名古屋電力 名古屋電灯との合併

名古屋電力

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/16 02:13 UTC 版)

名古屋電灯との合併

福澤桃介

名古屋電力が八百津発電所の工事に苦戦する中、名古屋電灯では東京の実業家福澤桃介による株式買収が進行していた。各地で電気事業に投資していた福澤は、1909年より名古屋電灯の株式買収に着手して1910年上期には1万株を持つ筆頭株主となり、同年1月取締役に就任、5月には常務に就いた(創業者三浦恵民も常務在任のまま)[16]。名古屋電灯常務となった福澤は、自社と名古屋電力を比較して、発電力が自社の2倍近く、払込資本金も2倍近い差[注釈 5]がすでにあり、経営陣も実業界の大物、という条件を揃える名古屋電力が開業すれば著しい脅威となるとみて、すぐさま名古屋電力の合併に乗り出した[15]

福澤の合併提起に、名古屋電力側では工費の膨張で増資ないし借入が必要だが当時の不況下では難しいという事情があったため、同社経営陣は賛同の意を示す[15]。特に兼松煕が同社株主に対して説得にあたった[15]。一方、名古屋電灯側では士族や旧愛知電灯系の株主が合併に反対していたが、福澤自身が名古屋に滞在し2週間彼らの翻意に努めた結果、合併後の配当減少に備えて合併比率を2対1に留め差額を配当補充金として積み立てるという案で名古屋電灯株主も合併賛成で意見一致をみた[15]。愛知県知事深野一三・名古屋市長加藤重三郎の仲介により1910年7月21日、両社間に合併に関する覚書が交わされる[15]。次いで8月3日合併仮契約が調印され、8月26日両社の株主総会にて合併が承認されて合併が確定した[15]

1910年10月13日付で逓信省の合併認可が下りたのをうけて10月28日に合併手続きが執られ、名古屋電力は名古屋電灯に合併されて解散した[15][1]。合併に伴い名古屋電灯では資本金を525万円から775万円へと増資し、新株5万株を名古屋電力の株主に対して持株2株につき1株の割合で交付するとともに、合併契約に従い翌11月18日の株主総会にて役員を増員し、名古屋電力側から兼松煕・上遠野富之助・斎藤恒三を取締役に、神野金之助・桂二郎を監査役にそれぞれ指名している[15]。直後、福澤は会社経営の意志がないとして常務をいったん辞任、これを兼松に譲った[15]

合併に伴い名古屋電灯に引き継がれた八百津発電所(出力7,500キロワット[12])の工事は、名古屋市内の変電所ともども1911年(明治44年)に完成し、同年12月10日より八百津発電所からの送電が開始された[7]。完成に伴い、翌1912年(明治45年)4月には工事用の旅足川発電所を町営電気事業を企画する地元八百津町へと売却している[15]。また名古屋電灯・名古屋電力両社が木曽川上流部に獲得した水利権については、福澤が常務に復帰した後の1914年(大正3年)に立ち上げられた名古屋電灯社内の「臨時建設部」によって建設計画の具体化が進められ、同部の分社化によって1918年(大正7年)に設立された木曽電気製鉄ならびにその後身大同電力によって順次開発されることになる[17]


注釈

  1. ^ 社名の英訳例:The Nagoya Electric Powers Co., Ltd.(山川朝三・大崎二郎 編『英和対照全国銀行会社決算報告集』、明治堂、1909年)。
  2. ^ 岐阜県出身の実業家で当時甲武鉄道取締役。1910年に愛知電気鉄道名古屋鉄道の前身)初代社長となる[5]
  3. ^ 愛知郡千種町御器所村中村愛知町八幡村および西春日井郡枇杷島町西枇杷島町金城村清水町杉村六郷村[8]。西枇杷島町は現・清須市、他は現・名古屋市。
  4. ^ 相良は1907年6月辞任。その他の役員の動きには、桂二郎の監査役就任(1907年6月就任)、吉田高朗の取締役就任(1908年6月就任)がある[4]
  5. ^ 当時の払込資本金は名古屋電灯の265万円に対し名古屋電力425万円[15]

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