アポジキックモーター 姿勢制御・軌道制御との関係

アポジキックモーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/06/05 22:42 UTC 版)

姿勢制御・軌道制御との関係

アポジキックモーターとは最終軌道へ向けて、軌道を変えるための推進装置であり、運動量を与える対象が宇宙機の質量そのものであることから、打ち上げよりはるかに小さいとはいえ比較的大きな推力を必要とする。

それに対し、宇宙機の姿勢制御は、3次元的な角度(姿勢)・角速度の修正・変更・維持であり、運動量を与える対象は宇宙機のモーメントであるから、推力は比較的小さくても良く、さらに、推力を得る装置(スラスター)による偶力だけではなく、内部的あるいは外部的にトルク(回転力)を得る装置(モーメンタムホイール磁気トルカリアクションホイールなど)も併用される。大きな外乱が働く軌道制御時や予備の姿勢制御装置としてはスラスターが使用される。

軌道の最終調整や軌道位置の維持には、触媒反応を利用した一液型(ヒドラジン系)スラスターや、イオンエンジンなど比較的低出力のスラスターが利用されている。そのほか、アポジキックモーターを内蔵している衛星で、軌道に乗ったあと運用目的の変更などにより、使い残しの推進剤を利用して軌道を変えた例がある。逆にARTEMISは軌道位置の維持用のイオンエンジンを使用してトランスファー軌道から静止軌道への軌道変更をおこなった。これらの運用は本来の設計用途とはやや異なる。液体アポジエンジンならば、軌道制御用のスラスターと燃料を共用する事もできる。そのためH-IIAの高度化では2段エンジンを再々着火することでアポジキックモーターの役割を肩代わりし、アポジキックモーターで使うはずだった燃料を軌道制御に回すことで軌道制御可能な時間の延長、すなわち衛星の長寿命化を図っている (あるいは軌道遷移に使う燃料が少なく済む分、その重量を衛星本体のミッション機器に割り当てることができる)。あかつきのように、主エンジンのノズル破損という非常事態の打開策ではあったが、姿勢制御用としてある程度の推力を持つスラスターを持っていたことから、姿勢制御用スラスターを長時間噴射することで人工惑星軌道から(金星の)人工衛星軌道への遷移を行った例もある。


  1. ^ 例えばきずな (人工衛星)では、4回に分けて加速している。
  2. ^ 噴射中に衛星の姿勢が崩れると予定外の軌道に入ることになるため、姿勢の安定化は重要。
  3. ^ 遠地点高度36,226 km、近地点高度250 km、軌道傾斜角28.5度
  4. ^ 『機動戦士ガンダムF91 オフィシャルエディション (B‐CLUB SPECIAL)』バンダイ、1991年5月、59頁より
  5. ^ a b 『マスターアーカイブ モビルスーツ ヴィクトリーガンダム』ソフトバンククリエイティブ、2018年3月、29頁より


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