アヒンサー (ジャイナ教) アヒンサー (ジャイナ教)の概要

アヒンサー (ジャイナ教)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/03/20 22:06 UTC 版)

ジャイナ教

祈り
ナモーカール・マントラ英語版 · ミッチャミ・ドゥッカダム英語版
哲学
アネーカーンタヴァーダ · スィヤードヴァーダ · ナヤヴァーダ · ジャイナ宇宙論 · アヒンサー · カルマ · ダルマ · ニルヴァーナ · ケーヴァラ・ジュニャーナ · モークシャ · ドラヴィヤ · ナヴァタットヴァ  · アステーヤ英語版 · アパリグラハ · グナスターナ英語版 · サンサーラ
主な信仰対象
ティールタンカラ · リシャバ · マハーヴィーラ · アーチャーリャ · ガナダーラ英語版 · シッダセーナ・ディヴァーカラ英語版 · ハリバドラ
宗派
空衣派 · 白衣派
聖典
カルパスートラ · アーガマ · タットヴァールタ・スートラ英語版 · ナーラティヤール英語版 · サンマッティ・プラカラン
その他
パラスパローパグラホー・ジーヴァーナーム英語版 · シンボル英語版 · 英語版
祝日
マハーヴィール・ジャヤンティ英語版 · パリュシャーナ英語版 · ディーワーリー

ジャイナ教 ポータル
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ジャイナ教におけるアヒンサーの概念は他の哲学にみられる非暴力の教説とは大きく異なる。他の宗派においては、暴力はたいてい他者を傷つけることと関係している。一方、ジャイナ教では、暴力は主に自分自身を傷つけることを言う。というのは、暴力とは魂自体がモクシャ、つまり解脱へ至る能力を妨げる行動だからである[2]。これは他者を傷つけることが最終的に自分自身を傷つけることになるのだから、ジャイナ教におけるアヒンサーも他者を傷つけることの欠如をも意味する。さらに、ジャイナ教ではこのアヒンサーの概念を人間に限らず動物、植物、微生物、命のある全ての存在や生命力を持つものにまで拡張している。全ての生命は神聖であり、誰もが恐れを抱くことなく可能性を最大限に発揮して生きる権利を持っている。アヒンサーの戒律を守る者が生命に恐れを抱かせることはない。ジャイナ教によれば、「アブハヤダーナム」としても知られている生命の保護は人間のなしうる最高の慈愛である[3]

アヒンサーは実際になされる暴力がないことのみを指すのではなく、どんな種類の暴力に関してもそれにふけろうという欲求がないことを指す[4]。こういったジャイナ教のアヒンサーの原理はマハトマ・ガンディーに、ジャイナ哲学者シュリマド・ラージャチャンドラとの親交を通じて強く影響した。これによって植民地支配に対抗してサティアグラーハ(真理の三角形)の基礎が形成され、ガンディーが現代ヒンドゥー教習俗の多様な面に関して再考することとなった[1]。ジャイナ教は異教徒に改宗を迫る宗教ではなく、教義を唱道する組織だった体系を有さないが、長い年月を通じて非暴力と菜食主義の唱道を強く前面に押し出し続けてきた[5]。アヒンサーはジャイナ哲学の中核をなし、長い年月を通じてジャイナ教のアーチャーリヤ達はアヒンサーの諸相に関する緻密にして精細な教義を作り上げてきた。




  1. ^ a b c Rankin, Adian. (2006).
  2. ^ Jaini, Padmanabh (1998), p.167
  3. ^ Varni, Jinendra (1993), “Know that giving protection always to living beings who are in fear of death is known as abhayadana, supreme amongst all charities.” ….Samaṇ Suttaṁ (335)
  4. ^ Varni, Jinendra, (1993) "Even an intention of killing is the cause of the bondage of Karma, whether you actually kill or not; from the real point of view, this is the nature of the bondage of Karma. (154)
  5. ^ Dundas (2002)
  6. ^ Varni, Jinendra (1993) “Ahiṁsā is the heart of all stages of life, the core of all sacred texts, and the sum (pinda) and substance (sara) of all vows and virtues.” Samaṇ Suttaṁ (368)
  7. ^ Harry Oldmeadow (2007)p.157
  8. ^ Varni, Jinendra (1993)(Verse-310)
  9. ^ a b c d e f Huntington, Ronald. “Jainism and Ethics”. 2007年7月18日閲覧。
  10. ^ Varni, Jinendra (1993) (388)
  11. ^ Jacobi, Hermann (1895年). “X Lecture : The Leaf of the Tree”. The Jaina Sutras, Part II - The Uttarâdhyayana Sûtra, Translated from Prakrit. Oxford: The Clarendon Press. 2007年9月27日閲覧。
  12. ^ Dundas (2002), p. 162
  13. ^ Harry Oldmeadow (2007) pp.156-7
  14. ^ Dundas (2002) p.161
  15. ^ Jaini (1998) p.168
  16. ^ Varni, Jinendra (1993) "One and the same person assumes the relationship of father, son, grandson, nephew and brother, but he is the father of one whose he is and not of the rest (so is the case with all the things)." (670)
  17. ^ Hunter, Alan (2003年5月). “Forgiveness in Jainism”. 2007年10月4日閲覧。
  18. ^ Koller, John M. (July 2000). “Syadvada as the epistemological key to the Jaina middle way metaphysics of Anekantavada”. Philosophy East and West. (Honululu) 50 (3): Pp. 400–8. ISSN 00318221. http://proquest.umi.com/pqdweb?did=59942245&Fmt=4&clientId=71080&RQT=309&VName=PQD 2007年10月1日閲覧。. 
  19. ^ a b c d e Jain, J. P. (2007)
  20. ^ a b c d e f g Dr. Bhattacharya, H. S. (1976)
  21. ^ Kuhn (2001)
  22. ^ Patil, Bal (2006)
  23. ^ Jan E. M. Houben et all,(1999)


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