健康保険組合
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課題
財政問題
健康保険組合連合会によると、平成30年度は赤字組合は866組合で、全組合の6割を超える。組合合計の赤字額は▲1,381億円の見込みとされる。義務的経費(法定保険給付および支援金・納付金等)について、保険料収入で賄えていない組合は351組合あり、連合会の調査に回答した組合の25.6%を占めた。
2018年(平成30年)3月1日時点での平均保険料率は9.215%(調整保険料率含む)で、平均保険料率の増加は11年連続である。料率を引き上げた組合は172組合(回答組合の12.5%)で、平均引き上げ料率は0.622%(8.792%→9.414%)である。協会けんぽの平均保険料率(10.00%)以上の組合は、313 組合(回答組合の22.8%)にのぼる[2]。
これらの要因として、被保険者数の増加が保険料収入増加の最も大きな要因となったものの、被保険者1人当たり額は486,042円で、前年度比3,084円、0.64%増加し、後期高齢者医療制度施行前の平成19年度と比べると102,430 円、26.70%増加し、「拠出金負担が組合財政を圧迫している状況に変わりはない」「今後、団塊世代の高齢化(75歳への到達)が進めば、より重い負担となることは確実である」としている[2]。
健保組合の解散
後期高齢者医療制度への負担金で、保険料率が10%を超えると、保険金負担の重さから解散する組合が出て、多数の加入者が、中小企業の社員らが加入する協会けんぽに移れば、国費負担増加に拍車がかかる[10]。全国健康保険協会理事長の安藤伸樹も2018年に「高齢者医療費の負担が大きく、現役世代の負担が限界であることを改めて示している」と指摘している[11]。
- セイノーホールディングス傘下の西濃運輸などで構成される西濃運輸健康保険組合(加入者57,000人)が後期高齢者医療負担金に耐えられず、2008年8月1日付けで解散し、協会けんぽに移行した[12]。この西濃運輸健康保険組合は、各地に保有していた保養施設等を売却することなく解散したため、実質的な不良債権を協会けんぽが引き継ぐ事態となった(第26条により、解散により消滅した健康保険組合の権利義務は、協会けんぽが引き継ぐことになる)。
- 名古屋市の職員健保は、高齢者医療負担金の増加と職員減少により、2008年12月31日に解散し、地方公務員共済へ移行した[13]。
- 株式会社京樽の健保組合は、高齢者医療負担金の増加により、保険料率を10%以上引き上げる試算となったため、2008年に解散し、協会けんぽに移行した[14]。
- 新潟運輸健保組合は、高齢者医療負担金と加入者給付の増加により2009年に解散し、協会けんぽに移行した[15]。
- 派遣労働者とその家族の約51万人が加入する、日本第2位の規模である健康保険組合「人材派遣健康保険組合」が、2018年(平成30年)9月21日に組合会を開き、高齢者医療負担金の増加と財政悪化を理由に、2019年(平成31年)4月1日付で、健保組合を解散することを決めた[16]。2008年の協会けんぽ発足以来、最多の移行者数となる。
2009年のOECD報告では、小規模の健保組合が多数存在する状況であるため、保険者の効率性を高めるために保険者を統合し総数を減らすよう勧告している[1]。
2015年5月27日の参議院本会議で成立した「医療保険制度改革関連法」による医療保険制度改革等の一環として、被用者保険者の後期高齢者支援金について、より負担能力に応じた負担とする観点から、総報酬割部分を2015年(平成27年)度に1⁄2、2016年(平成28年)度に2⁄3に引き上げ、2017年(平成29年)度から全面総報酬割を実施することとなった。
併せて全面総報酬割の実施時に、前期財政調整における前期高齢者に係る後期高齢者支援金について、前期高齢者加入率を加味した調整方法に見直すこととされ、前期高齢者負担金の負担軽減を図ることとなった。もっともこれは、被保険者の標準報酬平均の低い協会けんぽにとって、保険料を現状維持できる見込みが立つことになるが、大企業中心の健康保険組合にとっては、実質的な負担が増すことになる。
- ^ a b "Chapt.3". OECD Economic Surveys: Japan 2009 (Report). OECD. 2009年8月13日. doi:10.1787/eco_surveys-jpn-2009-en. ISBN 9789264054561。
- ^ a b c 平成30年度健保組合予算早期集計結果の概要 (PDF) (Report). 健康保険組合連合会. 23 April 2018.
- ^ 『令和2(2020)年度 国民医療費の概況』(レポート)厚生労働省、2022年11月30日 。
- ^ 平成25年版 厚生労働白書 (Report). 厚生労働省. 資料編 p26.
- ^ 業種を問わず、多くの大企業が健康保険組合を有しているが、一方でJRAや日本相撲協会などの団体も健康保険組合を有している。
- ^ 『平成30年度健保組合予算早期集計結果の概要(資料編)』(プレスリリース)健康保険組合連合会 。
- ^ 健康保険法上の厚生労働大臣の権限の多くは地方厚生局長又は地方厚生支局長に委任されているが、健康保険組合の設立の認可については委任されていない。
- ^ 昭和20年代頃までは「入院中の栄養品料の支給」を付加給付として認めていたが(昭和23年2月5日保発147号)、昭和30年代以降、「法定給付と併せ行い得る」旨の行政指導が強化され、認められなくなった。
- ^ 年度健保組合決算見込の概要 (PDF) (Report). 健保連. 9 September 2016.
- ^ “健保組合、平均料率が過去最高 高齢者医療への拠出響く”. 朝日新聞. (2018年4月24日)
- ^ 橋本佳子 (2018年10月10日). “75歳以上の負担「2割」か?「現役世代の負担は限界」「反対」 医療保険部会、高額薬剤「保険外併用療養」の活用検討”. m3.com (エムスリー) 2018年10月13日閲覧。
- ^ “西濃運輸の健保組合、解散 高齢者医療改革で負担増”. 共同. (2008年8月21日). オリジナルの2014年3月17日時点におけるアーカイブ。
- ^ “名古屋市健保が12月解散へ 全国14組合が共済へ移行”. 共同. (2008年9月17日). オリジナルの2015年6月10日時点におけるアーカイブ。
- ^ “京樽健保組合が解散 高齢者医療費の負担倍増で”. 共同. (2008年9月9日). オリジナルの2015年7月13日時点におけるアーカイブ。
- ^ “「新潟運輸健保組合」が解散”. 新潟日報. (2009年6月4日)
- ^ 西村圭史 (2018年9月21日). “国内第2位の健康保険組合、解散を決定 51万人が加入”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社) 2018年10月12日閲覧。
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