フェドロフM1916 開発の背景

フェドロフM1916

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/05/29 06:18 UTC 版)

開発の背景

第一次大戦当時のルイス軽機関銃: 最も軽い軽機だったが、重量は12kgもあった。
MP18を持った突撃歩兵の兵士

第一次世界大戦では機関銃が戦場を支配する塹壕戦が常態化したが、これはロシア軍にとって日露戦争で経験済みの事態だった。

1905年黒溝台会戦で、日本陸軍秋山支隊が用いた「機関銃と塹壕による陣地戦術」[† 1]により大損害を被ったロシア軍は、続く旅順攻囲戦奉天会戦でも当時画期的であった同戦術を駆使する日本軍に対し有効な攻撃手段を持たなかったため、継戦不能となるほどの損害を被っていた。

セルビア人の汎スラブ主義を煽っていたロシアにとって、これと鋭く対立していたドイツとの衝突が現実となれば、ロシア軍もまた塹壕陣地と対峙して大損害を被る事は明白であり、ロシア軍がドイツ軍に対して有していた大兵力の優位性が封じられてしまう事が予想されたため、ロシアは他の欧州諸国に先んじて塹壕陣地突破の戦術を研究しており、ブルシーロフによる独自の浸透戦術の実践が進められていた。

ブルシーロフの浸透戦術には、敵が構築した塹壕線の脆弱点を衝いて後方に侵入する突撃歩兵(Stoßtruppen)と呼ばれる特殊な部隊が必要とされていた。突撃歩兵は前線の後方に侵入するために、敵の塹壕線上に存在する脆弱点まで走って肉薄し、後続の部隊とともに後方へ侵入するために敵の機関銃座を無力化する必要があり、このためには濃密な弾幕を形成できる全自動火器を携帯できる事が理想と考えられていた。

しかし、当時の機関銃は陣地に設置することを前提とした巨大かつ重量級の装備であり、開発された当初の軽機関銃も数人がかりで運用される程の代物であり、突撃歩兵のように身軽に動ける事が前提の部隊での運用は困難だった。後にブルシーロフ攻勢で大損害を蒙ったドイツ軍は、浸透戦術を研究して自軍にも突撃歩兵を創設しているが、その装備とされたのは手榴弾MP18短機関銃だった。


注釈

  1. ^ 野戦において本格的に機関銃が使用されたのは、これが最初だったとされる。

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m Оружие нового типа. Автомат Фёдорова”. Оружейный журнал "Калашников". 2020年12月15日閲覧。
  2. ^ a b "Rifles: an illustrated history of their impact" David Westwood, ABC-CLIO, 2005, ISBN 1-85109-401-6, 9781851094011
  3. ^ a b c Первый в мире автомат”. Русский Портал. 2020年12月16日閲覧。
  4. ^ a b Fedorov Avtomat”. Historical Firearms. 2020年12月15日閲覧。
  5. ^ 陸軍省大日記乙輯 鹵獲兵器交付の件(昭和13年12月)
    「張鼓峯事件ニ於ケル鹵獲兵器ヲ別紙ノ通陸軍航空本部陸軍技術本部並陸軍被服本廠ヘ夫々交付方取計ハレ度依命通牒ス」「一八九一式小銃 フエドロフ自動小銃 一九二五式自動小銃 コローフイン式拳銃 ナガン式拳銃 信号拳銃 フエドロフ自動小銃破損品」
  6. ^ 陸満密大日記 第14冊 不正越境蘇連兵「スモリヤカー」の携帯せる「サカロフ」自動小銃性能実験射撃に関する件(昭和15年9月30日 )
    「サカロフ自動小銃概説 一、欧洲大戰当時ノフイヨドルフ式自動小銃ハ旧式ニシテ目下部隊ニハ支給シアラザルモノノ如ク~」
    注: 日本軍側の資料の「サカロフ」という呼称は、「張鼓峯事件鹵獲「ソ軍」兵器写真要覧」や「蘇軍「サカロフ」式自動小銃説明書」にも見られ、シモノフM1936半自動小銃を指して使われていた。
  7. ^ 6.5-мм пулемет Федорова-Дегтярева”. airwar.ru. 2020年12月16日閲覧。


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