博多人形 世界人類風俗人形

博多人形

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/11/22 11:26 UTC 版)

世界人類風俗人形

博多人形は、1890年(明治23年)の第3回内国勧業博覧会と1900年(明治33年)のパリ万国博覧会に出品され、その名は国内のみならず、海外でもたいへん話題となった。現在、東京大学総合研究博物館には、パリ万博で話題を集めた博多人形の技法を用いた「世界人類風俗人形」が収蔵されている。これは、1910年(明治43年)から1913年(大正2年)にかけて製作されたもので、かつては開発者である井上清助の名を付して「井上式地歴標本」とよばれていた。井上は、東京帝国大学の人類学教授坪井正五郎松村瞭などの当時の第一級の学者を監修者に仰ぎ、服飾歴史民族の差異を学ぶ人類学民俗学などの教材として人形を開発した。同種のものとしては、「日本帝国人種模型」がある。

「世界人類風俗人形」は、きわめて彩色豊かに精緻につくられており、当時の売価は1体あたり1円50銭ほどであったという。

井上清助には、中ノ子家より中ノ子吉兵衛の孫、中ノ子キクが嫁入りしており、この際に中ノ子家から多くの人形型や技法が井上清助に渡った。

製法

博多人形は、素焼き土人形である。古い時代の博多人形は、以下の工程である。

  1. 粘土で原型を作り、原型を乾燥させる(場合によっては焼成する)
  2. 乾燥した粘土を、板状にした柔らかい粘土で覆い、型を取る
  3. 型の粘土を焼成する
  4. 焼成した粘土型に柔らかい粘土を押し込み、複製を作る(人形内部は中空)
  5. 複製を焼成する
  6. 貝殻を細かく砕いて作った胡粉の中に漬ける
  7. 彩色し、完成

一方、現代の博多人形は、以下の工程である。

  1. 粘土で原型を作る
  2. 生乾きの状態の原型に石膏を掛け、石膏型を取る
  3. 石膏型に粘土を押し込み、複製を作る(人形内部は中空)
  4. 複製を焼成する
  5. 胡粉、または化学塗料にて白く着色し、その後、彩色をして完成。

上記5の中で、化学塗料を使う工程は本来禁止されていたが、昭和初期に主に輸出用として人形を作り始めた際、大量生産をする過程でどうしても胡粉彩色が不可能になり、工程として許可された経緯がある。現在では主に、数百円 - 数万円程度の博多人形には化学塗料が、数万円 - 数十万円の博多人形には胡粉彩色が行われているが、伝統を守るという意味では、胡粉彩色の博多人形こそ本来の形と言える。

博多人形の代表的なジャンル

田中勇博多人形
    • 博多人形を代弁するジャンルとして知られるが、時代の美人の移り変わりによって、人形の表現も大きく変化している。
  • 武者もの
  • 縁起もの
黒田節
  • 童もの
    • 美人ものと並んで、時代の変化をとりいれた表現がためされているジャンル。
  • 節句もの
  • 道釈もの
    • 仏教や、道教にまつわる説話に題材をとる。十牛図になぞらえた牛乗りの少年など。
  • 玩具
    • 箱庭道具、おはじき、土笛など。
  • 干支もの

[6]

その他にカテゴリー別けとして、「古形博多人形」と「現代博多人形」の2つがある。

古形博多人形は主に、中ノ子吉兵衛時代の面影を残す「中ノ子型」と呼ばれる伝統的な造形を特徴とするもので、中ノ子型から派生した今宿人形や津屋崎人形もこの形を基本としている。土型が主流であり、一部は「博多人形祖型」として福岡県民俗文化財(福岡県指定文化財一覧)に指定されている。現在では中ノ子勝美が制作した人形が一部で流通している。

現代博多人形は、中ノ子吉三郎が初代組合長を務めた現・博多人形商工業協同組合の組合員で構成される人形師が制作する人形で、石膏型を用いた造形を特徴とする人形である。


  1. ^ 中ノ子家系譜、中ノ子富貴子への聞き取り調査[1999]、及び博多人形商工業協同組合『博多人形沿革史』2001年3月P116
  2. ^ 大山祗神社資料館展示室内・系譜掛軸
  3. ^ 中ノ子家陶師人形師系譜
  4. ^ 一旦途絶えた宗七焼はその後、安河内福岡県知事の命によって中ノ子市兵衛が宗七焼を復刻制作し、中ノ子市兵衛・勝美系統に製法が伝えられている
  5. ^ 博多人形商工業協同組合『博多人形沿革史』2001年3月P162
  6. ^ 博多人形商工業協同組合『博多人形沿革史』2001年3月P2-3


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