インターロイキン-2受容体とは? わかりやすく解説

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インターロイキン-2受容体

(IL-2受容体 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/24 10:10 UTC 版)

インターロイキン-2受容体, α鎖
識別子
略号 IL2RA
他の略号 IL2R CD25
Entrez英語版 3559
HUGO 6008
OMIM 147730
RefSeq NM_000417
UniProt P01589
他のデータ
遺伝子座 Chr. 10 p15.1
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インターロイキン-2受容体, β鎖
識別子
略号 IL2RB
他の略号 CD122
Entrez英語版 3560
HUGO 6009
OMIM 146710
RefSeq NM_000878
UniProt P14784
他のデータ
遺伝子座 Chr. 22 q13
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インターロイキン-2受容体, γ鎖
(重症複合免疫不全症)
識別子
略号 IL2RG
他の略号 SCIDX1, IMD4, CD132
Entrez英語版 3561
HUGO 6010
OMIM 308380
RefSeq NM_000206
UniProt P31785
他のデータ
遺伝子座 Chr. X q13
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インターロイキン-2受容体: interleukin-2 receptorIL-2R)は、リンパ球など特定の免疫細胞の表面に発現しているヘテロ三量体型タンパク質であり、IL-2と呼ばれるサイトカインを結合して応答する受容体である。

構成

IL-2が結合するIL-2受容体は、3種類のタンパク質のさまざまな組み合わせによって構成される。構成する3種類のタンパク質はそれぞれα鎖英語版(IL-2Rα、CD25、Tac antigen)、β鎖英語版(IL-2Rβ、CD122)、γ鎖(IL-2Rγ、共通γ鎖英語版、γc、CD132)と呼ばれることが多い。β鎖、γ鎖は、それぞれ他のサイトカイン受容体英語版の一部となる場合もある[1]:713

さまざまな細胞種において、これら3つの受容体鎖は個別に異なる発現をしており、さまざまな組み合わせや順序で組み立てられることで、低親和性、中親和性、高親和性のIL-2受容体が形成される。α鎖はIL-2を低親和性(Kd ~ 10−8 M)で結合し、活性化されたリンパ球に発現している。β鎖とγ鎖の組み合わせはIL-2を中親和性(Kd ~ 109 M)で結合し、主にメモリーT細胞NK細胞に発現している。3つ全ての受容体鎖が共に発現している場合に高い親和性(Kd ~ 1011 M)でIL-2を結合する複合体が形成され、活性化されたT細胞制御性T細胞上に存在する。中親和性と高親和性の受容体は機能的であり、IL-2が結合した際に細胞に変化を引き起こす[2]

IL-2が高親和性受容体に結合した際に形成される安定な複合体の構造は、X線結晶構造解析によって決定されている。この構造は、IL-2がまずα鎖に結合し、その後β鎖がリクルートされ、最後にγ鎖がリクルートされるというモデルを支持している[2][3][4]

シグナル伝達

IL-2受容体を構成する3つの鎖は細胞膜を貫通して細胞内へ伸びており、細胞内部へ生化学的シグナルを伝達している。α鎖はシグナル伝達には関与しないが、β鎖はJAK1英語版と呼ばれるチロシンキナーゼと複合体を形成し、γ鎖はJAK3英語版と呼ばれる他のチロシンキナーゼと複合体を形成する。JAK1やJAK3は、IL-2がIL-2受容体の細胞外ドメインに結合することで活性化される。そしてその結果、MAPK経路、PI3K経路、JAK-STAT経路と呼ばれる3つのシグナル伝達経路が細胞内で開始される[2][3]

IL-2が高親和性受容体に結合すると、リガンド-受容体複合体は迅速にインターナリゼーションされるため、シグナルが伝達されるのは短い期間のみである。その後、IL-2とβ鎖、γ鎖は迅速に分解されるが、α鎖は細胞表面へリサイクルされる。IL-2やその受容体の濃度によって、T細胞の免疫応答の速さ、強度や範囲が決定される[2][3]

IL-2とその受容体は、主にT細胞に対する直接的作用によって、免疫やその寛容に重要な役割を果たしている。T細胞の成熟が行われる胸腺では、これらは特定の未成熟T細胞を制御性T細胞への分化を促進することで、自己免疫疾患を防いでいる。また、T細胞が抗原による刺激も受けた場合には、IL-2/IL-2RはエフェクターT細胞やメモリーT細胞への分化を促進する[2]。T細胞の免疫記憶の形成は抗原によって選択されたT細胞クローンの数や機能の拡張に依存しており、IL-2/IL-2Rはこうした役割を通じて細胞性免疫の持続に重要な役割を果たしている[2][3]

臨床との関係

バシリキシマブなどIL-2受容体を阻害する薬剤は、他の薬剤との併用によって移植患者の拒絶反応の予防に利用される[5]

出典

  1. ^ Leonard, Warren J. (2008). “Chapter 23: Type I Cytokines and Interferons and Their Receptors.”. In Paul, William E.. Fundamental Immunology (6th ed.). Philadelphia: Wolters Kluwer/Lippincott Williams & Wilkins. ISBN 9780781765190 
  2. ^ a b c d e f Liao W, Lin JX, Leonard WJ (October 2011). “IL-2 family cytokines: new insights into the complex roles of IL-2 as a broad regulator of T helper cell differentiation”. Current Opinion in Immunology 23 (5): 598–604. doi:10.1016/j.coi.2011.08.003. PMC 3405730. PMID 21889323. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3405730/. 
  3. ^ a b c d Malek TR, Castro I (August 2010). “Interleukin-2 receptor signaling: at the interface between tolerance and immunity”. Immunity 33 (2): 153–65. doi:10.1016/j.immuni.2010.08.004. PMC 2946796. PMID 20732639. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2946796/. 
  4. ^ Metz A, Ciglia E, Gohlke H (2012). “Modulating protein-protein interactions: from structural determinants of binding to druggability prediction to application”. Current Pharmaceutical Design 18 (30): 4630–47. doi:10.2174/138161212802651553. PMID 22650257. 
  5. ^ Hardinger KL, Brennan DC, Klein CL (July 2013). “Selection of induction therapy in kidney transplantation”. Transplant International 26 (7): 662–72. doi:10.1111/tri.12043. PMID 23279211. 

関連項目

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