お菊さん (オペラ) 関連作品

お菊さん (オペラ)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/22 20:28 UTC 版)

関連作品

ジャポニズムに関する主な作品

登場人物

人物名 人物名
(カタカナ)
声域 原語名 1893年1月26日初演時のキャスト
指揮者:
アンドレ・メサジェ
2021年5月29日日本初演時のキャスト
指揮者:
佐々木修
お菊さん マダム・クリザンテーム ソプラノ Madame Chrysanthème 長崎の芸者 ジャーヌ・ギー 福田祥子
ピエール テノール Pierre 海軍尉官 ルイ・ドラクリエール英語版 池本和憲
イヴ バリトン Yves 水兵 ジャカン 上田誠司
勘五郎 カングル
(カンガルー)
テノール Monsieur Kangourou 結婚仲介人 シャルル・ラミー 飯沼友規
サトウさん ムッシュ・シュクル テノール Monsieur Sucre お菊さんの義父
砂糖氏の意味
ドゥクレルク 大倉修平
お梅さん マダム・プリュヌ コントラルト Madame Prune お菊さんの義母 ケソ 田辺いづみ
お雪 オユキ ソプラノ Oyouki お菊さんの義妹 ネッティ・ランド 高橋千夏
苺さん マダム・フレーズ メゾソプラノ Madame Fraise お菊さんの友人 ミコ 菊池未来
水仙さん マダム・ジョンキル ソプラノ Madame Jonquille お菊さんの友人 アルベルティ 小川嘉世
桔梗さん マダム・カンパニュル ソプラノ Madame Campanule お菊さんの友人 ディカ 小宅慶子
ガビエ テノール Un gabier 甲板員 ジェスタ 根岸一郎
ラウル テノール Raoul 海軍将校 ヴィクトール 加護友也
シャルル テノール Charles 海軍将校 シャサン 小川陽久(バリトン)
ルネ バス René 海軍将校 アラリー 吉永研二
将校たち、水兵たち、日本人の男たち、日本人の女たち、踊り子たち、僧侶など

あらすじ

物語の舞台 : 1885年夏〜東シナ海長崎

プロローグ

フランス海軍トリオンファント号の船上
長崎港に停泊する軍船

1885年(明治18年)7月8日午前2時。東シナ海。満天の星が降り注ぐ穏やかな夜。見張り水夫のブルターニュの歌が聞こえる。いよいよ日本が近づいて来た。海軍中尉のピエールとその弟分の水夫イヴは、日本への憧れと恋愛を夢見る。ピエールは到着したらすぐに、小柄で黒髪の日本の娘と結婚して、竹と紙でできた小さな家に暮らす計画だ。イヴは、世界中の女が我らを待っていると豪語する。海軍のファンファーレが港への到着を告げ、場面が変わる。

第1幕

長崎

長崎に到着すると、船にはたくさんの日本人の商人がやってきて、陶器やハツカネズミ、春画などを売りつける。つづいて芸者が登場する。一人の芸者が「ハスの花の上に羽を休める黄金の蝶」と歌う。その芸者こそお菊さんであった。彼女は江戸生まれで、家が没落して長崎に売られて来た。彼女は自らの生い立ちを語り、ピエールは彼女に強く惹かれる。ピエールが彼女の名前を聞き、彼女が答えようとする寸前、イブは結婚仲介人の勘五郎の到着を告げる。機転が利き商才に長ける勘五郎は、自らを洗濯屋、通訳、詩人で、秘密厳守、ミカドの認定請負人と早口でPRする。勘五郎は何人かの娘を紹介するが、ピエールは気乗りしない。彼は先の芸者のことを問うが、勘五郎は、その娘は親もなく素性も知れぬ、江戸芸者学校の出だとお勧めしない口ぶり。勘五郎はさらに他の娘を紹介するがピエールは断る。勘五郎はピエールの心を見抜き、一旦退場して、その芸者の義理の両親であるサトウとお梅を連れて再登場する。証人と家族を紹介して、ついで花嫁がヴェールを外すと、花嫁はその芸者だった。大喜びするピエール。最後に勘五郎は「お菊さん」の名前を発表する。

第2幕

長崎、結婚初夜の翌朝、お菊さんの家

メランコリックな前奏曲。義母のお梅は天照大神に、全ての人のけがれを祓い、健康を守ってくれと祈る。彼女はお菊さんとピエールがまだ寝ている寝室の襖を開け、すぐに閉める。お梅は白人の男は魅力的だと思わずつぶやき、特に背の高いイヴがお気に入りの様子で、必死に自分の貞操感を抑える。イヴ、勘五郎、義父のサトウがやってくる。サトウは画家で、勘五郎はピエールからお菊さんの両親への謝礼として、サトウにコウノトリの絵を描かせる。ピエールはブルターニュで見た夢の国「日本」を思い出し、お菊さんへの愛を歌う。お菊さんは花瓶に花を飾りながら、花と蝶の運命を語る。ピエールはお菊さんに益々惹かれ、彼女への愛を誓う。お菊さんは「言葉は裏切るので誓わないで」と答える。遠くからフランス民謡が聞こえてくる。ブルターニュの古い習慣に従い、水兵やお菊さんの友人の娘たちが、結婚翌朝に夫婦を祝福にきたのだ。お菊さんの義妹のお雪は、イヴから習ったブルターニュの祝いの歌を歌い、皆で祝宴に出発する。

第3幕

長崎の諏訪神社の祭礼

南無阿弥陀仏を唱える僧侶や群衆の荘厳な合唱。つづいて長崎の夏祭り。人々は長崎くんちの歓声を上げ、勘五郎が見世物の呼び声を響かせる。ピエールはあまりの騒ぎに目を回す。気がつくと、イヴとお菊さんが取り残されていた。お菊さんはイヴに、自らの運命と歌への愛を語る。ピエールがお雪や友人たちと戻ってくる。ピエールは祭りで買った日本の経典を手にしている。ピエールはイヴとお菊さんに嫉妬して、当て付けで、詩吟の真似をして大日如来の一節を読み、嫉妬の重罪を説く。お菊さんは扇子に書かれた句を読み、扇子が人々を和解に導くと、扇合せ(おうぎあわせ)のスタイルで返答する。ピエールはイヴとお菊さんとの深い関係を確信する。お雪は日本の娘を鳩に例えて、フランスの友人との永遠の愛を願って歌う。民衆が現れ、タバコこそ健康の源と、下駄でステップを踏みながら合唱する。フランスの水兵はそれを奇妙に眺めている。つづいてフランスオペラに欠かせないバレエの場面。ゆったりとした平安調の踊りに始まり、後半は、さくらさくらをアレンジした華やかなファランドールが舞われる。つづいて、このオペラで唯一100年間歌い継がれてきた、お菊さんのアリア「セミたちの歌」が歌われる。教会の鐘が鳴り響き、一同急ぎ退場する。そこにピエールが現れ、人前で歌ったお菊さんを怒り責める。お菊さんは、祭りの芸者の数が足らずに出演したと謝り、イヴは許しを請い、二人の仲を疑っているピエールは逆上する劇的な三重唱。そこに勘五郎が登場、結婚相手は返品可能だとなだめるが、ピエールの怒りは収まらない。再び第3幕冒頭の南無阿弥陀仏を唱える合唱が響き渡る。

第4幕

長崎、お菊さんの家の庭

星の輝く夜、遠くに不知火が浮かぶ。お菊さんとお雪は、黄金の竪琴の調べに乗せて、甘美な二重唱を歌う。二人の姿を見たピエールは感動して、お菊さんとの愛の生活が、自分に新たな目覚めをもたらしたと、官能的なアリアを歌う。お菊さんは、もう捨てられるかとピエールに問うが、ピエールは再び熱烈にお菊さんに求愛する。情熱的な愛の二重唱が頂点に達したとき、船の大砲が鳴り響く。お菊さんはその大砲が意味することをわかっている。動揺するピエール。イヴがやってきて帰艦命令が出たことを伝える。イヴはフランスへ戻れる喜びと、故郷のブルターニュで待つ家族への愛を歌う。サトウとお梅、お雪が、別れの挨拶にやってくる。勘五郎は大げさに別れを嘆くが、しっかりと次の船への取り次ぎを頼み、洗濯物の勘定書として仲介料を請求する。高額で驚くイヴ。ピエールはこの夏の長崎の滞在とお菊さんへの想いを感傷的に歌い、お菊さんをしっかりと抱きしめる。ピエールが船に戻ると、イヴがお菊さんに別れを告げにやってくる。お菊さんはイブに、船が沖に出たらピエールに手紙を渡してくれと託し、ピエールが彼女の話を聞かず、信じず、笑いもしなかったことが悲しかったと言い残す。

エピローグ

フランス海軍トリオンファント号の船上

冒頭と同じフランスの戦艦上、再び見張り水夫の歌が聞こえる。船は出航して、日本の最後の明かりが消えゆく。ピエールとイヴは日本での思い出を語る。お菊さんとイヴとの関係をまだ疑っているピエールに、イヴは強く否定して、お菊さんから託された手紙を渡す。ピエールは手紙を読む「あなたに知って欲しいの。あなたが遠く私から離れたとき、日本にも、あなたを愛し、そして泣いた女がいたことを!」美しくも哀愁を帯びた後奏で全曲の幕となる[15]


  1. ^ 『歌劇大事典』P342では1月30日となっている
  2. ^ a b 『オックスフォードオペラ大事典』P121
  3. ^ a b c d e 『ロマン派音楽の多彩な世界』P142
  4. ^ 『オックスフォードオペラ大事典』P679
  5. ^ JEUNESSE DE LA MUSIQUE
  6. ^ 『舞台の上のジャポニスム』P182、183
  7. ^ 『舞台の上のジャポニスム』P183
  8. ^ 『舞台の上のジャポニスム』P184
  9. ^ 『舞台の上のジャポニスム』P185
  10. ^ Association l’Art Lyrique Français
  11. ^ 『歌劇大事典』P393
  12. ^ 『考証 三浦環』P.329,347
  13. ^ 昭和音楽大学オペラ研究所 オペラ情報センター
  14. ^ 日本橋オペラのホームページ
  15. ^ a b 日本橋オペラ「お菊さん」日本初演のプログラム
  16. ^ 『お菊さん』(岩波文庫)P221
  17. ^ 『舞台の上のジャポニスム』P187
  18. ^ 『舞台の上のジャポニスム』P175
  19. ^ a b 『オペラで楽しむヨーロッパ史』P154


「お菊さん (オペラ)」の続きの解説一覧



英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  
  •  お菊さん (オペラ)のページへのリンク

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「お菊さん (オペラ)」の関連用語

お菊さん (オペラ)のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



お菊さん (オペラ)のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのお菊さん (オペラ) (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS