ポルバース
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/10/18 05:48 UTC 版)
が知られている。以下に説明する。
ラピテースの子
このポルバースは、テッサリアー地方のラピテース族の王ラピテースと、エウリュノモスの娘オルシノメーの子で、ペリパースと兄弟[1]、トリオパースと異母兄弟[2]。エペイオスの娘ヒュルミーネーと結婚し[3]、アウゲイアース[4][5]、アクトール[3][5]、ティーピュスをもうけた[6][7]。ポルバースは当初はペリパースとともにペーネイオス川の流域を支配したが、その後、アカイア地方のオーレノスに移った。さらにエーリス地方の王の1人アレクトールに招かれてエーリス地方に赴き、王権を分与された[1]。ただし、パウサニアースはポルバースをエーリス地方出身の英雄としている[3]。
トリオパースの子
このポルバースは、(カナケーの子の)トリオパースの息子である[8][9][10]。母はミュルミドーンの娘ヒスキュラで[10]、エリュシクトーン[11]、イーピメデイア[12]、ペレーンと兄弟[9]。
ロドスのポリュゼロス(Polyzelos the Rhodian)を引用するヒュギーヌスによると、へびつかい座はポルバースであるという。ポルバースが航海中に嵐に巻き込まれてロドス島に漂着したとき、ロドス島は多数の蛇に襲われており、とりわけ巨大な大蛇によって多くの島民が殺されていた。そこでポルバースはすべての蛇を退治し、ロドス人の苦難を救った。アポローンの寵を得ていたポルバースはその後、蛇を殺す姿で星座の中に加えられた[10]。シケリアのディオドーロスも同様の伝承を伝えている。それによると蛇の害に苦しめられたロドス人は、デロス島のアポローンの神託に伺いを立てた[13]。するとアポローンはロドス人にポルバースの入植を受け入れるよう命じた。ちょうど入植地を探していたポルバースはロドス島に招かれ、蛇を退治したのち島に移住した[14]。
ヒュギーヌスの伝承ではポルバースはアポローンの寵の厚い人物とされているが、『ホメーロス風讃歌』第3歌の「アポローン讃歌」では、ポルバースは(おそらく)アポローンの恋敵として言及されている[8]。
アルゴスの王の1人
このポルバースは、アルゴスの王の1人である。パウサニアースによると、ポローネウスの娘の子(つまりニオベーとゼウスの子)アルゴスの子で、ペイラソス[15]、ティーリュンス[16]、エピダウロスと兄弟であり[17]、トリオパースの父であるという。息子トリオパースにはイーアソスとアゲーノールが生まれ、イーアソスにはイーオーが、アゲーノールにはクロトーポスが生まれ、さらにクロトーポスにステネラースが生まれたという[15]。
しかし系譜伝承は錯綜しており、アポロドーロスのアルゴス王家の系譜にはポルバースの名前は登場しない[18]。ヒュギーヌスの系譜においてもポルバースの名は現れず、トリオパースはアルゴスの子の1人ピラントスの子とされている[19]。
一方でキリスト教の教父たちは、ポルバースをアルゴスの6代目の王として伝えている[20][21][22]。
- ^ a b シケリアのディオドロス、4巻69・2。
- ^ シケリアのディオドロス、5巻61・3。
- ^ a b c パウサニアース、5巻1・11。
- ^ アポロドーロス、2巻5・5。
- ^ a b シケリアのディオドロス、4巻69・3。
- ^ ヒュギーヌス、14話。
- ^ ヒュギーヌス、18話。
- ^ a b 『ホメーロス風讃歌』第3歌「アポローン讃歌」211行。
- ^ a b パウサニアース、7巻26・12。
- ^ a b c “ヒュギーヌス『天文譜』2巻14”. ToposText. 2022年5月4日閲覧。
- ^ ビューザンティオンのステパノス「Triopion」の項。
- ^ アポロドーロス、1巻7・4。
- ^ シケリアのディオドーロス、5巻58・4。
- ^ シケリアのディオドーロス、5巻58・5。
- ^ a b パウサニアース、2巻16・1。
- ^ パウサニアース、2巻25・8。
- ^ パウサニアース、2巻26・2。
- ^ アポロドーロス、2巻1・2。
- ^ ヒュギーヌス、145話。
- ^ “エウセビオス『年代記』64”. ToposText. 2022年5月4日閲覧。
- ^ “タティアノス『ギリシア人への言葉』39”. ToposText. 2022年5月4日閲覧。
- ^ “アウグスティヌス『神の国』18巻8”. ToposText. 2022年5月4日閲覧。
- ^ 『スーダ』「Phorbanteion」の項。
- ^ ビューザンティオンのステパノス「Ambrakia」の項。
- ^ ビューザンティオンのステパノス「Dexamenai」の項。
- ^ オウィディウス『変身物語』5巻74行以下。
- ^ セネカ『オイディプース』838行-846行。
- ^ セネカ『オイディプース』802行-810行。
- ^ セネカ『オイディプース』843行以下。
- ^ 『イーリアス』9巻665行。
- ^ a b クレータのディクテュス、2巻16。
- ^ クレータのディクテュス、2巻19。
- ^ 『イーリアス』9巻665行-668行。
- ^ 『イーリアス』14巻489行-507行。
- ^ クレータのディクテュス、4巻7。
- ^ プルタルコス「ロームルス伝」2。
- ^ ノンノス『ディオニューソス譚』14巻94行以下。
- ^ アレクサンドリアのヘーシュキオス「ポルバース」の項。
- ^ 高津春繁『ギリシア・ローマ神話辞典』p.268b。
- ^ オウィディウス『変身物語』12巻322行。
- ^ “プトレマイオス・ヘパイスティオン”. Tertullian Project. 2022年5月4日閲覧。
- ^ スタティウス『テーバイス』7巻253行。
- 1 ポルバースとは
- 2 ポルバースの概要
- 3 ポセイドーンの子
- 4 デクシテアーの父
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