうこう)』『馮玉梅(ふうぎょくばい)団円』の合わせて7編であり、中国古典文学全集7 及び中国古典文学大系25 のそれぞれに日本語訳されている。長沢規矩也は、「京本通俗小説」古写本の発見者 繆荃孫による偽作説を『書誌学論考』中に最初に論じており、松枝茂夫も中国古典文学大系25 p.527-528 で賛同しているが、これら7編が南宋から元代の作品であることは疑いの余地がないと述べている。
- ^ きょうこうき、宋遠(梅洞と号す、宋末-元初、詳細不詳)作とされる。日本語訳は伊藤漱平 訳がある、平凡社 中国古典文学大系38 《今古奇観 下・嬌紅記》 1973年 p.359-451 。
- ^ 中国古典文学大系38 解説 p.483、p.489 。
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