フランジブル弾
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2026/02/07 14:11 UTC 版)
フランジブル弾(フランジブルだん、英語: frangible bullet)は、目標外への被害を最小限に抑えるために、着弾時に細かな粒子へと分解するように設計されている銃弾である。
解説
分解して細かな粒子となった弾丸の破片は空気抵抗によって急速に減速するため、弾頭の着弾点から離れた人や物に怪我や損傷引き起こす可能性が低くなる。
ほとんどのフランジブル弾頭は、硬い標的に命中すると分解する。このメカニズムは、可鍛性の鉛や銅の弾頭が、大きな破片として硬い標的から跳ね返る傾向を最小限に抑えるために使用されてきた。亜音速では脆性破壊が発生する場合がある。フランジブル弾頭を薬莢に圧着しようとすると、弾頭が破損する可能性があり[1]、半自動小火器の自動装填動作中にも破損することがある[2]。また、リボルバー銃から発射された場合、弾頭がシリンダーを離れた後に銃身後端部のバレルフォーシングコーンに衝突すると壊れることがよくある[3]。
製造
粉末冶金技術により、室温で圧縮された粉末金属(通常はスズ、銅、亜鉛、および/またはタングステン)の混合物からなる高密度材料によって弾頭を製造する。機械的インターロックと冷間溶接により金属を直接プレスして成形するか、被甲の有無にかかわらず発射体にスウェージ加工できる棒材にしたりできるように金属粉末を結合する[4]。
他の製造技術として、融点より低い温度で粉末金属を熱処理して圧力をかけ焼結する、あるいは射出成形機で粉末金属を接着剤またはポリマーで結合する方法もある[5]。
ターゲットの被害
弾頭の分解のメカニズムは、着弾時のエネルギー伝達量によって異なる。充分な速度があれば、弾頭は着弾時に気化する可能性がある。しかし、標的着弾時に確実に気化させるために充分な弾速で発射することができる銃器はほとんど存在せず、空気抵抗により発射点からの距離が長くなるほど弾速は低下するため、フランジブル弾の分解は通常、他のメカニズムに依存する。
標的の特性は、弾頭との相互作用の重要な側面である。分解過程を開始するために利用されるエネルギーは、ターゲットが弾速を低下させる度合いによる。そのため柔軟な素材、壊れやすい素材、低密度の素材では、弾頭の分解を引き起こすほどの急減速は発生せずに貫通する可能性がある。
弾頭が確実に動作するためには、取りまわし時、装填時、発射時の衝撃に耐える必要がある。そのため、高速荷重がかかる場合は、標的への着弾前の分解から低靱性弾芯を保護するため、高靭性のメタルジャケットを必要とする場合がある。このジャケットは跳弾する可能性があるが、低靱性弾芯の重量があるため、その影響範囲は狭くなるはずである[5]。
フランジブルのホローポイント弾は衣類、石膏ボード、薄い金属板を貫通する可能性がある。だがガラスへの着弾時には分解することがよくある[6]。
硬い標的はフランジブル弾で損傷する可能性がある。弾頭の着弾速度にともなって損傷の程度も増加する。着弾点でのエネルギー伝達により、脆い標的は破壊され、可鍛性材料は一時的に軟化して永久に変形することがある。標的の結晶構造を変化させ、後続の弾頭による標的のダメージを増加させることがある。ライフル弾に耐えるように設計された鋼鉄製ターゲットは、毎秒2700フィート(820m)以上の弾速により損傷する可能性がある。また、より低速の弾頭もピストル弾やリムファイア弾用の鋼鉄製ターゲットに損傷を与える可能性がある[5]。
生体目標に当たったフランジブル弾は、通常の弾頭と同様の傷口を形成する。フルメタルジャケット弾と同様に軟組織を貫通する。骨に当たると分解するものもある。狩猟用弾頭には柔らかい組織や液体によって保護ジャケットが破られた時に分解するように設計されたフランジブル弾芯が含まれている[7]。フランジブル弾が肉に当たって分解すると、持続的な障害をもたらす非常に深刻な傷を与える[8]。
フランジブル弾は、従来の鉛弾に耐えることを目的とした防弾装備に対して、従来とは異なる脅威となる可能性がある。米国立司法研究所の要請により、国立標準技術研究所にある法執行基準局のスタッフは、防弾チョッキに対するフランジブル弾の性能を評価する限定的な一連の試験を実施した。この予備研究は、この種の弾丸が個人の防弾チョッキに安全上の脅威を与える可能性があるという主張の妥当性を確立することを試みるように設計されたものである。この脅威の真の範囲と関連性は、2002年11月時点では知られていなかった[4]とされている。
用途
フランジブル弾は、跳弾や過剰貫通の危険性を軽減し、鉛への被ばくを低減するため、1人以上の射手が360度様々な方向の複数の鉄製ターゲットと交戦する特殊な戦闘シミュレーション訓練において、安全性を向上させる[3][4]。フランジブル弾はまた、都市部、船舶や航空機内、または石油・化学プラットフォームや原子力発電所内などでの近接戦闘や警察活動において、味方や無関係な人々の危険を軽減させることを目的とした、跳弾制限負荷の低減のためにも使用される[4]。
歴史
20世紀の遊園地の射撃場における、金属標的からの鉛の跳弾破片による負傷は、特殊な.22ショートフランジブル弾の開発を促した[9]。米国は、装甲されたRP-63有人標的機での標的練習のため、航空機の.30口径機関銃に壊れやすい鉛/ベークライトM22弾を使用した[10]。低密度のM22弾は、自動装填式機関銃の機能を維持するために従来のM2弾と同じ形状だったが、M2弾の重さ152グレーン (9.8 g)に対してわずか110グレーン (7.1 g)である[11]。
21世紀初頭、米軍は小火器訓練中の跳弾のリスクを減らすためにフランジブル弾を使い始めた。これらの弾薬は、黄銅製の被甲内に収納される粉末銅とタングステン製の弾芯の結合剤としてナイロンを使用している[12]。タングステン/ナイロン弾体コアは、三重構造のM855 5.56mm弾の鉛コアを置き換えるためにエコマス・テクノロジーズによって開発され、2000 年から 2003 年にかけて運用された。この弾体コアは、鉛コアと同様の性能を発揮し、同じかそれ以上の精度で機能した。
脚注
- ^ “Reloading Guidelines for Compressed Powdered Metal Bullets”. SinterFire. 2016年3月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年7月28日閲覧。
- ^ Graves. “Lead to Green”. United States Department of Homeland Security. 2016年4月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年12月7日閲覧。
- ^ a b Pincus. “Frangible Ammunition for Training and Safety: The Good and The Bad”. Police: The Law Enforcement Magazine. 2015年12月3日閲覧。
- ^ a b c d “Frangible Ammunition”. GlobalSecurity.org. 2015年12月6日閲覧。
- ^ a b c Towsley. “Frangible Ammo”. Shooting Illustrated. 2015年12月6日閲覧。
- ^ “Frangible Ammunition for Law Enforcement Training/Duty Use? - A Review” (英語). AmmoLand.com (2015年6月23日). 2022年6月1日閲覧。
- ^ “DRT Technology Stands Alone”. Dynamic Research Technologies. 2015年12月6日閲覧。
- ^ Komenda, J; Hejna, P; Rydlo, M; Novak, M; Krajsa, J; Racek, F (2012). “Frangible bullets: wounding capability and clinical aspects of their use”. Soud Lek 57 (2): 21–4. PMID 22724652.
- ^ Rocketto. “A Brass Cup, A Pinch Of Powder, and A Lump Of Lead: A Short History of the .22 Rimfire Cartridge in the United States”. 2013年11月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年10月4日閲覧。
- ^ Gunston, Bill (1978). Combat Aircraft of World War II. London: Salamander Books. p. 198. ISBN 0-89673-000-X
- ^ “30 Caliber Frangible Bullets”. Combat Disabled Veterans' Surplus. 2018年6月22日閲覧。
- ^ Moran, Michael P.; Ott, Darrin K. (2008). Lead Free Frangible Ammunition Exposure at United States Air Force Small Arms Firing Ranges, 2005-2007. Brooks City-Base: Air Force Institute for Operational Health Risk Analysis Directorate Health and Safety Division
関連項目
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