トヨタ・ガズー・レーシング・ヨーロッパ
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スポーツカーレース
サーキットレースデビュー
1990年代後半TTEはWRC活動のかたわら、ル・マン24時間レース等の耐久レースへ参戦するため、トヨタ・GT-One TS020の開発を行った。アンダーソンによると、1996年末にカローラWRCの開発を中止し、ル・マンプロジェクトに取り組むようトヨタ本社から通達されたという。しかし海外営業の猛反対により、WRC復帰とル・マン参戦を並行して進めることになった[44]。1998年と1999年にはル・マン24時間レースに出場し、1999年には土屋圭市/片山右京/鈴木利男の日本人トリオが総合2位(LMGTPクラス優勝)に入ったものの、目標とした総合優勝には届かなかった。実はこのプロジェクトはサーキットレース経験のなかったTMGに、F1に参戦するための経験を積ませるために本社側が企図したものであるが、それがTMG側に伝えられたのは1998年のル・マンが終わってからであった[45]。
WECへの挑戦
F1撤退後、トヨタは市販ハイブリッド技術の活用を含め新たな活動を模索していた。そして2011年、ル・マン24時間レースに参戦するレベリオン・レーシングに対しエンジン供給を行い[46]、耐久レースへの復帰路線が濃厚になる。なお、このエンジンはフォーミュラ・ニッポンやSUPER GT (GT500) 用のRV8KをLMP1規定にチューニングしたもので、新規開発ではない[6]。
2012年、新たにLMP1クラス用のハイブリッドマシンであるTS030 HYBRIDを開発。オレカとジョイントし「トヨタ・レーシング」としてWECに参戦することを表明した[47]。デビュー3戦目となる第5戦サンパウロ6時間レースでは、トヨタとしては1992年以来となる優勝を果たした。
2014年にはLMP1クラスのレギュレーション変更に伴い新型車のTS040 HYBRIDをデビューさせた。悲願としていたル・マンこそ勝てなかったものの、シリーズではアウディとポルシェを破り、日系メーカーとして初めてスポーツカーレースの世界選手権を制覇した。
2016年にトヨタのモータースポーツ事業再編により、チーム名をTOYOTA GAZOO Racingに改めた。ル・マンではサルト・サーキットに特化して開発したTS050 HYBRIDで最終盤まで有利に進めていたが、小林のスピンに加えて残り6分で異常が発生し、3分でストップするというスポーツ史に残る歴史的な悲劇で敗北を喫した。
2017年のル・マンは復帰以来初の3台体制で挑んだが、オペレーションのミスに加えて「偽マーシャル」事件というこれまた類い希な不運により、夜明け前に全車が勝負権を失った。選手権ではポルシェを上回る5勝をあげたものの、ル・マンでの大敗が大きく響いて最終戦前にタイトルを奪われた。
2018年は現役F1王者のフェルナンド・アロンソを加え、トラブルシミュレーションを徹底して万全の準備で2台体制で参戦。ポルシェの撤退によりワークスチームがトヨタのみという状況ではあったが、トヨタの30年越しの悲願であるル・マン制覇を果たした。2019年・2020年もル・マンを制覇し3連覇。
2021年はLMP1規定が廃止されル・マン・ハイパーカー(LMH)規定に移行したため、LMH車両としてGR010 HYBRIDを開発。ル・マンでは燃料系にトラブルを抱え、グリッケンハウスやアルピーヌなどに迫られるシーンもあったものの、最終的に小林擁する7号車が悲願の初優勝を果たし、4連覇を達成した。
2022年は引退した中嶋一貴に代わり平川亮が加入し、小林可夢偉がチーム代表を兼任。ル・マンでは平川擁する8号車が優勝し、5連覇を達成。シリーズも最終戦までアルピーヌと争いながらもドライバーズ、マニュファクチャラーズの両タイトルを獲得し、シリーズ4連覇を達成した。
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- ^ CS-Cup: The Better Package
- ^ トヨタ、「86」のラリー仕様車「GT86 CS-R3」の最終スペックを発表!
- ^ トヨタ 86、欧州で新たなレース開催へ!レーサーとラリーが同ステージで参戦
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- ^ Toyota’s incredible motorsport secret stash
- ^ DAY1-3 Yaris WRCエンジン開発秘話
- ^ 「TGR ニュルブルクリンク24時間耐久レースでの経験がトヨタ自動車に新たな風を吹き込む」 脇阪寿一の走らなアカン! 2017年6月7日
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