リエナクト リエナクトの概要

リエナクト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/04/28 06:42 UTC 版)

ワーテルローの戦いの再現において、軍服を着てマスケット銃を射撃するリエナクター。(2011)

ヒストリカル・リエナクトメント(Historical reenactment)、リエナクトメント(Reenactment)とも呼ばれる。

教育、歴史の研究及び兵士達への顕彰、また娯楽の面を持ち[1]参加者の多くはアマチュアエキストラで、必要な被服や装備、また銃器等は自分達で購入または自作、改造する等して用意している。 歴史の再現は特に軍事組織に重点がおかれ、世界では古代から近代まで様々な時代の歴史再現が行われているが、特に欧州におけるナポレオン戦争アメリカ合衆国における南北戦争の再現イベントは盛んで、数千人の参加者が参加している。

日本国内では第2次世界大戦及びベトナム戦争における戦闘の再現が盛んである他、各地の戦国時代武者行列を再現した祭り等もリエナクトメントの一環と言えるであろう。

日本国内のリエナクトメントにおける、日本陸軍リエナクターの突撃

また、このリエナクトへの参加者を「リエナクター=Renactor」と呼ぶ。

歴史

トーナメントの主と赤いバラの騎士の間の馬上槍試合、1839年のエグリントントーナメントリトグラフ

リエナクトと関連する活動は長い歴史を持っており、古くはローマ時代に彼らの帝国を築いた戦いを再現し、コロセウムのショーとして行われた。 17世紀にはイギリス、ロンドンでイスラム諸国との戦闘の再現が人気を博し、19世紀には中世の戦いを再現する演劇やトーナメント試合が観客を引き付け、定着していく。 現在、もっともリエナクトメントが盛んな国の一つ、アメリカ合衆国では1960年頃から南北戦争100周年を記念した戦場再現が行われるようになり、1980年代には参加リエナクターが6000人を超えたと言われる。 その後も南北戦争の再現は人気で、今日では全国で毎年100回以上の南北戦争の再現が行われている。


日本では1895年に始まった、京都で行われる時代祭も歴史再現=リエナクトメントと言える。 起源は定かでは無いが、各地方で行われる戦国や平安時代を模した行列、祭りもリエナクトの一環である。

日本でのリエナクトメントと言う言葉が導入されたのは1990年代後半で当時行われだしたベトナム戦争を模したイベントにおいて使用されるようになった。

日本最大のベトナム戦争イベント「アホカリプス」におけるアメリカ陸軍特殊部隊の再現グループ

その後第二次世界大戦の被服、装備の愛好家が各地でリエナクトを冠したイベントを開催するようになり、今日に至っている。 2000年代に入ると、それまで当時の姿を模していればリエナクト、と考えて来た主流派から、可能な限り当時の生活、行動を細部に至るまで再現しようというプログレッシブ派が生まれ出している。 プログレッシブ派の活動は、それまで個人の趣味の延長であったリエナクトを退役軍人会や自治体等とも関係を持つ社会的な活動へつなげている[2]

リエナクター 再現者

リエナクター(Rennactor)はリエナクトメントに参加する者、または個人でリエナクトを行う者の総称である。

多くは各時代、各陣営、組織の特に軍人を再現する事が多いが、本来は過ぎた時代を再現する全ての者を総称すべき呼名である。

リエナクターには様々な形態があり、それはしばしば議論の種にもなる。 リエナクターの再現には一定の決まりが無く、本人または他者がリエナクターだと思えばその通りになると言う風潮が原因となっている。 これは世界的にもしばしば問題になっている。

アメリカ合衆国で人気の北軍に扮するリエナクター

リエナクターのカテゴリー

リエナクターはその再現に関する信ぴょう性のレベルに基づいて、いくつかの広く定義されたカテゴリに分類(または自己分割)される。 [3] [4] (これらの定義と分類は、主に米国のものである。他の国ではスラング、定義の用語が異なる。)。

Farbs ファーブス

「Farb」や「ポリエステルソルジャー」[5] と呼ばれる分類がある。 これは再現にあたって必要な被服、装備また身の回り品などに費やす研究と資金を比較的少なくして臨むリエナクターを指している。 具体的には材質や色、またはデザインがまったく異なる衣類、靴、装備を用いたり、時代に合わない身の回り品(眼鏡、タバコ、飲料容器等)を使用する者を指している。

「Farb」(および派生形容詞「farby」)という単語の由来は不明だが、諸説がある。

*「"Far be it from authentic"=本物から遠い」[6] *「"Far Be it for me to question/criticise"=私は質問もする事が出来ない」 *「"Fast And Researchless Buying"=拙速で研究の無い購入」 *「"Forget About Research, Baby"=研究。何それ?」

Mainstream 主流

主流となる多くのリエナクターは、本物の兵士のように見える努力をしているが、目立つ部分以外ではそれを維持しない事がある。 具体的には以下のような特徴がみられる。

外から見える被服や装備はきちんと揃えるが、下着や見えない部分に現代品を使用したりしている。 通常の食事では比較的再現されたものを食べるが、合間に現代の物を食べたり飲んだりしている。 昼間はきちんとした兵士のように振る舞いるが、夜間は普通のキャンプのように現代の寝床、酒、電灯で楽しむ。 日本国内においては、この主流派はサバイバルゲームを楽しむ者が多く、リエナクトとサバイバルゲームの境界が明確では無い。

Progressive プログレッシブ

日本におけるWW2アメリカ陸軍第100歩兵大隊の戦闘再現。

ファーブの反対に位置する極端な例で「ハードコアの本物」または「プログレッシブ=発展的」と呼ばれる分類である。

「筋金入り」と形容される事もあるプログレッシブは、可能な限りの再現性を求め、必要な被服や装備に拘ると同時にその生活様式を再現している。 兵士の生活は決して楽では無い。暑さ寒さ、雨、雪その他あらゆる気候と気象の元で当時の被服、装備のみを使用しての生活が求められる。 また食事も再現した物に限定され、それは現代人を満足させるには不十分な味と量となる。 この「没入型」の再現状況を体験する事が、プログレッシブの目的であるともいえる。

しかし、プログレッシブには問題がある。 それは、他の主流派やファーブを受け入れがたい点である。 これはしばしば国内のイベントにおいて問題となるが、アメリカ合衆国や欧州でも同様である。


  1. ^ リエナクト(Reenactment)”. www.eonet.ne.jp. 2021年7月8日閲覧。
  2. ^ リエナクト(Reenactment)”. www.eonet.ne.jp. 2021年7月8日閲覧。
  3. ^ Strauss. "In the United States, hobby organizations participate in the public reenactment of historical events. The most popular is Civil War reenacting, which can be viewed as a manifestation of the unresolved nature of that war ... Among reenactors, the quest for historical authenticity is considered a core value."
  4. ^ Stanton. p. 34
  5. ^ Hadden pp. 209, 219
  6. ^ Hadden p. 8. "Ross M. Kimmel states that it was used at the Manassas reenactment in 1961 ... George Gorman and his 2nd North Carolina picked up the term at the First Manassas Reenactment in 1961 and enjoyed using it constantly with condescension and sarcasm directed toward other units."
  7. ^ a b Lowenthal, David, ed. (2015), “Replacing the past: restoration and re-enactment”, The Past Is a Foreign Country ? Revisited (Cambridge: Cambridge University Press): 464?496, ISBN 978-0-521-85142-8, https://www.cambridge.org/core/books/past-is-a-foreign-country-revisited/replacing-the-past-restoration-and-reenactment/85D12C84DD94F5010CDFFC5C348101F3 2020年12月3日閲覧。 
  8. ^ Thompson, Jenny. Wargames: Inside the World of 20th Century Reenactors (Smithsonian Books, Washington, 2004). ISBN 1-58834-128-3ISBN 1-58834-128-3
  9. ^ リエナクト(Reenactment)”. www.eonet.ne.jp. 2021年7月8日閲覧。
  10. ^ Joseph B. Mitchell, quoted in Brown, Rita Mae (1988年6月12日). “Fighting the Civil War Anew”. The New York Times. https://www.nytimes.com/1988/06/12/travel/fighting-the-civil-war-anew.html 2020年12月3日閲覧。 
  11. ^ Auslander, Mark (2013). “Touching the Past: Materializing Time in Traumatic "Living History" Reenactments”. Signs and Society 1: 161?182. doi:10.1086/670167. https://www.journals.uchicago.edu/doi/pdfplus/10.1086/670167. 


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