ラヴ・ミー・ドゥ
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背景・曲の構成
「ラヴ・ミー・ドゥ」は、1958年から1959年にかけて不登校生だった当時16歳のポール・マッカートニーによって書かれた作品で[8]、ジョン・レノンはミドルエイトを書いた[8][9]。作者クレジットはレノン=マッカートニー[注釈 1]で、レノンは「『ラヴ・ミー・ドゥ』はポールの曲だ。僕らが本格的な作曲家になる前、ハンブルクの頃から曲を持っていたのを知ってるよ」と語っている[10]。
「ラヴ・ミー・ドゥ」は、G7とCコードを基調とした楽曲で、ミドルエイトのみDに移るというコード進行となっている。レノンが演奏したブルージーかつドライなハーモニカのリフ[11]から始まり、レノンとマッカートニーによるツイン・ボーカルが加わってくる。
当初はレノンがタイトルセクションを歌っていたが、フレーズに重なるかたちでハーモニカのパートが追加されたため、ハーモニカを演奏するレノンではなくマッカートニーがこの部分を歌うことになった[12][13]。この処置について、マッカートニーは「そのセッションまではこの部分を歌うのはジョンの担当だった。だけど歌詞がハーモニカのソロに被るから、"Love me do"の部分で止まってしまう。そこでジョージ・マーティンがハーモニカをフィーチャーするアイデアを出して、急遽僕がリードをとることになった。本当に緊張したよ。今聴いても緊張して声が震えているのがわかる」と語っている[13]。
レコーディング・リリース
「ラヴ・ミー・ドゥ」は、EMIレコーディング・スタジオで3回にわたってレコーディングされ、それぞれドラマーが異なっている。
レコーディング日 | 備考 |
---|---|
1962年6月6日 | EMIのオーディションでのレコーディング。ドラムは当時ビートルズのドラマーだったピート・ベストが演奏[14]。しかし、プロデューサーのマーティンは、ベストの演奏に満足しなかったため、このセッションから2か月後にベストは解雇された[15][16]。 テイク数は不明[14]。 |
1962年9月4日 | デビュー・シングル用のレコーディング。ドラムは解雇されたベストに代わって加入したリンゴ・スターが演奏。同日に15テイク録音され、シングル第1版に収録された。しかし、セッションの2週間前にバンドに加入し、リハーサルが不十分であったことから、マーティンはスターの演奏にも満足しなかった[17]。 また、同日にミッチー・マレー作曲の「ハウ・ドゥ・ユー・ドゥ・イット」もレコーディングされ[18]、マーティンはこちらをデビュー・シングルとする予定だったが、レノンとマッカートニーがオリジナル曲でのデビューを強く希望したことから、ビートルズ側の主張が認められて本作がデビュー・シングルとなった[19]。 テイク数およびモノラル・ミックスに使用されたテイクは不明[20]。 |
1962年9月11日 | 2度目のデビュー・シングル用のレコーディング。同日のセッションではアンディ・ホワイトがドラムを演奏したため、スターはタンバリンを演奏した[21]。 18テイク録音され、最終テイクがマスターとして採用された[22]。 |
本作がデビュー・シングルとしてイギリスで発売された際、スターがドラムを演奏した9月4日のテイクが使用されたが、以後の再版シングル[注釈 2]や、オリジナル・アルバム『プリーズ・プリーズ・ミー』や『ザ・ビートルズ1962年〜1966年』、『ザ・ビートルズ1』など一部のコンピレーション・アルバム、ビートルズのEPにはホワイトがドラムを演奏した9月11日のテイクが採用された[21]。スターがドラムを演奏した9月4日のテイクは、1980年にアメリカで発売された『レアリティーズ Vol.2』でアルバム初収録となり、『リヴァプールより愛を込めて ザ・ビートルズ・ボックス』や『パスト・マスターズ Vol.1』に収録された。なお、9月4日のテイクはマスター・テープが破棄されているため、シングル・レコード盤からマスタリングされた音源が収録された[23]。1992年10月5日にビートルズのデビュー20周年を記念して発売されたCDシングル盤には両方のテイクが収録されている。ピート・ベストのドラムを演奏した6月6日のテイクは、1995年に『ザ・ビートルズ・アンソロジー1』で発表されるまで未発表となっていた。2023年11月2日に発売された『ナウ・アンド・ゼン』と11月10日に発売された『ザ・ビートルズ1962年〜1966年 2023エディション』には、リンゴがドラムを演奏した9月4日のテイクが収録されているが、ドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ: Get Back』や『リボルバー・スペシャル・エディション』で使われた音源を楽器別に分離するAI技術「デミックス」を用いてステレオ化されている。
BBCで8度にわたって収録され、1962年10月からの1年間にわたって、『ヒア・ウィー・ゴー』、『タレント・スポット』、『サタデー・クラブ』、『サイド・バイ・サイド』、『ポップ・ゴー・ザ・ビートルズ』、『イージー・ビート』といった番組で放送された。1963年7月10日にBBCで収録され、23日の『ポップ・ゴー・ザ・ビートルズ』で放送されたテイクは、アルバム『ザ・ビートルズ・ライヴ!! アット・ザ・BBC』に収録されている。1963年2月20日の『パレード・オブ・ザ・ポップス』においては、BBCのラジオを通じてこの曲を生演奏で放送している。なお、BBCのドキュメンタリー番組『ザ・マージー・サウンド』のためにサウスポートにあるリトル・シアターでの演奏が撮影されており、同番組でその一部が放送された後、2015年に再発売された『ザ・ビートルズ1』[注釈 3]に付属のDVD/Blu-rayに収録された[24]。
1969年に行なわれたゲット・バック・セッションでこの曲が演奏された。この時はかつてのアレンジよりもテンポを落としたブルース調での演奏だった。このほか、「レボリューション1」のテイク18の後半部分では、マッカートニーが「ラヴ・ミー・ドゥ」のサビのフレーズを歌っている[注釈 4]。
2012年10月22日(日本では11月14日[25])に発売50周年を記念し、パーロフォンのジャケットを使用した限定のレプリカ・17cmアナログレコードが発売された[26]。このレコード盤のA面にはスターがドラムを演奏した9月4日のテイクが収録されたが、発売当初のレコード盤には誤ってホワイトがドラムを演奏した9月11日のテイクが収録されていた[26]。
クレジット
※特記を除き、出典はイアン・マクドナルドの著書『Revolution in the Head: The Beatles' Records and the Sixties』[27]。
- ビートルズ
- 外部ミュージシャン
-
- アンディ・ホワイト - ドラム(1962年9月11日のテイク)
注釈
出典
- ^ Merseybeat Music Genre Overview - オールミュージック. 2020年11月8日閲覧。
- ^ Pollack 1990.
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- ^ Lewisohn 1988, pp. 18–19.
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- ^ Lewisohn 1988, pp. 20–21.
- ^ 斉藤早苗(監修)、葉山真(文責) (2009). パスト・マスターズ (ブックレット). ビートルズ. Apple/EMI Music Japan.
- ^ “ザ・ビートルズの「Love Me Do」が全米1位になるまでの長い道のり”. uDiscover. UNIVERSAL MUSIC JAPAN (2019年10月5日). 2020年11月22日閲覧。
- ^ “EMI、ビートルズ「Love Me Do」発売50周年記念のレプリカ17cmアナログレコードを発売 - 価格は1,000円”. PHILE WEB. 音元出版 (2012年10月12日). 2020年11月8日閲覧。
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固有名詞の分類
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