スポーツ 教育

スポーツ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/21 21:05 UTC 版)

教育

多くの文明において、身体を鍛えることは教育の一環として非常に重視されていた。ヨーロッパにおいては、それまで教育においては軽視されていた体育がルネサンス期以降カリキュラムに採り入れられるようになり[53]、19世紀に義務教育が導入されると体育も必修科目となった[53]。日本でも明治政府がこの考え方を取り入れ、1872年の学制発布時に教科の一つとなり、以後学校教科としての体育が定着していった[54]

科学

スポーツを対象とした学問分野はスポーツ科学と総称される。スポーツ科学の起源は19世紀末にさかのぼり、当初はより高い身体能力の構築や選手の治療といったスポーツ医学の分野からはじまったが、やがてスポーツ社会学など人文・社会科学分野にも広がりを見せるようになり、また自然科学においても医学以外の分野へ発展していった[55]。1970年代には人類学との関連も始まり、1980年代にはスポーツ人類学が確立した[56]。こうしたスポーツ科学の発展はより競技者の能力を引き出せる質の高いスポーツ用具の開発を促し[57]、また映像技術の活用によってより優れたスポーツ技術が一般化され、記録の更新へとつながっていった[58]。判定にもビデオ判定が導入されることにより、誤審の減少へとつながっている[59]

文化

スポーツは市民の文化や健康にとって欠かせないものと考えられており、多くの国家でスポーツを振興するためのスポーツ政策が実施されている[60]。プロスポーツの拡大やスポーツ人口の増大は都市におけるスポーツスタジアム建設を不可欠なものとしたが、こうしたスタジアム建設は都市にとって大規模な再開発や都市基盤整備の契機となる[61]。なかでもオリンピックやサッカーワールドカップのような大規模スポーツイベントが経済・文化的にもたらす影響は大きく、例えば1964年東京オリンピックでは開催に合わせて新幹線など各種インフラが整備され、開催国である日本に大きな変革をもたらした[62]

スポーツを題材とした作品は数多く存在し、文学、映画、漫画など多くの分野でそれぞれ傑作が生まれている[63]

芸術

美的な事柄についての哲学である美学の領域において、近年スポーツに注目する理論家が増えてきた[64]。例えば、デビッド・ベストは、スポーツと芸術との類似性について書き、倫理との関連性なしにスポーツが純粋に美的なものに近いことを強調した[64]。ベストは、芸術の特徴として、人生に道徳的な考察をもたらす能力を持っていることを挙げる[64]。スポーツにはこのような能力はないが、多くのスポーツの楽しみは間違いなく美的なものであると彼は考えた[64]

1998年スロヴェニア共和国リュブリャナで行われた第14回国際美学会議で発表された、ヴォルフガング・ヴェルシュの論考「スポーツー美学の視点から、さらには藝術として?」は、鋭い洞察力を以て、スポーツが芸術に似ているところを解析し、現代の文化状況に問いを投げかけた[65]。かつて精神を鍛える手段として、倫理の領域に属するものと見倣されていたスポーツは、いまでは、美的/感性的なものとして、芸術の性格を顕著に示すようになり、「今日の the popular art」と呼びうるものになっている、とヴェルシュは考えた[65]

出典


  1. ^ First global market research project unveils more than one billion cricket fans 国際クリケット評議会 2019年7月6日閲覧。
  2. ^ 大辞泉小学館
  3. ^ ブリタニカ国際大百科事典「スポーツ」
  4. ^ 「遊戯」という言葉は運動に限らない遊び全般を指す言葉となっている。
  5. ^ スポーツ - 語源由来辞典”. gogen-allguide.com. 2020年8月10日閲覧。
  6. ^ べーリンガー 2019, pp. 422–432.
  7. ^ べーリンガー 2019, p. 35.
  8. ^ べーリンガー 2019, p. 29.
  9. ^ べーリンガー 2019, pp. 41–42.
  10. ^ べーリンガー 2019, pp. 87–88.
  11. ^ 4. 近代スポーツを生んだ英国の階級文化 スポーツの始まり”. 笹川スポーツ財団. 2021年10月1日閲覧。
  12. ^ べーリンガー 2019, pp. 359–360.
  13. ^ べーリンガー 2019, pp. 361–362.
  14. ^ a b 山下晋司・船曳建夫 編『文化人類学キーワード』有斐閣、1997年、194頁。ISBN 4-641-05863-6 
  15. ^ べーリンガー 2019, pp. 373–376.
  16. ^ べーリンガー 2019, pp. 381–382.
  17. ^ 「スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える」p43-44 原田宗彦 平凡社新書 2002年6月19日初版第1刷
  18. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 28-29.
  19. ^ 体育・スポーツにおける多様な性のあり方ガイドライン”. 2023年4月15日閲覧。
  20. ^ <アスリートの性差考>混合種目が競技に活力も”. 2023年4月15日閲覧。
  21. ^ 知られざるeSports ~eSportsはスポーツか? | InfoComニューズレター”. InfoComニューズレター(株式会社情報通信総合研究所). 2021年7月31日閲覧。
  22. ^ 「よくわかるスポーツ人類学」p110 寒川恒夫編著 ミネルヴァ書房 2017年3月31日初版第1刷発行
  23. ^ 【フィギュア】真央、3回転半2度跳ぶ!ソチへ「自身最高難度」解禁:スポーツ報知
  24. ^ オリンピック憲章 - JOC
  25. ^ The Most Popular Sports in the World”. World Atlas (2018年). 2018年8月17日閲覧。
  26. ^ 「スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える」p56-58 原田宗彦 平凡社新書 2002年6月19日初版第1刷
  27. ^ Tomlinson 2012, p. 18.
  28. ^ べーリンガー 2019, pp. 513–517.
  29. ^ べーリンガー 2019, p. 397.
  30. ^ 佐野慎輔 (2019年8月21日). “エイベリー・ブランデージ 神になった「Mr.アマチュア」”. 笹川スポーツ財団. 2021年6月29日閲覧。
  31. ^ オリンピズムって何だろう 第5回 時代とともに変わるオリンピック憲章”. 公益財団法人日本オリンピック委員会. 2021年6月29日閲覧。
  32. ^ Tomlinson 2012, pp. 96–97.
  33. ^ べーリンガー 2019, pp. 497–498.
  34. ^ べーリンガー 2019, pp. 499–501.
  35. ^ Tomlinson 2012, p. 102.
  36. ^ Tomlinson 2012, pp. 98–99.
  37. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 22-25.
  38. ^ 「スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える」p187 原田宗彦 平凡社新書 2002年6月19日初版第1刷
  39. ^ 呉羽正昭 著「グローバル時代のツーリズム」、矢ヶ﨑, 典隆、山下, 清海、加賀美, 雅弘 編『グローバリゼーション 縮小する世界』朝倉書店、2018年、96-97頁。ISBN 978-4254168815 
  40. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 36-37.
  41. ^ Tomlinson 2012, pp. 106–107.
  42. ^ Tomlinson 2012, pp. 104–105.
  43. ^ 佐々木 1999, pp. 12–13.
  44. ^ 佐々木 1999, p. 21.
  45. ^ 佐々木 1999, p. 28.
  46. ^ 佐々木 1999, p. 34.
  47. ^ 矢ヶ﨑典隆 著「スポーツで結びつく世界の人々と地域」、矢ヶ﨑, 典隆、山下, 清海、加賀美, 雅弘 編『グローバリゼーション 縮小する世界』朝倉書店、2018年、123-125頁。ISBN 978-4254168815 
  48. ^ Tomlinson 2012, pp. 12–13.
  49. ^ オリヴァー・ジマー著、福井憲彦訳『ナショナリズム 1890-1940』岩波書店、2009年、66-69頁。ISBN 978-4000272063 
  50. ^ 「新版 スポーツの歴史」p195 レイモン・トマ著 蔵持不三也訳 寒川恒夫付論 白水社 1993年12月25日第1刷発行
  51. ^ 桜井三枝子・中原篤史編『ホンジュラスを知るための60章』明石書店、2014年、155-157頁。ISBN 978-4750339825 
  52. ^ 「新版 スポーツの歴史」p196 レイモン・トマ著 蔵持不三也訳 寒川恒夫付論 白水社 1993年12月25日第1刷発行
  53. ^ a b べーリンガー 2019, pp. 179–183.
  54. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 88-89.
  55. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 62-63.
  56. ^ 「よくわかるスポーツ人類学」p2-3 寒川恒夫編著 ミネルヴァ書房 2017年3月31日初版第1刷発行
  57. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 70-71.
  58. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 62.
  59. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 74-75.
  60. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 48-49.
  61. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 106-107.
  62. ^ 「スポーツイベントの経済学 メガイベントとホームチームが都市を変える」p48-50 原田宗彦 平凡社新書 2002年6月19日初版第1刷
  63. ^ 井上俊・菊幸一編著 2020, p. 134-139.
  64. ^ a b c d Aesthetics”. Internet Encyclopedia of Philosophy. 2021年9月30日閲覧。
  65. ^ a b 佐々木健一 2004, p. 106.






スポーツと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「スポーツ」の関連用語

スポーツのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



スポーツのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのスポーツ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS