付値 付値の延長

付値

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/19 03:10 UTC 版)

付値の延長

L の部分体と同型となる体を K とする。K の付値[9] vK に対して、L の付値 vL が存在して

を満たすとき、賦値 vL は賦値 vKL への延長または拡張であるといい、vKvLK への縮小または制限であるという。

付値の延長の存在性について、加法付値に対しては、体 K の任意の拡大体 LK の加法付値 v に対して、vL への延長となる、階数が v の階数と等しい付値 vL が存在する。 また、乗法付値に関しては、非アルキメデス付値は(階数が 1 以下の加法付値である)指数付値と一対一の対応が付けられるので、上記のことから、任意の拡大体に対して与えられた非アルキメデス付値の(非アルキメデス付値である)延長が存在する。 アルキメデス付値に関しては、任意の代数拡大体に対して、与えられたアルキメデス付値の(アルキメデス付値である)延長が存在するが、非アルキメデス付値の場合と異なり、代数拡大ではない拡大体に対して与えられたアルキメデス付値の延長が存在するとは限らない。

例えば、複素数体上の絶対値を、複素数体上の 1-変数有理関数体 C(t) に延長することはできない[10]。しかし、有理数体上の絶対値は実数体上に延長できるので、代数拡大以外の拡大体への延長が全く存在しないというわけではない。

L の付値 v の部分体 K への縮小で得られる付値 vK は、v に対して一意的に決まるが、付値 vKL への延長で得られる付値は v だけとは限らない。LK の有限次拡大体であるとき、最大 [L : K] 個の互いに同値ではない vK の延長となる付値が存在する。より正確には次が成立する。

K に対する加法付値を v とする。LK の有限次代数拡大体とし、w1, ... , wnvL への互いに同値ではない延長全体とする。v, wi それぞれの剰余体、値群をそれぞれ F, Fi, G, Gi とし、ei = #(Gi/G), fi = [Fi  : F] とおくと、

が成立する。 なお上式において、例えば v が離散付値であり LK 上分離拡大であるならば、等号が成立する。

この定理に現れる ei, fiwiv に対する分岐指数剰余次数(または相対次数)という。

ある i に対して ei = 1 となるとき、wi不分岐であるといい、ei > 1 であるとき分岐するという。さらに fi = 1 となるとき、wi完全分岐であるという。 特に g = 1 つまり、v の延長が同値なものを除いて w しか存在しないとき、wv に対する分岐指数 e および剰余次数 f を、LK に対する分岐指数および剰余次数(または相対次数)という。さらに L の剰余体が K の剰余体の分離拡大であるとき、e = 1, f = [L : K] であるならば拡大 L/K不分岐e = [L : K], f = 1 であるならば拡大 L/K完全分岐であるという。


  1. ^ 一般に 1 を含む任意の環 R の加法付値に対して、Rv, が定義され、それぞれ R の部分環、Rv のイデアルとなるが、R が体以外の場合、一般には付値環の持つ多くの性質を有しないので、付値環を体上の加法付値の下で定義する。
  2. ^ 一般に、順序群 G に対して、この様な性質を満たす部分群を孤立部分群という
  3. ^ この n は加法付値の階数に等しい。
  4. ^ 文献によっては、値群が Z の部分群となるとき離散付値という場合がある。
  5. ^ 離散付値ではない加法付値に対する付値環は、ネーター環にはならない。
  6. ^ 乗法付値のことを単に付値という場合がある。また、加法付値のことを付値、乗法付値のことを絶対値と言う場合もある。
  7. ^ このことは乗法付値の条件3 と同値である。
  8. ^ アルキメデス付値 |•| および r ≥ 0 に対して、Rr = {α ∈ K | |α| ≤ r} とおくと、Rr が環になるのは、Rr = {0} の場合に限る。
  9. ^ 単に「付値」といった場合、加法付値か乗法付値かは問わないものとする。
  10. ^ しかしながら、C(t) にはアルキメデス付値が存在する。
  11. ^ 添字の 1, ... , n は単に区別のためのものであり、p-進付値を指しているわけではない。後述の独立性定理、積公式も同じ。






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