内生生物
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海洋性の後生動物と原生生物の内生渦鞭毛藻
Symbiodinium属の内部共生性の渦鞭毛藻は褐虫藻として知られている[6]。褐虫藻の宿主生物としてサンゴや軟体動物(特にオオシャコガイTridacna gigas)、海綿動物、有孔虫が確認されている。褐虫藻は光合成により宿主にエネルギーを与える。サンゴがこのエネルギーを利用する結果、炭酸塩が沈殿し、サンゴ礁が形成される。
Symbiodinium属には多数の種が含まれる。中には宿主に特異的な系統群も存在する。しかし多くの場合、Symbiodinium属藻類の分布は環境要因により決定されている。サンゴが環境ストレスを受けたときのサンゴの応答、死滅(白化)やその再生はこの内生生物の分布に影響される。
原生生物の内生生物
Mixotricha paradoxaはミトコンドリアを持たない原生生物である。しかし、宿主特異的な細菌を細胞内に保有し、ミトコンドリアと同様の機能による恩恵を受け取っている。Mixotricha属はまたこれとは別に3種類の内生菌を細胞表面に持つ。
繊毛虫のミドリゾウリムシParamecium bursariaは、緑虫藻と呼ばれる緑藻と共生している。
有殻糸状根足虫の一種Paulinella chromatophoraには藍藻が内部共生している。この共生関係は比較的近年の進化で獲得したことが示唆されている。
昆虫の内生細菌
昆虫の内生生物は一次と二次の2つに大別される。一次内生菌(Primary endosymbionts: P-endosymbionts)は数百万年以上(数千万から数億年間の場合もある)にわたって昆虫との偏性共生を続けてきた。二次内生菌(Secondary endosymbionts: S-endosymbionts)の共生関係はこれよりも新しい。二次内生菌は血リンパの中に生息し、個体間に水平伝播する。二次内生菌は昆虫に特異的ではなく、他の生物にも感染し得る(下記参照)。また偏性ではない。
昆虫の一次内生菌についての研究はエンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)とその内生菌Buchnera sp. APS[7]、ツェツェバエ(Glossina morsitans morsitans)とその内生菌Wigglesworthia glossinidia brevipalpis、シロアリとその内生原生生物で研究が進んでいる。これら内生生物は、昆虫内部から取り出すと室内条件で培養できない。宿主昆虫は内生細菌なしでは、特殊な飼料で生き続けられるが不健康となり、長くとも数世代しか続かない。
いくつかの昆虫群において内生菌は、菌細胞(英: bacteriocyteまたはmycetocyte)と呼ばれる特殊な宿主細胞に生息し、母系伝播される、すなわち、母親の内生菌は子孫に垂直伝播される。ブクネラ属(Buchnera)などの内生菌は卵の内部へと伝播される。ウィグルスウォーチア属(Wigglesworthia)などは体液を介して発生途上の胚に伝播される。シロアリの内生生物については水平伝播の機構が明らかになっている。内生生物は後腸に生息し、コロニー内での栄養交換(アリ・ハチなど社会性昆虫が相互または成虫と幼虫間で口からの分泌物を交換・伝達すること)を介して伝播される。
一次内生菌は宿主体内で養分を摂取し代謝産物を生み出すことで宿主に利益を与える。利益とは、代謝産物が宿主にとって、宿主が自力で得ることが難しい栄養素となることである。もしくは、宿主の代謝経路によって生み出されるが宿主にとって有毒な老廃物を、一次内生菌が更に代謝して無毒化することである。例えば、ブクネラ属細菌の主な役割は、アブラムシが植物の樹液から得ることができない必須アミノ酸を合成することである。同様に、ウィグルスウォーチア属細菌の主な役割は、ツェツェバエが食べる血液から得られないビタミンを合成することであると推測される。シロアリの内生原生生物の主な役割は、宿主が食べる食物繊維のリグノセルロース質を分解することである。
内生細菌とっても内部共生は利益を与える。主な利点としては、捕食者との遭遇機会と他の細菌種との競合機会の減少、宿主による栄養素の十分かつ安定的な供給、環境の安定性である。
昆虫の偏性内生細菌のゲノムは既知の細菌で最小である。非内部共生性の密接な近縁細菌種と比較すると、偏性内生細菌は多くの遺伝子を失ったことがわかる。損失した遺伝子はいくつかは昆虫の内部共生において必要ないものと推測されている。
偏性共生細菌への攻撃は宿主昆虫の殺傷につながる。病原虫や食害虫といった害虫駆除の方法の一つとして注目されている。例えば、アブラムシは農作物にとって害虫であり、ツェツェバエはアフリカ睡眠病の原因原虫ブルーストリパノソーマ(Trypanosoma brucei)の媒介者である。他に、昆虫の偏性共生細菌の研究目的には細菌の遺伝学と分子生物学についての研究がある。外部の自然環境で生息する細菌が持つ遺伝子の多くを喪失して、共生細菌はどのようにして生育するのだろうか。
エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)は少なくとも3種類の二次内生菌を保有する。Hamiltonella defensa、Regiella insecticolaそしてSerratia symbioticaである。H. defensaは寄生虫からの宿主の防御を助ける。ツェツェバエは二次内生菌Sodalis glossinidiusを保有する。この細菌は、中腸と血リンパといった宿主組織の細胞間および細胞内に生息する。ツェツェバエとこの二次内生菌について、この2種の進化に系統発生学的な相関性はない[8]。ツェツェバエの一次内生菌Wigglesworthiaとは異なり、Sodalisはin vitroで培養できる[9]。
内部共生ウイルスと内在性レトロウイルス
ある種のレトロウイルスは胎生哺乳動物に内部共生する。胎生動物が妊娠してこの内在性レトロウイルス(endogenous retrovirus, ERV)は活性化され、大量に繁殖させられる。その役割は第一に、免疫抑制剤、おそらく母親の免疫系から胚を保護するため、と考えられている。免疫系は他個体の細胞を認識するとそれを攻撃するため、子となる胚を母親の免疫系から防御することは妊娠の成功に重要である。第二の役割は、ウイルス融合タンパク質を生産して胎盤合胞体を形成し、母体と胚との間で遊走細胞の交換を制限することである。胚発生中、母親の血液細胞は胚の上皮細胞間に入り込むことができるようになり、挿入が生じると上皮は不良となる。
ERVは元来、外部の感染性レトロウイルスであったが、進化を経て内生生物となった。免疫抑制機能は本来、感染のための能力であった。融合タンパク質は、細胞の一つに感染した後に、近接する他の細胞と感染細胞とを融合させることによって感染を拡大させる方法でしかなかったかもしれない。現代の胎生哺乳類の祖先は、このウイルスに感染した後の進化で誕生したと考えられている。おそらく、この感染によって胎児が母親の免疫系から生き延びる能力は向上したのであろう[10]。
ヒトゲノムプロジェクトにより24科、数千種のERVが発見された[11]。
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- ^ The Viruses That Make Us: A Role For Endogenous Retrovirus In The Evolution Of Placental Species (by Luis P. Villarreal)
- ^ Villarreal LP (October 2001). “Persisting Viruses Could Play Role in Driving Host Evolution”. ASM News (American Society for Microbiology). オリジナルの2009年5月8日時点によるアーカイブ。 .
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