アマゾン川
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水の色
アマゾン川の本流の水の色はコーヒーのように茶褐色に濁っているが、水の色は支流によって違ってくる。
白い川
ソリモンエス川・マデイラ川・ブルス川・ジュルア川・ジュタイ川などは、本流との合流地点で薄い黄褐色の水を流しており、その特徴から「白い川」と呼ばれる。これらは主に偏西風が当たり降雨量が多いアンデス山脈東部を源流としているが、そのあたりは森林に覆われ侵食が起きにくい部分と、風化が進んだ岩石部分がある。急峻な渓谷では風化した岩石の崩壊がしばしば発生し川に落す。川は流下に伴って含んだ風化物質を微細に砕き、水の色を白くする[15]。
白い川の水は10-50 cm 程度の透明度であり濁っている。しかし岩石由来の栄養塩を豊富に含み、中性から弱アルカリ性を示す肥沃な水である。このため別名「肥えた川」(リオス・ファルトス)とも呼ばれ、魚類も多く棲息する[15]。
黒い川
ネグロ川の「ネグロ」は黒を指し、その名の通り流れる水は薄いコーヒーのように黒味がかっている。ネグロ川はベネズエラ国境付近を源流とするが、同じくこの地域から流れ出るオリノコ川の水も黒い。2本の川が発する地域は高低差があまりない森林が広がる場所で分水界も不明瞭であり、2つの川を繋ぐカシキアレ・カナールと呼ばれる天然の水路も存在する。森林はほとんどが浸水林(イガッポ林)であり、多雨も相まって枯れた植物が多く水に沈んだ状態にある。これが分解し、有機物の粒子が水に溶け込んで色を黒くする[15]。
黒い川の水は有機酸の作用でpH3.8-4.9と酸性となり、栄養塩類も少ない。このため別名「飢餓の川」(リオス・デ・フォーメ)とも呼ばれる[15]。
緑の川
アマゾン本流と南から合流するタバジョース川やシングー川は澄んだ水を湛え、青みがかった緑色に見える事からこれらは「緑の川」と呼ばれる。古い地層で硬い結晶質の岩石からなるアマゾン高原は起伏も少なく、浸食作用が起きにくい。ここを源流とする緑の川には水に粒子が紛れ込む事が非常に少なく、水深4 m 程まで見通せるほど透き通っている[15]。
緑の川の水は含有物質が少なく、pH4.5-7.8程度の酸性から弱アルカリ性となる。タバジョース川はしばしば川岸に美しく白い砂浜をつくるが、これは川が鉄分を流しさってしまったもので、有機物や酸素の含有もわずかであり、植物が育ちにくい[15]。
合流点
このような水の色が異なる支流が合流する場所では、川面に2色がぶつかり合う情景が見られる。ソリモンエス川とネグロ川が合わさる都市マナウスでは、並行する白と黒の水がなかなか混ざり合わずに10km程度まで流れてゆく景色を楽しめる観光地となっている[15]。このような現象は、タバジョース川が合流する地点でも観察できる[15]。
注釈
出典
- ^ 理科年表 2006年
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- ^ [1][リンク切れ]
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- ^ The Nation, Volume 50
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