シニフィアンとシニフィエ 概要

シニフィアンとシニフィエ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/28 16:10 UTC 版)

概要

シニフィアンは、フランス語動詞 signifier現在分詞形で、「指すもの」「意味するもの」「表すもの」という意味を持つ。

それに対して、シニフィエは、同じ動詞の過去分詞形で、「指されるもの」「意味されているもの」「表されているもの」という意味を持つ。

日本語では、シニフィアンを「記号表現」や「能記[1]、シニフィエを「記号内容」や「所記」などと訳すこともある[2]。「能記」「所記」は岩波書店版『一般言語学講義』の小林英夫による訳業であり、以降広く用いられたが、現在では用いられることは少ない。

日本語 フランス語 英語
シニフィアン
(記号表現、能記)
signifiant signifier 」という文字や、「うみ」という音声
シニフィエ
(記号内容、所記)
signifié signified 海のイメージや、海という概念、ないしその意味内容

シニフィアンとは、のもつ感覚的側面のことである。たとえば、海という言葉に関して言えば、「海」という文字や「うみ」という音声のことである。一方、シニフィエとは、このシニフィアンによって意味されたり表されたりする海のイメージや海という概念ないし意味内容のことである。そして、表裏一体となったシニフィアンとシニフィエの対が「シーニュ」(signe)すなわち「記号」である。

二つの関係

シニフィアンとシニフィエの関係(シニフィカシオン signification または記号表意作用)は、

  • その関係に必然性はない。(記号の恣意性)
    たとえば、「海」そのものを「海」と書き、「う・み」と発音する必然性はどこにもない。もしそうでなければ、あらゆる言語で海は「う・み」と発音されているはずである。
  • 必然性がないにもかかわらず、それが了解される体系のなかでは、必然とされている。
    日本語を解する人が「海」という字を見たり、「う・み」という音を聞いたりするとき、そこでイメージされるものの根底は基本的に同じである。また、「海」はどうして「う・み」というのか、という質問に答えることは非常に難しい。

ととらえることができる。

シニフィエとレフェラン

ゴットロープ・フレーゲの指摘にもあるように、シニフィエにあたる「意味」ないし「概念」は「指示対象」とは必ずしも一致しない。この意味において、「指示対象」はレフェラン(référent)と呼ばれ、シニフィエとは区別される。


  1. ^ 「能」は「能動」の意味。
  2. ^ 「所」は「所与」「所要」などの場合と同じく受身を表わす。つまり「所記」は「しるされるもの」の意味。


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