マルカメムシ マルカメムシの概要

マルカメムシ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/05 06:44 UTC 版)

マルカメムシ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
上目 : Condylognatha
: カメムシ目 Hemiptera
亜目 : カメムシ亜目 Heteroptera
下目 : カメムシ下目 Pentatomomorpha
上科 : カメムシ上科 Pentatomoidea
: マルカメムシ科 Plataspidae
: マルカメムシ属 Megacopta
: マルカメムシ M. punctatissimum
学名
Megacopta punctatissimum (Montandon)

特徴

この科のものの特徴として体型は丸形に近く、また小循板が大きく広がって腹部背面を広く覆い、前翅も後翅もほぼその下に折り畳んで収納される[1]

体長は5-5.5mm[2]。背面は暗黄褐色で光沢があって、黒い点刻が密に分布する。頭部は小さくて暗黄褐色で中央に溝があって黒い2本の筋がある。触角は5節あって黄褐色。前胸背はその前1/3は点刻が少なく、あまりはっきりしない横縞のような模様があり、それ以降の部分との境に点刻が密に1列をなして並ぶ。また正中線沿いに淡い色の縦筋模様が出る場合がある。身体の後半部を覆う小楯板はその表面が一様で模様などは全くない。ただし基部の中央部には横溝で区分された部分がある。胸部の腹面側は黒くて光沢がない。腹部の腹面側は光沢があり、中央部は黒く、側面側は黒褐色に気門が黒い。また腹部各節の前縁が黒く、また側部に黒い横筋がある。雄では腹部第3節以降に短く柔らかい毛が密生する。歩脚は黄褐色。

幼虫は成虫とずいぶん見かけが異なる。まず背面が成虫のように盛り上がらず、やや平らな円盤状の形をしており、それに腹部の縁が波状になる。色は緑色で、全体に直立した毛で覆われる。卵はバナナを短く平たくしたような独特の形をしており[3]、高さ0.9mm、幅0.5mm[4]

分布

本州四国九州対馬甑島列島大隅諸島トカラ列島に知られ、国外では朝鮮半島に分布がある[5]。2009年頃に北アメリカに侵入し、害虫として生息域を拡大しつつある[6]

生態

年一化性で成虫越冬する[7]。成虫は植物の根元や石の下など、比較的浅い地中に数頭が集まって越冬する。4-6月に成虫が食草の上に産卵する。食草はクズフジヌスビトハギダイズアズキノイバラウツギアケビミカンなどが知られるが、主なものはマメ科植物である。産卵もほぼマメ科の上に行われ、葉や茎に20-30個の卵を2列に並べて産み付ける。幼虫は宿主植物の汁を吸って成長し、7月頃から新成虫が、主としてクズの上に見られるようになる。幼虫の期間は約2ヶ月である[4]。10-11月頃には成虫が越冬場所を求めて分散し始める。なお、成虫は越冬前には交尾を行わず、越冬後の春に食草の上で交尾する[8]

マルカメムシの中腸の後端部には盲嚢という袋状の器官があり、袋の中にイシカワエラ属の細菌がぎっしりと詰まっている[9]。産卵中のメスは、卵を3、4個生むごとに、細菌を含んだ黒い粒を肛門から出して卵に付ける。孵化した幼虫は、黒い粒を探しもとめ、口吻を刺して内容物をとりこむ。こうして母から子に細菌が受け継がれる[10]。この細菌は、植物の汁に含まれない栄養素を合成してカメムシに提供する相利共生の関係にある。実験的に共生細菌なしに育てられた幼虫は死亡率が著しく高くなり、成長しても白く小さく柔らかな異常な個体になってしまう[11]


  1. ^ 石川他編(2012),p.439
  2. ^ 以下、主として石井他編(1950),p.187
  3. ^ 安松他(1965),p.76
  4. ^ a b 志村編(2005),p.88
  5. ^ 石川他編(2012),p444
  6. ^ 細川貴弘『カメムシの母が子に伝える共生細菌』、38頁。
  7. ^ 以下、この項は主として佐藤(2003),p.315
  8. ^ a b 梅谷、岡田(2003),p.141
  9. ^ 細川貴弘『カメムシの母が子に伝える共生細菌』、20 - 21頁。
  10. ^ 細川貴弘『カメムシの母が子に伝える共生細菌』、22 - 24頁。
  11. ^ 細川貴弘『カメムシの母が子に伝える共生細菌』、25 -27頁。
  12. ^ 細川貴弘『カメムシの母が子に伝える共生細菌』、32頁。
  13. ^ 石川他編(2012),p443
  14. ^ 梅谷、岡田(2003),p.931
  15. ^ 友国監修(1993),p.212
  16. ^ 石川他編(2012),p440
  17. ^ 石川他編(2012),p.441,443
  18. ^ a b 佐藤(2003),p.315


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