ダイヤ改正
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/28 20:50 UTC 版)
概要
ダイヤ改正は、その規模により従来のダイヤを一旦白紙(=ゼロベース)に戻した上で、すべてを書き換える白紙改正(ゼロベース改正とも言う[注釈 2])と、従来のダイヤを基本として、少しずつ修正・追加する挿入式改正に大別される。
鉄道においてダイヤ改正を行う契機としては、
- 信号場・駅あるいは待避線の新設・廃止による線路の輸送容量の見直し
- カントのかさ上げや重軌条化・一線スルー化・保安装置の更新などに伴う列車の最高速度の変更
- 複線・複々線の新設による線路の輸送容量の増加
- 電化、新型車両の投入などに伴う列車の最高速度・加減速度・曲線進入速度の変化または1列車あたりの輸送容量の増減
などが挙げられる。また、直通運転や接続を行う路線のダイヤが改正されると一緒にその路線のダイヤも改正される場合が多い。
ダイヤ作成の場において、鉄道事業者としては従来設定されていない列車の登場や利用率の低い列車の廃止なども予告されることがあり、特に営業上重要である新型車両の落成などによる優等列車の車両交代などはこの日を境として行われることが多い[注釈 3]。翌日からの新ダイヤに備えるため、改正日の前夜はダイヤを一部変更したり、終電後の深夜に回送列車を運行する場合もある。一般に改正日の始発列車から施行されるが、夜行列車については改正後の態勢へ移行する関係で前日に出発する列車の時刻や編成、停車駅などが改正前と一部異なる場合があった。そうした場合を含め、日付をまたぐ列車については臨時列車として運行することが通例となっている[注釈 4]。
ダイヤ改正により利便性が低下した場合、利用者などから「ダイヤ改悪」と揶揄されることもある。減便するための改正であっても多くの鉄道事業者は「ダイヤ改正」と表記するが、一部の鉄道事業者やバス事業者およびメディア[注釈 1]でも、「改正」ではなく「改定」や「変更」、「見直し」としているのはそのためである[1]。ただし、優等列車の本数や停車駅変更は利用者により利害が一致しない場合が多い。停車駅削減には削減対象駅の利用客や周辺施設などから反発が強いため、ダイヤ上の基幹となる列車種別を変更して実質的な停車駅削減を行う例なども見られる[注釈 5]。ただし近年では内容に関わらず大規模な時刻変更そのものが「ダイヤ改正」という言葉で定着しているという理由から「改正」という言葉を再び使い始めた事業者や[2]、昨今の社会情勢により内容がほとんど減便としていたため「改正」を使わず「見直し」を使う事業者もある。
- ^ a b 鉄道事業者およびバス事業者や報道機関により呼び名が若干異なる場合があり、「ダイヤ改正」のほかに「ダイヤ改定」・「ダイヤ変更」・「新ダイヤ」等を使っている場合もある。また軽微な改正については、「ダイヤ修正」・「ダイヤ一部改正」・「ダイヤ一部改定」・「ダイヤ一部変更」・「訂補」(冊子の時刻表での表現)等が使われる。
- ^ 日本経済新聞電子版の「近鉄がダイヤ抜本改正 12年3月、停車駅見直し終電も早く」では「ゼロベースから需要に合わせたダイヤに編成し直したい」との近畿日本鉄道幹部のコメントが掲載されている。
- ^ ただし、事業者によっては新型車両はダイヤ改正に関係なく順次投入することもあり(普通列車など)、車両交代によって速度向上、到達時間の短縮が可能な場合は必要編成数がすべて揃った直後にダイヤ改正を行なうことがある。
- ^ a b 夜行列車が多数運行されていた1990年代初め頃までは冊子型の時刻表にも改正日の前日に出発する夜行列車の時刻のみをまとめた「移行ダイヤ」のコーナーが別途掲載されていた。 - 『JR時刻表』(編集・発行 弘済出版社)1993年3月号ではJRニュース27 - 35頁に「3月17日発夜行列車時刻表」が掲載されている。続くJRグループダイヤ改正号の1994年12月号ではそのような時刻の掲載はない。
- ^ 2009年3月14日の大阪駅終電の種別変更など
- ^ この手法は「疎開留置」と称されている。
- ^ ただし、東海道・山陽新幹線のN700系、「成田エクスプレス」のE259系への置き換えなど、ダイヤ改正を行わず順次既存車両と入れ替えていくこともある。ダイヤ改正に伴う車両の取り換えは、新幹線や特急・急行列車の優等列車専用車両など、車両を入れ替えることによりサービス面で大きな変化が起きるときに行われることが多い。
- ^ 1997年、2003年、2004年は10月、2006年 - 2010年・2012年以降は3月に実施。2019年には埼京線に限り、11月にダイヤ改正を実施している。
- ^ 特にJR四国は現在でもダイヤ改正が実施されない年がある(2015年はダイヤ改正実施がなかった)。
- ^ 2022年のJR九州のように、3月・4月以外に新規路線開業が行われる場合は、その年の3月・4月のダイヤ改正を非実施もしくは小規模なものとし、新規路線開業時に大規模なダイヤ改正を行う場合がある。
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