ユダヤ教 概要

ユダヤ教

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 23:59 UTC 版)

概要

タナハ』 (ヘブライ語ラテン文字転記:tanakh)、『ミクラー』 (miqra') と呼ばれる書を聖典とする。これはキリスト教の『旧約聖書』に当たる書物である。ただし、成立状況が異なるので、キリスト教とは書物の配列が異なる。イスラム教でも『モーセ五書』は『コーラン』に次いで重要視される。ユダヤ教では、この他にタルムードをはじめとしたラビ文献も重視する

しかし、ユダヤ教は信仰教義そのもの以上に、その前提としての行為・行動の実践と学究を重視し、キリスト教、特にルター主義とは違う[注 2]。例えば、ユダヤ教の観点からは、信仰を持っていたとしても、アミーダー・アーレーヌー・ムーサーフなどを含んだシャハリート・ミンハー・マアリーブを行わないこと、シェマア・イスラーエールを唱えないこと、ミクラーを読まないこと、食事の前とトイレの後の手洗いと祈りを行わないこと、戸口のメズーザーに手を当てて祈りを行わないこと、カシュルートを実行しないこと、タルムード・トーラーベート・ミドラーシュイェシーバーコーレールなどミクラーラビ文献の研究を行わないこと、シャッバートを行わないこと、パーラーシャーを読まないことなどは、ユダヤ教徒としてあるべき姿とは言えない。「信じるものは救われる」などという講義をするラビはとても考えられない。そのため改宗にも時間がかかり、単なる入信とは大きく異なる[注 3]

ユダヤ教では、改宗前の宗教に関係なく、「地上の全ての民が[2]」聖なるものに近づくことができる、救いを得ることができる、と考える。「改宗者を愛せ」という考え方は、次のようなことばにもみることができる。

וַאֲהַבְתֶּם, אֶת-הַגֵּר: כִּי-גֵרִים הֱיִיתֶם, בְּאֶרֶץ מִצְרָיִם
寄留者(ゲール)を愛しなさい:あなた達がエジプトにおいて寄留者であったからである (ミツワー、典拠は申命記10:19)

すなわち、血縁よりも教徒としての行動が重要視されることも多い。非ユダヤ人も神の下僕となり、神との契約を守るならユダヤ教徒になることができるとされる[3]。ユダヤ人が神の祭司であるのに対し、非ユダヤ人は労役に服するという差別性がある[注 4]

ユダヤ教を信仰する者をユダヤ人と呼ぶ一方、形式的に考えれば初期のキリスト教徒はすべてユダヤ人だった、といえる。「ユダヤ人キリスト教徒」という呼称も成立する。これは民族の定義を血縁により、つまり「ユダヤ人」を血縁的な「ユダヤ民族」(アブラハムの子孫)としてとらえた定義による用語である。

このように、内面的な信仰に頼らず行動・生活や民族を重視し、また唯一の神は遍在(ヘブライ語ラテン文字転記:maqom)すると考える傾向(特にハシディズムに良く現れる概念)がある(キリスト教と共通する)ため、ユダヤ教の内部にはイスラム教的な意味での排他性は存在しない[要出典]

7つの戒めとは、タルムードの記載によれば神がノアを通じて全人類に与えたものといわれる七つの戒めのことである。7つの戒めを守ろうもユダヤ教並の神へ帰るであるとされる。

ユダヤ戒律を破らずれば、ユダヤ教と習合することができるとされる。たとえばユダヤ仏教ユダヤ=ヒンドゥー教などがある。


注釈

  1. ^ ラテン文字転記:Yahadut仮名文字転記:ヤハドゥート
  2. ^ 「ユダヤ教をヘブライ聖書と結び付けようとする試みは、ハラハーとは無関係であり … ルター主義的であって、ユダヤ教的ではない。イスラエルは聖典によって生活したこともなければ、そうしようとしたこともなく、そのように考えられたこともなかった …」とイェシャヤフ・レイボヴィッツ Yeshayahu Leibowitz はいう[1]
  3. ^ 例えばイスラエル国においてロシア系移民の改宗手続きをする場合、440時間を費やすので、一日2時間勉強しても最低7ヶ月かかる。
  4. ^ 「民族宗教」といっても、例えば神道のように、特定の地域・場面においての繋がりしかなく、改宗手続き・運動もなく、日本人になる絶対的要素でもないような「宗教」とは全く性質・意味の異なる部分がある。
  5. ^ コングリゲイション Congregation とは集会・会衆・宗派の意味、ユダヤ教では全ユダヤ教徒(イスラエル人)の意味も持つ。キリスト教ではキリスト教全体、カトリックでは聖省、修道会、修族、英国の会衆派教会などの意味。ユダヤ教では、シナゴーグにこの名前が使われることもある。

出典

  1. ^ Judaism, Human Values and the Jewish State, ed. E. Goldman (Cambridge MA, 1992) , p11
  2. ^ 創世記
  3. ^ イザヤ書』56章
  4. ^ 『ユダヤ5000年の知恵』 マーヴィン・トケイヤー ISBN 978-4408395746[要ページ番号]
  5. ^ Niddah 45a:9”. Sefaria. 2019年12月21日閲覧。
  6. ^ a b ニッダー 2007, p. 184.
  7. ^ Sanhedrin 55b:4”. Sefaria. 2019年12月21日閲覧。
  8. ^ ニッダー 2007, p. 185.
  9. ^ ニッダー 2007, pp. 185–186.
  10. ^ 『タルムード ナシームの巻 ケトゥボート篇』三貴、1994年、33頁。 
  11. ^ 『タルムード ネズィキーンの巻 アヴォダー・ザラー篇』三貴、2006年、157頁。 
  12. ^ Avodah Zarah 37a”. Sefaria. 2019年12月17日閲覧。
  13. ^ ニッダー 2007, p. 186.
  14. ^ Sanhedrin 55b:10”. Sefaria. 2022年3月28日閲覧。
  15. ^ ニッダー 2007, pp. 195–196.
  16. ^ イスラエル基礎データ”. 日本国外務省 (2018年7月5日). 2019年3月4日閲覧。
  17. ^ 臼杵陽 『イスラエル』岩波書店〈岩波新書〉、2009年4月、96-97頁。 
  18. ^ イスラエル外務省 2010, p. 145.
  19. ^ イスラエル外務省 2010, p. 137.
  20. ^ “超正統派ユダヤ教徒も兵役/イスラエル、17年から”. 四国新聞社 SHIKOKU NEWS. (2014年3月12日). http://www.shikoku-np.co.jp/national/international/20140312000659 2019年3月4日閲覧。 
  21. ^ イスラエル外務省 2010, p. 135.






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