メスディイェ (装甲艦) 大改装と、その結果

メスディイェ (装甲艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/24 01:08 UTC 版)

大改装と、その結果

イタリア海軍ヴェットール・ピサニ級装甲巡洋艦「カルロ・アルベルト」。

本艦の近代化改装は1903年までイタリアのアンサルド社で行われた。この当時のイタリア海軍アドリア海と東部地中海の覇権をオーストリア=ハンガリー帝国海軍と争っており、同時代の日本海軍と同じくイギリスに範をとった優秀な艦船を多く建造してきた経験もあっての事であった。

艦形

近代化改装後の「メスディイェ」。

近代化改装の内容は老朽化した機関を新型機関に換装し、速度性能と航続性能の改善に合った。甲板上の帆走設備は全て撤去され、これにより甲板上を広く使用することが出来たため、建造当時でさえ旧態化していた主砲の舷側配置を改めた。主武装は前弩級戦艦のように甲板上の前後に砲塔に収めた。既存の砲廓部には主砲に換えて副砲として中口径の速射砲を収め、新たに船体各所に対水雷艇の搭載を含む火砲の新型化が行われた。船体形状の改正など大規模な工事が行われた結果、艦容は近代化されて同世代の装甲巡洋艦と見紛う外観となった。

主砲にはイギリスの装甲巡洋艦の主砲として広く用いられている23.4cm砲が選ばれ、これを衝角の付いた艦首から前部甲板上に設けられたバーベットの上に楕円筒型の単装式主砲塔で1基を配置、その背後から上部構造物が開始し、その上に司令塔を兼ねた艦橋の両脇には船橋(ブリッジ)が設置された。機関配置の変更に伴い、ボイラー室の位置が前進したために2本煙突も艦橋の真後ろに立てられた。2本煙突の両側にキセル型の通風筒が片舷3基ずつ計6基立ち、その下部に推進機関室を配置したためにスペースを無駄にせず原型の2番マストと似た場所に二段の見張り所を持つミリタリー・マストが1基配置され、二段目の見張り所の左右には対水雷艇迎撃用に4.7cm(43口径)単装速射砲2基が配置され、その周囲は艦載艇とした。艦載艇は後部ミリタリーマストの基部のクレーン4基と2本1組のボート・ダビッドが片舷に2組ずつ計4組により運用された。マストの後ろに後部見張り所があり、そこから甲板一段分下がって後部甲板が始まり、23.4cm単装主砲塔が後ろ向きに1基配置された。

前述のとおり改装前にあった砲廓(ケースメイト)は撤去されずにそのまま副砲として15.2cm速射砲が収められ、単装砲架で片舷6基ずつ計12基が配置された。また、新たに対水雷艇用に57mm単装速射砲が10基装備されたが、搭載位置は艦載艇置き場の四隅に片舷2基ずつ計4基、1番主砲塔の側面に1基ずつ計2基、艦尾側の左右に1基ずつ計2基、そして司令塔の天蓋に1基と後部見張り所に後ろ向きに1基の配置である。この武装配置により前後方向に最大で23.4cm砲1門・15.2cm砲2門・5.7cm砲4門、左右方向に23.4cm砲2門、15.2cm砲4門・5.7cm砲5門を向けることが出来る設計であった。

しかし、当時のオスマン帝国海軍は慢性的な予算難にあり、主砲の代金支払いが竣工までに間に合わず、主砲塔こそ据え付けられた物の、肝心の主砲身は取り付けられなかった。そのため、見栄えの観点から主砲身は木製のダミーを砲塔に取り付けられたが結局の所、戦没の日まで本艦の主砲身はダミーのままであった。そのため本艦の主武装は副兵装の15.2cm単装速射砲12基であると言えるがそれでも船体の大きさを考えれば充分な火力である。


  1. ^ 「フフズッラマーン」「アーサール・シヴシュケド」「ニジュミ・シヴシュケド」「イジャリィエ」))中のうち、有事に出撃可能なものは6隻(装甲フリゲート「アサル・テヴフィク」「メスディイェ(本艦)」、装甲コルベット「アヴ・ニッラー」「ムイーニ・ザファー」「フェトヒ・ビュレント」「ムカッデメイ・ハユル」)のみである。(この時既に艦隊は3年以上も機器の手入れがなされておらず、夜間攻撃に備えるためのサーチライトがない、魚雷攻撃から停泊する艦艇を守るための防雷網がない、停泊から5年経過しただけで、14隻もの装甲艦がありながら戦闘出撃か可能なのはたったの6隻という事
  2. ^ 前装填式とは大砲の前から砲弾と炸薬を入れる形式、後装填式とは現代の艦砲と同じく敵に砲口を向けたまま大砲の後部を開いて砲弾と炸薬を入れることの出来る形式のこと
  3. ^ 艦隊の燃料の石炭・石油を購入する予算が無く、備蓄さえしていない。燃料などの重要軍事物資は有事に迅速に調達できる物ではない
  4. ^ 案の定、召集された予備役は全く訓練を受けていなかったために現場では何の役にも立たなく。ただ船内のベッドを埋め、食料を消費しただけだった。極めつけは今乗っている乗員は新兵で海に出た経験が無いので、海に出ると船酔いのため航海・砲術訓練が出来ないという暗澹たる有様であった。
  5. ^ 「ハミディイェ」に24cm単装砲10基と17cm単装砲2基、「メスディイェ(本艦)」に26cm単装砲12基など
  6. ^ 旧:アブデュルアズィズ


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