変形労働時間制 概要

変形労働時間制

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/21 05:39 UTC 版)

概要

第三十二条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
2 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。

労働基準法では1日及び1週当たりの労働時間の上限を定めているが(第32条)、実際の事業場では日や季節によって業務の繁閑が生じるのは避けられない。そこで1947年(昭和22年)に労働基準法が施行された当初は、就業規則において4週間を平均して1週あたりの労働時間が上限(当時は48時間)を超えない定めをしたときは特定の日又は特定の週において労働時間の上限を超えて労働させることができることとし(4週間単位の変形労働時間制、施行当時の第32条2項)、多くの企業がこの方法を採用していた。

1988年(昭和63年)の改正法施行により労働時間の上限が週48時間から段階的に短縮されていくことに伴い、労働者の生活設計を損なわない程度において労働時間を弾力化し、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことによって、労使の協調によって労働時間の短縮を進めていくことを目的とし、4週間単位の変形労働時間制を発展的に解消し、新たに各種の変形労働時間制を導入した。具体的には、一定の期間(変形期間)を平均して、1週間当たりの労働時間が1週間の法定労働時間(現行法では40時間、特例事業の場合は44時間)を超えないのであれば、特定の日に1日の法定労働時間(8時間)を超えたり、特定の週に法定労働時間を超えても、法定労働時間内に収まっているとして扱う(三六協定の締結・割増賃金の支払いが不要になる)。ただし、変形期間を平均し週40時間の範囲内であっても使用者が業務の都合によって任意に労働時間を変更するような制度はこれに該当しないものである(昭和63年1月1日基発1号、平成3年1月1日基発1号)。

変形労働時間制は、満18歳未満の者については適用されない(第60条)。ただし、満15歳以上満18歳未満の者(満15歳に達した日以後の最初の3月31日までの間を除く)については、1週間について48時間、1日について8時間を超えない範囲内で、1か月単位の変形労働時間制・1年単位の変形労働時間制の規定の例により労働させることはできる。また、妊産婦が請求したときは、フレックスタイム制を除き、変形労働時間制を採用している場合であっても、1週間について1週の法定労働時間、1日について1日の法定労働時間を超えて労働させてはならない(第66条)。

なお、フレックスタイム制を除き、使用者は、育児を行う者、老人等の介護を行う者、職業訓練又は教育を受ける者その他特別の配慮を要する者については、これらの者が育児等に必要な時間を確保できるよう配慮しなければならない(規則第12条の6)。また、1週間単位変形労働時間制を除き、派遣労働者を派遣先で変形労働時間制で労働させるには、派遣元において就業規則等にその旨を定めておく必要がある。


  1. ^ 「1か月単位」を労使協定によって採用できるようになったのは1999年(平成11年)からである。
  2. ^ a b c d 使用者の立場としては、労使協定に定めた場合であっても、実際に労働者を変形労働時間制で働かせるには、就業規則を労使協定の趣旨に沿って改定する必要がある。
  3. ^ a b c 「1か月単位」「フレックスタイム」は特例の適用があり、「1年単位」「1週間単位」に特例の適用がないのは、「1か月単位」は従来の「4週間単位」を引き継ぐ制度のため経過措置としての特例も引き継ぐ必要があるため、「フレックスタイム」は特例の適用に当たって労働者の意思が十分に反映される制度のためであるが、「1年単位」「1週間単位」は法改正による新制度のため特例を考慮する必要がないためである(規則第25条の2)。
  4. ^ 厚生労働省・平成30年就労条件総合調査結果の概況
  5. ^ ユニクロ、週休3日制導入へ 10時間労働で給与同水準 朝日新聞デジタル、2015年8月20日
  6. ^ ユニクロが「週休3日制」導入へーー従業員は「週4日勤務」で楽になる?キツくなる? 弁護士ドットコムニュース、2015年9月5日
  7. ^ 2019年12月5日中日新聞朝刊25面


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