IOTA (暗号通貨)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/19 00:34 UTC 版)
IOTA(アイオータ)は、IOTA財団を主導にオープンソースプロトコルに基づいて開発が行われているP2P型決済及びデータ共有網、暗号通貨である。ビットコインなど他のブロックチェーン型暗号通貨とは違い、タングル(英: Tangle)と呼ばれる有向非巡回グラフ(英: Directed acyclic graph, DAG)を利用[1]して非許可型分散型台帳を実装している[2]。タングル上で行われる価値交換は暗号通貨であるIOTAトークンを介して行われ、決済記録を含むタングル上でのあらゆるデータの読み書きに使われる形式及びタングルの仕組みそのものを一括りにしてIOTAプロトコルと呼ぶこともある。
IOTA | |
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![]() Prevailing IOTA logo | |
ISO 4217 コード | IOT |
使用開始日 | 2016年6月11日[3] |
情報源 | Initial coin offering |
使用 国・地域 | ![]() |
総発行量 | 2,779,530,283,277,761 IOTA |
上位単位 | |
103 | KiloIOTA (Ki) |
106 | MegaIOTA (Mi) |
109 | GigaIOTA (Gi) |
1012 | TeraIOTA (Ti) |
1015 | PetaIOTA (Pi) |
通貨記号 | IOT, MIOTA[4] |
2016年7月11日にIOTAのオープンベータテストが開始された[3]。
IOTAのトランザクションはP2Pネットワークの参加者が共有するタングル上で、仲介者なしにユーザーが発行する。 ユーザーがトランザクションを発行するためには、タングル上の他の2つの過去のトランザクションを承認しなくてはならない[5]。送信されたトランザクションが、受け手から確定したと認められるためには、十分なレベルの承認を集めなくてはならない(つまり、他のユーザーたちから、十分な回数の承認を受けなくてはならない)[6]。 このシステムは、中央格納データベースや単一の管理者を置かずに運用され、一般的な分散型台帳技術に固有のスケーラビリティや取引手数料の問題に取り組んでいる[7]。
IOTAは、トランザクションで価値とデータを交換できる決済レイヤーと見なすこともできる[8]。
他の機能(例:スマート・コントラクト等)はその決済レイヤーの上層に構築される可能性があるが、IOTAのコア・プロトコルの開発は効率性の最大化に傾注されてきた。
起源
IOTAはデイビッド・サンステボ(David Sønstebø)とセルゲイ・イバンチェグロ(Sergey Ivancheglo)とドミニク・シーナー(Dominik Schiener)及びセルゲイ・ポポフ(Serguei Popov)博士の4名によって創設された[8]。IOTAの起源は、2014年に4人が、IoT及び分散コンピューティング向けに全く新しいタイプの三進法マイクロプロセッサの開発を目指して内々に設立したハードウェアのスタートアップにまで遡る。 4人は、この経験を通じて、IoTを実現可能にしてM2M経済の到来をもたらすには、安全な価値とデータの決済レイヤーが必要であることを認識した[3]。
4人は2010年〜2011年頃からブロックチェーン界隈に関わってきて、分散型台帳技術に精通していた[9]。2013年にはセルゲイ・イバンチェグロは、世界初の完全なプルーフ・オブ・ステークを開発して、Nxtというブロックチェーンに実装した[10]。
4人は、このような経験を重ねて、IoTの基幹として必要な決済レイヤーを実現するために、2015年前半にIOTAの開発を始めた[8]。公正な割り当てを確保するために、2015年11月から12月まで行われたクラウドセールでは、IOTAトークンの総供給数量が100%売り出されて、IOTA開発者や設立者たちには1枚のIOTAも割り当てられなかった。ビットコイン1337枚相当の金額を(BTCやNXTやJinnトークンという形で)調達した[11]。開発者や設立者たちへ配当されたIOTAが1枚もなかったことから、IOTAコミュニティーは非営利のIOTA財団を設立してドイツで登録するために、相当量のIOTAを寄附してIOTAプロジェクトのビジョンを支援することを決定した。 その後もIOTAコミュニティーは、大企業との協業やコミュニティー・プロジェクトや開発者の獲得のために資金を提供した[12][13]。
2016年7月11日にIOTAのオープンベータテストが開始された[3]。 それから2017年6月12日に仮想通貨取引所Bitfinexに新規上場する[14]までの11ヶ月間は、ユーザー同士の相対取引(取引所を介さない売手と買手の直接取引)が行われていた。
設計
タングル
IOTAはブロックチェーンを用いる代わりに、DAGを使って分散型台帳を実装している[5]。 タングルと呼ばれているIOTAのDAGプロトコルは、ブロックチェーンプロトコルを一般化したものである(ブロックチェーンはDAGの特殊なケースである)[15]。 タングルはブロックもチェーンもない構造となっているので、予めブロック時間を決めておく必要がなく、ネットワーク上のトランザクション数が増えると、最終的にトランザクションのスピードが速くなる。 しかし、トランザクションが確定されるまでの時間には、タングルのトポロジーやネットワーク内のノードの位置など様々な要因も影響する。 タングルはIOTAのトランザクションを保管する公開台帳であると同時に、非中央集権化されていて中央で管理する者は存在せず、メッシュネットワークのトポロジーに従って組織化されるノード間のネットワークによって維持されている。 タングルは分散データベースとして機能する。2019年4月現在はネットワーク上の各ノードにはタングルの全履歴が格納されている。 IOTAのトランザクションを送るためには、送り手はタングル上の他の二つのトランザクションを承認しなくてはならない[8]。 タングルのユニークな承認作業の並列化を可能としているのは、タングルが非同期型システムだからである。これは承認作業が逐次的に順番に行われる同期型のブロックチェーンとは対照的である。 IOTAネットワークを使用するための支払いは、(マイニング手数料を支払うのではなく)他の二つのトランザクションの承認という形で行われる。 そのために、承認者(ビットコインではマイナー、プルーフ・オブ・ステークプロトコルではステイカーに相当)とトランザクションを送るユーザーはもやは別々の存在ではない。もっと簡単に言えば、IOTAネットワークでは、ユーザー全員がマイナー/ステイカーとなるのである[5]。 タングルはバイナリコードではなく三進法でプログラムされている。 三進法はバイナリに比べて効率性が有利である[16]。

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