ダイレクトコンバージョン受信機
ダイレクトコンバージョン受信機(ダイレクトコンバージョンじゅしんき、英: direct conversion receiver)、あるいは直接変換受信機とは、受信した無線信号を直接ベースバンド信号に変換する方式(ダイレクトコンバージョン方式)を用いた受信機である。一般的なスーパーヘテロダイン受信機が受信した信号をいったん中間周波数に変換するのに対し、ダイレクトコンバージョン受信機は中間周波(IF)段が無いため単純で部品点数が少ない。
スーパーヘテロダイン受信機と比べLSI化がしやすく小型化・低消費電力化・低コスト化に向いているため、携帯電話など様々な用途に使われている。
概要
ダイレクトコンバージョン受信機は、受信したい信号と同じ周波数、あるいは非常に近い周波数の信号を内部の局部発振器(LO)で作り、受信信号と混合することで復調を行う。復調した低周波信号は、隣接した不要信号をローパスフィルタで除去し増幅を行う。
この方式は、ラジオ放送の受信機などで広く使われているスーパーヘテロダイン方式で中間周波数(IF)を0Hzにしたような周波数構成になっているため、ゼロIF(英: zero-IF)方式とも呼ばれる[1]。また、受信する周波数と内部の発振周波数が同じため、ヘテロダインに対して、ホモダイン(英: Homodyne)の名称で呼ばれることもある[1]。
ダイレクトコンバージョンのアイデア自体は非常に古い[2][3]。しかし当時の技術では十分な性能を得ることができず、同じような回路構成ではスーパーヘテロダイン方式のほうが感度や選択度などが優れていた[3] こともあり、長い間スーパーヘテロダイン受信機が主流となり、ダイレクトコンバージョン受信機はアマチュア無線家などのごく一部でのみ使われた[4]。
ダイレクトコンバージョン方式が注目されだしたのは、ポケットベル用の低消費電力で小型の受信機が必要になった1980年代からである[2]。スーパーヘテロダイン方式で必要となるイメージ除去フィルタや中間周波数用のバンドパスフィルタなどの高周波部品が不要なためLSI化しやすく、低い周波数でフィルタ処理や増幅を行うためLSI化したときの消費電力も小さくできる[2]。さらに、低い周波数のフィルタ処理では特性を変えることが容易なため、信号の変調方式などに応じた帯域幅の変更も行いやすい。このような利点のため、現在では携帯電話、無線LAN、WiMAXなど多くの無線機器の受信回路で使用されている。また、その単純性と柔軟性のためソフトウェア無線機のRFフロントエンドに使われることも多い[5]。
実際の構成
単純に受信信号と同じ周波数の局部発振出力とを混合する方式は、搬送波を中心に対称な周波数成分を持つ単純な変調方式ではそのまま使えるが、複雑な変調方式では問題が発生する。例えば、局部発振周波数が14.000MHzの場合、周波数が14.001MHzの信号成分はその差の1kHz(0.001MHz)に変換されるが、周波数が13.999MHzの信号も同じように1kHzに変換されるため混信が起こる。これはスーパーヘテロダイン方式で問題となるイメージ混信で中間周波数を0Hzとした場合に相当する。
この問題を解決するため、現在の一般的なダイレクトコンバージョン受信機では直交ミキサ(quadrature mixer、複素ミキサとも言う)を使用する[2][6]。これは2つのミキサを用いそれぞれに90°位相の異なる局部発振出力を加えることで2つのベースバンド信号を得るもので、各信号はそれぞれI(In-phase)信号、Q(Quadrature-phase)信号と呼ばれる。I/Qの2つの信号を用いればイメージ混信の影響を受けることなく受信対象の信号のみを復調できる。
受信した信号のある時刻での振幅 mtと位相 φtは、I/Q信号のIt、Qtから以下の計算で求まる。
「Direct-conversion receiver」の例文・使い方・用例・文例
- Direct-conversion receiverのページへのリンク