ラヴ・ミー・ドゥ 背景・曲の構成

ラヴ・ミー・ドゥ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/15 17:49 UTC 版)

背景・曲の構成

「ラヴ・ミー・ドゥ」は、1958年から1959年にかけて不登校生だった当時16歳のポール・マッカートニーによって書かれた作品で[8]ジョン・レノンはミドルエイトを書いた[8][9]。作者クレジットはレノン=マッカートニー[注釈 1]で、レノンは「『ラヴ・ミー・ドゥ』はポールの曲だ。僕らが本格的な作曲家になる前、ハンブルクの頃から曲を持っていたのを知ってるよ」と語っている[10]

「ラヴ・ミー・ドゥ」は、G7とCコードを基調とした楽曲で、ミドルエイトのみDに移るというコード進行となっている。レノンが演奏したブルージーかつドライなハーモニカのリフ[11]から始まり、レノンとマッカートニーによるツイン・ボーカルが加わってくる。

当初はレノンがタイトルセクションを歌っていたが、フレーズに重なるかたちでハーモニカのパートが追加されたため、ハーモニカを演奏するレノンではなくマッカートニーがこの部分を歌うことになった[12][13]。この処置について、マッカートニーは「そのセッションまではこの部分を歌うのはジョンの担当だった。だけど歌詞がハーモニカのソロに被るから、"Love me do"の部分で止まってしまう。そこでジョージ・マーティンがハーモニカをフィーチャーするアイデアを出して、急遽僕がリードをとることになった。本当に緊張したよ。今聴いても緊張して声が震えているのがわかる」と語っている[13]

レコーディング・リリース

「ラヴ・ミー・ドゥ」は、EMIレコーディング・スタジオで3回にわたってレコーディングされ、それぞれドラマーが異なっている。

レコーディング日 備考
1962年6月6日 EMIのオーディションでのレコーディング。ドラムは当時ビートルズのドラマーだったピート・ベストが演奏[14]。しかし、プロデューサーのマーティンは、ベストの演奏に満足しなかったため、このセッションから2か月後にベストは解雇された[15][16]
テイク数は不明[14]
1962年9月4日 デビュー・シングル用のレコーディング。ドラムは解雇されたベストに代わって加入したリンゴ・スターが演奏。同日に15テイク録音され、シングル第1版に収録された。しかし、セッションの2週間前にバンドに加入し、リハーサルが不十分であったことから、マーティンはスターの演奏にも満足しなかった[17]
また、同日にミッチー・マレー英語版作曲の「ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット」もレコーディングされ[18]、マーティンはこちらをデビュー・シングルとする予定だったが、レノンとマッカートニーがオリジナル曲でのデビューを強く希望したことから、ビートルズ側の主張が認められて本作がデビュー・シングルとなった[19]
テイク数およびモノラル・ミックスに使用されたテイクは不明[20]
1962年9月11日 2度目のデビュー・シングル用のレコーディング。同日のセッションではアンディ・ホワイトがドラムを演奏したため、スターはタンバリンを演奏した[21]
18テイク録音され、最終テイクがマスターとして採用された[22]

本作がデビュー・シングルとしてイギリスで発売された際、スターがドラムを演奏した9月4日のテイクが使用されたが、以後の再版シングル[注釈 2]や、オリジナル・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』や『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』、『ザ・ビートルズ1』など一部のコンピレーション・アルバム、ビートルズのEPにはホワイトがドラムを演奏した9月11日のテイクが採用された[21]。スターがドラムを演奏した9月4日のテイクは、1980年にアメリカで発売された『レアリティーズ Vol.2』でアルバム初収録となり、『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』や『パスト・マスターズ Vol.1』に収録された。なお、9月4日のテイクはマスター・テープが破棄されているため、シングル・レコード盤からマスタリングされた音源が収録された[23]。1992年10月5日にビートルズのデビュー20周年を記念して発売されたCDシングル盤には両方のテイクが収録されている。ピート・ベストのドラムを演奏した6月6日のテイクは、1995年に『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』で発表されるまで未発表となっていた。2023年11月2日に発売された『ナウ・アンド・ゼン』と11月10日に発売された『ザ・ビートルズ1962年〜1966年 2023エディション』には、リンゴがドラムを演奏した9月4日のテイクが収録されているが、ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ: Get Back』や『リボルバー・スペシャル・エディション』で使われた音源を楽器別に分離するAI技術「デミックス」を用いてステレオ化されている。

BBCで8度にわたって収録され、1962年10月からの1年間にわたって、『ヒア・ウィー・ゴー』、『タレント・スポット』、『サタデー・クラブ』、『サイド・バイ・サイド』、『ポップ・ゴー・ザ・ビートルズ』、『イージー・ビート』といった番組で放送された。1963年7月10日にBBCで収録され、23日の『ポップ・ゴー・ザ・ビートルズ』で放送されたテイクは、アルバム『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』に収録されている。1963年2月20日の『パレード・オブ・ザ・ポップス』においては、BBCのラジオを通じてこの曲を生演奏で放送している。なお、BBCのドキュメンタリー番組『ザ・マージー・サウンド』のためにサウスポートにあるリトル・シアターでの演奏が撮影されており、同番組でその一部が放送された後、2015年に再発売された『ザ・ビートルズ1[注釈 3]に付属のDVD/Blu-rayに収録された[24]

1969年に行なわれたゲット・バック・セッションでこの曲が演奏された。この時はかつてのアレンジよりもテンポを落としたブルース調での演奏だった。このほか、「レボリューション1」のテイク18の後半部分では、マッカートニーが「ラヴ・ミー・ドゥ」のサビのフレーズを歌っている[注釈 4]

2012年10月22日(日本では11月14日[25])に発売50周年を記念し、パーロフォンのジャケットを使用した限定のレプリカ・17cmアナログレコードが発売された[26]。このレコード盤のA面にはスターがドラムを演奏した9月4日のテイクが収録されたが、発売当初のレコード盤には誤ってホワイトがドラムを演奏した9月11日のテイクが収録されていた[26]

クレジット

※特記を除き、出典はイアン・マクドナルド英語版の著書『Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties[27]

ビートルズ
外部ミュージシャン

注釈

  1. ^ アルバム収録の方はマッカートニー=レノンと表記されている。
  2. ^ 黒のラベルのリイシュー盤の場合、9月4日と9月11日の両方のテイクで発売されている。オリジナル盤での見分け方は、レコードの送り溝に刻印されているマトリックス番号が9月4日のテイクの場合は 7XCE 17144-1N 、9月11日のテイクの場合は 7XCE 17144-2N となっている。
  3. ^ オリジナルは2000年に発売。
  4. ^ この部分はリリース版では使用されず、2018年に発売された『ザ・ビートルズ (ホワイト・アルバム) スーパー・デラックス・エディション』に収録されたテイク18で確認することができる。

出典

  1. ^ Merseybeat Music Genre Overview - オールミュージック. 2020年11月8日閲覧。
  2. ^ Pollack 1990.
  3. ^ Gregory 2008.
  4. ^ Deville, Chris (2013年11月27日). “Beatles Albums From Worst to Best”. Stereogum.com. 2020年11月8日閲覧。
  5. ^ a b "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2020年11月8日閲覧。
  6. ^ a b "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2020年11月8日閲覧。
  7. ^ a b The Hot 100 Chart”. Billboard (1964年5月30日). 2020年11月8日閲覧。
  8. ^ a b Harry 1992, p. 413.
  9. ^ Miles 1997.
  10. ^ Sheff 1981, p. 129.
  11. ^ MacDonald 1998, p. 51.
  12. ^ MacDonald 2005, p. 59.
  13. ^ a b Paul McCartney (23 October 2013). Paul McCartney - 'The Making Of Queenie Eye'. 該当時間: 2:31 - 3:44. 2020年11月8日閲覧, 2019年1月5日閲覧
  14. ^ a b Lewisohn 1988, pp. 16–17.
  15. ^ Miles 1997, p. 57.
  16. ^ Spitz 2005, p. 330.
  17. ^ Lewisohn 1988, p. 20.
  18. ^ The Beatles 2000, p. 77.
  19. ^ Lewisohn 1988, p. 18.
  20. ^ Lewisohn 1988, pp. 18–19.
  21. ^ a b Lewisohn 1992, p. 59.
  22. ^ Lewisohn 1988, pp. 20–21.
  23. ^ 斉藤早苗(監修)、葉山真(文責) (2009). パスト・マスターズ (ブックレット). ビートルズ. Apple/EMI Music Japan.
  24. ^ ザ・ビートルズの「Love Me Do」が全米1位になるまでの長い道のり”. uDiscover. UNIVERSAL MUSIC JAPAN (2019年10月5日). 2020年11月22日閲覧。
  25. ^ EMI、ビートルズ「Love Me Do」発売50周年記念のレプリカ17cmアナログレコードを発売 - 価格は1,000円”. PHILE WEB. 音元出版 (2012年10月12日). 2020年11月8日閲覧。
  26. ^ a b Lifton, Dave (2012年10月15日). “Beatles 50th Anniversary ‘Love Me Do’ Single Gets New Release Date”. Ultimate Classic Rock. Townsquare Media. 2023年1月3日閲覧。
  27. ^ MacDonald 2005, p. 58.
  28. ^ Everett 2001, pp. 126–127.
  29. ^ Kent, David (2005). Australian Chart Book (1940-1969). Turramurra: Australian Chart Book. ISBN 0-646-44439-5 
  30. ^ Hall, Ron (1990). The CHUM Chart Book: A Complete Listing of Every Record to Make the "CHUM Chart" from Its Beginning on the 27th May, 1957 Through 14th June, 1986. Rexdale (Toronto): Stardust Productions. p. 11. ISBN 0-920325-15-7. https://books.google.com/books?id=tEnYAAAACAAJ 
  31. ^ Flavour of New Zealand, 4 June 1964”. Flavour of New Zealand. 2020年11月8日閲覧。
  32. ^ Hoffmann, Frank (1983). The Cash Box Singles Charts, 1950-1981. Metuchen, NJ & London: The Scarecrow Press, Inc. pp. 32-34 
  33. ^ a b "Ultratop.be – The Beatles – Love Me Do" (in Dutch). Ultratop 50. 2020年11月8日閲覧。
  34. ^ "Dutchcharts.nl – The Beatles – Love Me Do" (in Dutch). Single Top 100. 2020年11月8日閲覧。
  35. ^ a b "Lescharts.com – The Beatles – Love Me Do" (in French). Les classement single. 2022年3月27日閲覧。
  36. ^ "Official Singles Chart Top 100". UK Singles Chart. 2020年11月8日閲覧。
  37. ^ ラヴ・ミー・ドゥ | ザ・ビートルズ”. ORICON NEWS. オリコン. 2022年11月17日閲覧。
  38. ^ Billboard Japan Hot 100 | Charts”. Billboard JAPAN. 阪神コンテンツリンク (2012年10月15日). 2020年11月8日閲覧。
  39. ^ “Top Records of 1964”. Billboard: 6. (January 2, 1965). 
  40. ^ "British single certifications – Beatles – Love Me Do". British Phonographic Industry. 2020年11月8日閲覧
  41. ^ "American single certifications – The Beatles – Love Me Do". Recording Industry Association of America. 2020年11月8日閲覧
  42. ^ Montgomery 2020, pp. 177–178.
  43. ^ Blaney, John (2007). Lennon and McCartney, Together Alone: A Critical Discography of Their Solo Work. London: Jawbone Press. p. 200. ISBN 1-9060-0202-9 
  44. ^ Womack 2014, p. 743.
  45. ^ Birthday [Single] - Paul McCartney | Songs, Reviews, Credits, Awards - オールミュージック. 2020年12月5日閲覧。
  46. ^ ポール・マッカートニー、ソロ初のザ・ビートルズ・ソング演奏”. BARKS. ジャパンミュージックネットワーク (2016年4月15日). 2022年3月19日閲覧。
  47. ^ Erlewine, Sthephen Thomas. “Vertical Man - Ringo Starr | Songs, Reviews, Credits, Awards”. 2020年12月5日閲覧。
  48. ^ Embley, Jochan (2019年1月10日). “Looking back on David Bowie's most legendary gig”. Evening Standard. 2020年11月8日閲覧。






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