ハッシュ (アルバム) ハッシュ (アルバム)の概要

ハッシュ (アルバム)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/23 16:42 UTC 版)

ハッシュ/ディープ・パープルI
紫の世界(旧題)
ディープ・パープルスタジオ・アルバム
リリース
録音 1968年5月11日~13日
パイ・レコードのスタジオ
ジャンル ハードロック
サイケデリック・ロック
時間
レーベル テトラグラマトンワーナー・ブラザース・レコード(再発盤)
パーロフォン
日本グラモフォンワーナーミュージック・ジャパン(再発盤)
プロデュース デレク・ローレンス英語版
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 24位(アメリカ[1]
  • ディープ・パープル アルバム 年表
    ハッシュ/ディープ・パープルI
    (1968)
    詩人タリエシンの世界
    (1968)
    テンプレートを表示

    解説

    内容

    レコーディングロンドンにあったパイ・レコードのスタジオで1968年5月11日から13日まで行われ、時間も費用もさほどかからなかった[2]プロデューサーリッチー・ブラックモアと旧知の間柄[3]で彼の依頼を受けた[2]デレク・ローレンス英語版エンジニアはバリー・アインスワース(Barry Ainsworth[4]である。

    計9曲の収録曲のうち4曲がカバー作品。「ハッシュ」はアメリカのシンガー兼ギタリストのジョー・サウスの作品で、ディープ・ソウル・シンガーのビリー・ジョー・ロイヤルが1967年に発表した[注釈 1]。「アイム・ソー・グラッド」はデルタ・ブルース・シンガーのスキップ・ジェイムスの1931年の作品[注釈 2]で、ロッド・エヴァンスイアン・ペイスが在籍していたザ・メイズ(The Maze[5]が1967年に発表した4曲入りのEPで取り上げた[6][7]。「ヘルプ」はザ・ビートルズの1965年の作品。「ヘイ・ジョー」はアメリカのシンガーのビリー・ロバーツによって1962年に著作権が登録された楽曲[注釈 3]で、ディープ・パープルはモーリス・ラヴェルの「ボレロ」を彷彿とさせるリズムや、 マヌエル・デ・ファリャの『三角帽子』のバレエ第2幕の2番「粉屋の踊り」の一節を取り入れている[注釈 4]

    5曲がオリジナル作品。「プレリュード・ハッピネス」では、リムスキー=コルサコフの『シェヘラザード』の複数の箇所が引用されている[注釈 4]

    本作はアメリカで1968年7月にテトラグラマトン・レコード英語版から[8]、イギリスで同年9月にパーロフォンから[9]発表された[10]。1970年にテトラグラマトン・レコードが倒産した結果、アメリカでは廃盤になった[注釈 5]

    日本では1969年4月に、テトラグラマトン・レコードの原盤が日本グラモフォンから『紫の世界』の邦題で発売された(ポリドール、SMP 1426)[11]。1970年のテトラグラマトン・レコードの倒産によって日本盤も廃盤になったが、1973年9月にワーナー・パイオニアから『ハッシュ/ディープ・パープルI』と改題されて再発売された(P-8367W)[12]

    論評

    ディープ・パープルがデビューした当時はサイケデリック・ロックあるいはアート・ロックと呼ばれるジャンルが人気を集めており、ヴァニラ・ファッジクリームドアーズなどがヒット・チャートを賑わせていた。本作はそのような音楽の影響を強く受けている。デビュー当時のディープ・パープルではキーボーディストのジョン・ロードが中心的な役割を果たしており、彼等はロードの好みに合ったヴァニラ・ファッジ[注釈 6]などを模範とした音楽を演奏していた[13]

    本作では、ギターとキーボードが対等な割合を占める、というディープ・パープルのスタイルが既に確立されている。後にハード・ロック・ギタリストのパイオニアの一人と称されることになるリッチー・ブラックモアは、この時には未だそのアイデンティティを獲得していなかった。しかし、彼が主導してハード・ロック・グループとなった第2期の初期にも頻繁に演奏された「マンドレイク・ルート」や、2020年発表のアルバム『Whoosh!』で再び取り上げられた「アンド・ジ・アドレス」などは、後のハード・ロック路線を示唆しうる作品である。当時彼等は既にステージで、イアン・ペイスのドラムスを軸に、ハモンド・オルガンとギターが絡み合ったハードな即興演奏を披露していた。

    彼等の音楽の完成品を第2期の『ディープ・パープル・イン・ロック』以後の1970年代のハード・ロックであるとすれば、本作は、そこに到達するまでの試行錯誤の第一歩である。同時に、本作は1960年代のサイケデリック・ロックやアート・ロックとしての魅力を十分に持っている。

    収録曲

    1. アンド・ジ・アドレス - "And the Address" - 4:33
    2. ハッシュ - "Hush" - 4:21
    3. ワン・モア・レイニー・デイ - "One More Rainy Day" - 3:35
    4. プレリュード・ハッピネス〜アイム・ソー・グラッド - "Prelude:Happiness〜I'm So Glad" - 7:18
    5. マンドレイク・ルート - "Mandrake Root" - 6:03(69年発売時の邦題は「マンダラゲ」)
    6. ヘルプ - "Help" - 5:55
    7. ラヴ・ヘルプ・ミー - "Love Help Me" - 3:49
    8. ヘイ・ジョー - "Hey Joe" - 7:26
    Shades of Deep Purple (LP)
    • Side One
    #タイトル作詞・作曲時間
    1.「And the Address (アンド・ジ・アドレス)Ritchie Blackmore, Jon Lord
    2.「Hush (ハッシュ)Joe South
    3.「One More Rainy Day (ワン・モア・レイニー・デイ)Lord, Rod Evans
    4.「Prelude: Happiness〜I'm So Glad (プレリュード・ハッピネス〜アイム・ソー・グラッド)
  • Prelude: Happiness
  • I'm So Glad」
  •  
  • Blackmore, Evans, Lord, Ian Paice, Nick Simper
  • Skip James
  • 合計時間:
    Shades of Deep Purple (LP)
  • Side Two
  • #タイトル作詞・作曲時間
    1.「Mandrake Root (マンドレイク・ルート)Blackmore, Lord, Evans
    2.「Help (ヘルプ)John Lennon, Paul McCartney
    3.「Love Help Me (ラヴ・ヘルプ・ミー)Blackmore, Evans
    4.「Hey Joe (ヘイ・ジョー)Billy Roberts
    合計時間:

    注釈

    1. ^ ドイツでヒットして、当時ハンブルグで活動していたリッチー・ブラックモアの関心を惹いた。
    2. ^ クリームが1967年のデビュー・アルバム『フレッシュ・クリーム』でカバーした。
    3. ^ ジミ・ヘンドリックスがカバーして1966年12月にシングルとして発表。全英シングルチャートで最高6位を記録した。
    4. ^ a b 明記されてはいない。
    5. ^ 1972年にワーナー・ブラザーズ・レコードから第1期の編集アルバム『紫の軌跡英語版』が発表され、本作から「アンド・ジ・アドレス」「ハッシュ」「マンドレイク・ルート」「ヘイ・ジョー」が収録された。
    6. ^ ディープ・パープルと同様に、ギターとハモンド・オルガンとの二本立てのバンドだった。

    出典

    1. ^ Deep Purple - Awards : AllMusic
    2. ^ a b Popoff (2016), pp. 37–38.
    3. ^ Popoff (2016), pp. 18, 19, 21.
    4. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    5. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    6. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    7. ^ Popoff (2016), p. 26.
    8. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    9. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    10. ^ Popoff (2016), pp. 42, 44.
    11. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    12. ^ Discogs”. 2023年12月1日閲覧。
    13. ^ Popoff (2016), pp. 39–40.


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