メッサーシュミット Me163 開発

メッサーシュミット Me163

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/16 00:44 UTC 版)

開発

ロケット飛行機の誕生

ロケットエンジンを動力源とした航空機の開発は1920年代には各国で行われていたものの、初期のロケットエンジンは燃焼の制御が難しく、実験は常に爆発の危険が伴うものであった。1937年にドイツのヴェルナー・フォン・ブラウンエチルアルコール液体酸素を推進剤とした推力300kgの液体燃料ロケット A1を開発すると、これに着目したハインケル社のエルンスト・ハインケル博士により、Bf 109との制式採用争いに敗れた自社の単発単座レシプロ機 He 112 にこれを搭載した。

1937年6月には離陸から着陸まで全てをロケット動力のみで行う純粋なロケット飛行に世界に先駆けて成功し、ロケット飛行機の実用化に先鞭を付けた。

実用化と開発

Me163誕生のきっかけは1938年ドイツ滑空機研究所アレクサンダー・リピッシュが製作した無尾翼モーターグライダーDFS 39に、ヘルムート・ヴァルターの開発する高濃度の過酸化水素を主成分とするT液ヒドラジンメチルアルコールを主成分とするC液を使用するHWK-R1ヴァルター式ロケットエンジン搭載テストをドイツ航空省が申し入れたことによる(逆にリピッシュ側から売り込んだとする資料もある)。このロケット機はDFS 194と命名されると、1939年1月、空軍の計らいで部下10名を引きつれてメッサーシュミット社に入社したリピッシュは、自らの頭文字から命名したL部門なるロケット機開発部門を組織して製作にあたることになった。

ハインケル社によって同時期に開発が進められていたHe 1761939年6月に初飛行を成功させたものの、ドイツ航空省からは開発打ち切りを告げられている。これに対しDFS 194はメッサーシュミット社で開発が続けられ、1939年末に初飛行を成功させるとドイツ航空省は続いて試作機3機の発注を行い、これらにはMe 163AV1〜V3という制式名称が与えられた。ロケット戦闘機開発においてハインケル社とメッサーシュミット社で明暗を分けた形になった。このことには多分に政治的な理由も考えられるが、He 176の直線翼などの従来の航空機とあまり違いのない設計に対し、無尾翼機というリピッシュ博士の設計の先進性が発注の理由となったとも考えられる。

DFS 194の改良型であるMe 163Aは、1941年の滑空テストではダイブ時に最大速度855.8km/hを記録して空力的な設計の確かさを証明すると、遅れて完成したHWK-R2-203を搭載してロケット飛行を成功させた。1941年10月のテストでは最大速度1,011km/hを記録した。この当時としては破天荒な高速性能を受け、ドイツ航空省は実用化を決定し先行量産型Me 163B-0を70機発注した。

研究機の域を出ていなかったMe 163Aに対し迎撃戦闘機としての実戦配備を前提とされたMe 163Bは、Me 163Aと機体サイズはさほど変わらないものの全面的に再設計が行われた。ロケットエンジンの強化、燃料タンクの大型化、無線装置など諸装置の設置、機関砲の搭載などが行われ、制式番号は同じものの全く別の機体である。ロケットエンジンの開発は遅れていたが、1942年4月にはMe 163B-0の1号機が完成した。ところが開発者であるリピッシュ博士とメッサーシュミット博士は意見の違いから衝突を繰り返し、1943年5月にはリピッシュ博士は部下と共にメッサーシュミット社を退社してしまう。だがその後も開発はメッサーシュミット社のスタッフによって続けられた。リピッシュ博士はその後オーストリアウィーン航空研究所の所長に就任して無尾翼機の研究を続け、彼の提唱したデルタ翼機は第二次世界大戦後のジェット機開発に大きな影響を与えることになる。








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