アテーナー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/05/12 01:36 UTC 版)
その他
- 英雄たちに対しては好意的で、ペルセウスのメドゥーサ退治の際には表面が鏡のように磨かれた盾を貸し与え、ヘーラクレースのステュムパーロスの鳥退治の際にはヘーパイストスの作った青銅の鳴子を与え、ベレロポーンにペーガソスを調教できる黄金のくつわを与えたり、オデュッセウスに助言をして妻に会わせたりしている。
- アテーナーは神話の中では非常に気が強く、プライドの高い一面を見せており、涜聖的人物に対して容赦なく罰を与えている。例えばアレースには「勝手気ままに振る舞っている」と指摘されており、自分と張り合ったメドゥーサやアラクネー、アテーナーの裸体を目撃したテイレシアースらが罰せられている。さらにイーリオス陥落の際、アテーナーの神殿でカッサンドラーが小アイアースに凌辱されると、アテーナーは激怒して小アイアースに報復している。
- 美と知恵を兼ね備えたアテーナーは自分の容貌の美しさに敏感であり、アテーナーと美を競ったメドゥーサを容赦なく処罰し、パリスの審判でヘーラーやアプロディーテーと美を競った。また、アテーナーは神々の宴会で自分の発明したアウロス(二本管の笛)を吹くと頬が膨れ、顔が醜くなるということでヘーラーとアプロディーテーに笑われた。演奏している自分の顔を湖面に映して見たアテーナーは笑われる理由を知り、そのアウロスに呪いを掛けて捨てた。
- アテーナーが水浴をしている時、カリクローの息子であるテイレシアースはアテーナーの全裸の姿を見てしまった。アテーナーはテイレシアースを罰し、盲目にしたが、カリクローに盲目の治癒を乞われたため、アテーナーは代わりに未来を予言する能力を授けた[19][20]。
- アテーナーはヘーラーとも仲が良く、ヘーラーの命令に従うこともある。アテーナーはヘーラーを支援してアルゴナウタイを庇護して冒険を助けた。また、パリスの審判を根に持ちトロイア殲滅を望む二人は、ギリシア側に助力した。ヘーラーの豪華な刺繡入りのローブもアテーナーによって織られたものである[21][22]。ヘーラーが起こしたゼウスに対する反乱にも参加した。また、ゼウスの立場に合わせて行動することもあり、ゼウスとアテーナーの策略でヘーラーの母乳を飲んだヘーラクレース(赤子の頃)は不死の体と驚異的な怪力を手に入れている。
- アテーナーはギリシャの他の神々がそうであるように傲慢でみずからを貶める存在には容赦ない報復を行うが、一方でゼウスの嫡男である同じ戦の神のアレースが血なまぐさい戦いの残忍さを象徴する神であるのに対し、アテーナーは理知的で気高い戦士として登場する。海の神ポセイドーンとの争いでは、ポセイドーンが馬を作りだし人間に与えたのに対し、アテーナーはオリーブの木を作り出し人間に与え勝利するなど思慮深い面を見せる。アテーナーの信仰では学者は啓示を、裁判官は明晰を求め、軍人は戦術を磨こうとアテーナーに祈りを捧げたと言われる[23]。
- ^ 岡田温司『聖書と神話の象徴図鑑』より。
- ^ アポロドーロス『ギリシア神話』 一巻III 6。
- ^ ホメーロス、『アテナ賛歌』。
- ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』69頁。
- ^ R・グレイヴズ『ギリシア神話』69頁。
- ^ a b アポロドーロス『ギリシア神話』 三巻XII 3。
- ^ マイケル・グラント、ジョン・ヘイゼル『ギリシア・ローマ神話事典』。
- ^ Apollodorus, Library, book 3, chapter 14, section 6
- ^ a b c アポロドーロス『ギリシア神話』 三巻。
- ^ a b ヒュギーヌス『ギリシャ神話集』166話。
- ^ a b c d e トマス・ブルフィンチ 著、大久保博 訳『完訳 ギリシア・ローマ神話 下』角川文庫、2012年。27-28章。
- ^ ホメーロス『イーリアス』5巻。
- ^ 松田治『トロイア戦争全史』講談社学術文庫、2008年。「58 奮戦するディオメーデース」(Kindle版:1620-1647/3807)
- ^ 『イーリアス』21巻400行‐433行。
- ^ 小野塚友吉 訳『アエネイス』グーテンベルク21、2014年。"Kindle版:635-1066/5368"。
- ^ ウェルギリウス『アエネーイス』II。[15]
- ^ 松田治『トロイア戦争全史』講談社学術文庫、2008年。「123 ラーオコオーンの悲劇」(Kindle版:3194-3221/3807)
- ^ 松田治『トロイア戦争全史』講談社学術文庫、2008年。「131 カサンドレー凌辱さる」(Kindle版:3425-3439/3807)
- ^ アポロドーロス『ギリシア神話』 三巻VI 7。
- ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』72頁。
- ^ ホメーロス『イーリアス』14巻178-180行。
- ^ フェリックス・ギラン『ギリシア神話』62,74頁。
- ^ バーナード・エヴスリン『ギリシア神話小事典』19頁。
固有名詞の分類
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