アポロ12号 冗談と記念品

アポロ12号

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/04 07:49 UTC 版)

冗談と記念品

  • コンラッドとビーンは、サーベイヤー3号と2人が一枚に収まった写真を撮るために、セルフタイマー装置を密かに持ち込んでいた。このタイマーは標準装備されるものではなかったが、こんな写真を撮れば後になって見た者はどうやってそれを撮影したのかわからなくなり、混乱させることができると考えたのである。しかし月の石を入れたバッグからタイマーを見つけることが出来なくなり、この計画は実行できなかった。
  • 帽子コレクターとして有名だったコンラッドは宇宙服の上からかぶれる野球帽を作り、月面でそれをかぶることを計画したが、出来上がった巨大な野球帽を着陸船内にこっそり持ち込むことは不可能だったため、断念した。
  • 全員が海軍出身の本搭乗員と全員が空軍出身の予備搭乗員たちの間では、ライバル心を発揮して様々ないたずらが行われた。その中の一つに、月面で使うチェックリストの中に雑誌『プレイボーイ』の写真を忍ばせるというものがあった。このチェックリストは宇宙服に取りつけられているもので、予備搭乗員たちはこの中にプレイメイトの縮小版の写真を紛れ込ませ、コンラッドとビーンが最初の船外活動をするときに驚かせてやろうとしたのである。Apollo Lunar Surface Journal website (アポロ月面ジャーナルウェブサイト)では、宇宙服の袖口のチェックリストにこれらの写真が見えているところがPDFファイルで収められている[19]。コンラッドのチェックリストに見えているのは1967年度ミス9月のアンジェラ・ドリアン (Angela Dorian) とミス10月のレーガン・ウィルソン (Reagan Wilson) で、ドリアンの写真には「何か気になる丘と谷間に見えた? (SEEN ANY INTERESTING HILLS & VALLEYS ? 丘と谷間は女性の肉体を象徴している)」、ウィルソンの写真には「(あなたを) つなぎ止めるお好みのパートナー (PREFERRED TETHER PARTNER)」のキャプションが書かれている。ウィルソンの写真が貼られてあるのは、生命維持装置を共有する際に必要な手順について書かれた部分である。一方ビーンのチェックリストに見えているのは1968年度ミス12月のシンシア・マイヤーズ (Cynthia Myers) と1969年ミス1月のレスリー・ビアンチーニ (Leslie Bianchini) で、マイヤーズには「忘れないで—その隆起を説明して (DON'T FORGET - DESCRIBE THE PROTUBERANCES、隆起とはいわゆる『もっこり』のこと)」、ビアンチーニには「彼女の行動を調査しろ (SURVEY - HER ACTIVITY)」と書かれている。ビアンチーニの「SURVEY」は、サーベイヤー (Surveyor) にひっかけたものである[20][21]。このいたずらをした予備搭乗員たちは、後にアポロ15号で飛行した。またコンラッドのチェックリストの後ろには、2ページにわたって難解な地質学の学術用語がつけ足されているというもう一つのいたずらが仕掛けてあった。それを読み上げると、地上の管制官たちは彼があたかも地質学の高度な専門家であるかのように思うはずであった。一方で月の上空で待機していたゴードンも、プレイボーイの「被害」を免れることはできなかった。仲間が月面で活動している最中に船内のロッカーを開けたところ、1967年度ミス8月のデデ・リンド (DeDe Lind) をモデルにした1969年11月のカレンダーが紛れ込んでいたのである。2011年、ゴードンはそのカレンダーを競売にかけた。「RRオークション」でつけられた値段は、12,000–15,000ドルであった[22][23]。またゴードンのカレンダーはカラーであったのに対し、月面のチェックリストに仕掛けられていた写真は白黒だったのだが、1998年のテレビドラマ「フロム・ジ・アース/人類、月に立つ (From the Earth to the Moon)」では月面の写真もカラーにされていた。
  • 司令船への帰還時、ゴードンは月面の砂塵にまみれた着陸組2人に対し「俺のクリーンな司令船が汚れる!」と言い入船を拒否、結局2人は着陸船の中で宇宙服も下着も脱ぎ捨て全裸で司令船に戻ることを余儀なくされた。
  • 彫刻家のフォーレスト・マイヤース (Forrest Myers) は、着陸船イントレピッドの脚の中に「月の博物館 (Moon Museum)」という数センチ四方の作品を忍び込ませてあると主張している。彼によれば、最初は公式にNASAに申し出たのだがうまくいかなかったため、グラマン社の無名の技術者に協力してもらって成し遂げたとのことである[24]
  • ビーンは宇宙飛行士の階級章を、記念品として月面に置いていった[9]。これは訓練は成し遂げたものの、まだ宇宙を飛んでいない飛行士たちのためのものであり、ビーンはそれを6年間身につけていた。彼はこの飛行が成功裏に終わればの階級章を得ることになっていたため、古いものはその後は必要がなくなると感じていた[9]。月面で、ビーンは銀の階級章をクレーターの中に投げ入れた。これは軍のパイロットたちに伝わる、古い階級章を捨てるときの儀式の延長として行われたものだった。

  1. ^ Orloff, Richard W. (September 2004) [First published 2000]. “Table of Contents”. Apollo by the Numbers: A Statistical Reference. NASA History Series. Washington, D.C.: NASA. ISBN 0-16-050631-X. LCCN 00-61677. NASA SP-2000-4029. http://history.nasa.gov/SP-4029/Apollo_00g_Table_of_Contents.htm 2013年6月12日閲覧。 
  2. ^ アポロ12号 今夜半に打つ上げ『朝日新聞』昭和44年(1969年)11月14日夕刊、3版、1面
  3. ^ Williams, David R.. “Apollo Landing Site Coordinates”. National Space Science Data Center. NASA. 2011年11月7日閲覧。
  4. ^ Lovell & Kluger, Lost Moon, 1994, p. 157
  5. ^ Kranz, Eugene F.; Covington, James Otis (1971) ["A series of eight articles reprinted by permission from the March 1970 issue of Astronautics & Aeronautics, a publication of the American Institute of Aeronautics and Astronautics."]. “Flight Control in the Apollo Program”. What Made Apollo a Success?. Washington, D.C.: NASA. OCLC 69849598. NASA SP-287. http://history.nasa.gov/SP-287/ch5.htm 2011年11月7日閲覧。  Chapter 5.
  6. ^ Paul Chodas and Steve Chesley (2002年10月9日). “J002E3: An Update”. nasa.gov. http://neo.jpl.nasa.gov/news/news136.html 2013年9月18日閲覧。 
  7. ^ Jorgensen, K.; Rivkin, A.; Binzel, R.; Whitely, R.; Hergenrother, C.; Chodas, P.; Chesley, S.; Vilas, F. (May 2003). “Observations of J002E3: Possible Discovery of an Apollo Rocket Body”. Bulletin of the American Astronomical Society 35: 981. https://ui.adsabs.harvard.edu/abs/2003DPS....35.3602J/abstract. 
  8. ^ Landing Sites”. The Apollo Program. National Air and Space Museum. 2011年11月7日閲覧。
  9. ^ a b c d e Chaikin 1995
  10. ^ “1969 Year in Review: Apollo 11”. UPI.com (United Press International). (1969年). http://www.upi.com/Audio/Year_in_Review/Events-of-1969/Apollo-11/12303189849225-2/ 2011年11月7日閲覧。 
  11. ^ Immer, Christopher A.; Metzger, Philip; Hintze, Paul E. et al. (February 2011). “Apollo 12 Lunar Module Exhaust Plume Impingement on Lunar Surveyor III”. Icarus (Amsterdam: Elsevier) 211 (2): 1089–1102. Bibcode2011Icar..211.1089I. doi:10.1016/j.icarus.2010.11.013. http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S001910351000432X 2013年6月23日閲覧。. 
  12. ^ 原文:Whoopie! Man, that may have been a small one for Neil, but that's a long one for me.
  13. ^ "Apollo 12 First Steps" - YouTube
  14. ^ Chaikin 1995, p. 261
  15. ^ Sawyer, Kathy (1999年7月10日). “Conrad: Pioneer of the Final Frontier”. The Washington Post: p. C1. http://www.washingtonpost.com/wp-srv/national/daily/july99/conrad10.htm 2011年11月7日閲覧。 
  16. ^ One Small Step”. Apollo 11 Lunar Surface Journal. NASA (1995年). 2011年11月7日閲覧。 Note at 109:57:55.
  17. ^ Noever, David (1998年9月1日). “Earth Microbes on the Moon”. Science@NASA. NASA. 2011年11月7日閲覧。
  18. ^ Apollo 12 Mission Report” (PDF). Apollo 12 Lunar Surface Journal. NASA (1970年3月). 2013年6月23日閲覧。
  19. ^ Cuff Checklists” (PDF). Apollo 12 Lunar Surface Journal. NASA. 2011年11月7日閲覧。
  20. ^ Jardin, Xeni (2007年1月13日). “Playboy Playmates pranked into Apollo 12 mission checklists”. Boing Boing. 2011年11月7日閲覧。
  21. ^ Rowe, Chip (2007年1月10日). “On Buckeyes, Nanotechnology and Playmates in Space”. The Playboy Blog. Playboy Enterprises. 2007年3月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年11月7日閲覧。
  22. ^ “NASA Memorabilia Auction”. Alternative Investing (CNBC). http://www.cnbc.com/id/40640800/NASA_Memorabilia_Auction?slide=3 2011年11月7日閲覧。 
  23. ^ Playmate Flashback: DeDe Lind Circles the Moon”. Playmate of the Year. Playboy Enterprises (2011年1月4日). 2011年11月7日閲覧。
  24. ^ Allen, Greg (2008年2月28日). “The Moon Museum”. greg.org: the making of. greg.org. 2011年11月7日閲覧。
  25. ^ Cain, Fraser (2008年6月12日). “How Many Moons Does Earth Have?”. Universe Today. 2011年11月7日閲覧。
  26. ^ Apollo 12 and Surveyor 3”. NASA (2009年9月3日). 2011年11月7日閲覧。
  27. ^ NASA Spacecraft Images Offer Sharper Views of Apollo Landing Sites”. NASA (2011年9月6日). 2011年11月7日閲覧。





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