ヨメナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/04 08:44 UTC 版)
名称
和名「ヨメナ」の由来は、嫁菜とも夜目菜とも言われ、はっきりしない。一説には、美しく優しげな花を咲かせるため「嫁」の名がつくといわれている[6]。また、古くから女性が好んで摘んだのでこの名があるともいわれる[7]。なお、のぎくをヨメナの別名とする記述が国語辞典関連ではよく見られる[8]が、植物図鑑ではヨメナの別名としてノギクを挙げた例はない。
地方により別名、ウハギ[7][4]、オハギ[1][4][7]、ハナギ[7]、ヨメガハギ[7]、ヨメノサイ[7][4]、カンサイヨメナ[1]ともよばれる。
分布
日本の本州(中部地方以西)、四国、九州に分布する[4]。中国には一部で帰化しているらしい。
道端やあぜ道、土手などに群生している[4]。ごく普通の植物であるが、山間でも見かける。やや湿ったところを好む。
特徴
多年生の草本[7]。一般に野菊とよばれる植物のひとつで[4]、ヨメナはその代表格として知られ[7]、秋に薄紫か白い菊の花をつける。ただし、よく似た姿のキク類は他にもいくつかあり、一般にはそれらをまとめてヨメナと呼んでいることが多い。
地下茎があり、長く横に走らせて先端から新芽を出して小さな群落を作る[7]。芽立ちのころは、茎の基部が赤色を帯びている[4]。茎は高さ30 - 100センチメートル (cm) ほどになり[7]、上の方で枝分かれして、小さな茂みを作る。葉・茎とも毛は生えていない[4]。葉は卵状楕円形で、葉の縁には浅くて大きな鋸歯がある[4]。色は深緑で、つやがあまりない。
花期は夏から秋にかけて(7 - 10月)[7]。分枝した茎の先端に薄紫色の頭状花をつける[7][4]。花茎は基部で少し枝分かれする。花はいわゆる野菊の花である。外側にはサジ型の白い舌状花が並び、内側には黄色い管状花が密生する。
花が落ちるとあとには種子(実際は果実)が並んでいるのが見える。種子にはタンポポのような冠毛は全くなく、タイルが並んでいるような外見となる。
ヨメナの染色体数は2n=63で、これは中国から九州に入ったオオユウガギク(2n=72)と南から侵入したコヨメナ(2n=54)の交配で生まれたと考えられている。
利用
春(3 - 5月ごろ)のやわらかい若芽が5 - 6 cmに伸びたところを摘んで食べる[7][4]。採取するときは、根元からナイフなどでそぎ取るようにして採る[7]。古くは『万葉集』の時代から使われていたようで、オハギ、あるいはウハギと呼ばれている[4]。キク科特有の香味で、シュンギクのような香りと味がする[7][4]。灰汁は弱いほうであるが、摘んでから置いておくと灰汁がまわるので、早めに茹でて水にさらして灰汁抜きする[4]。食べ方は、茹でておひたしや和え物、炒め物、煮浸し、卵とじ、薄い塩味で炊いたヨメナご飯なども知られる[4]。生で天ぷらにして食べられる[4]。秋の花も利用でき、7 - 9月ごろに採取して天ぷらにする[9]。
雑草に類するものであり、見れば美しいと思うかもしれないが、積極的に育てられるものではない。駆除しようとすると地下茎があるから厄介者である。
- ^ a b c 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Aster yomena (Kitam.) Honda ヨメナ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月9日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Kalimeris yomena (Kitam.) Kitam. ヨメナ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月9日閲覧。
- ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Kalimeris incisa (Fisch.) DC. var. yomena Kitam. ヨメナ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年3月9日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 金田初代 2010, p. 16.
- ^ 井上辰雄 監修、日本難訓難語編集委員会 編『日本難訓難語大辞典』遊子館、2007年1月。ISBN 4-94652574-2。
- ^ 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日。ISBN 4-7980-1485-0。pp.468-469
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 篠原準八 2008, p. 54.
- ^ 広辞苑・岩波国語辞典など
- ^ 篠原準八 2008, p. 55.
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