辺地雪舞う殊にバキュームカーのまわり
作 者 |
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季 語 |
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季 節 |
冬 |
出 典 |
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前 書 |
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評 言 |
作者は平成元年に亡くなられた私の尊敬する「海程」の大先輩。 娼婦のドレス清潔に漂白されたこの荒い天の縞 のような長い句を作っていたが、「海程」に入った頃からは、口語、定型、季は大切にするが気にしない、という態度に変わった。お医者さんだが、船医も務めて外国を回るというリベラルな生き方と、硬骨精神を貫いたという点では「海程」でも際だった人である。 何しろ「バキュームカー」を詠った句は他にあるだろうか。私も雪国に育ち、北海道での生活を経験しているので、この句、とてもよく分かる。バキュームカーは決して不潔には思えない。辺地では人情の温かさを受け取れる数少ない存在なのだから。まして雪の舞う寒さでは匂いなどはしない。日常の凝縮したようなそのバキュームカーに吸い寄せられるように雪が濃く降るのである。 海辺にてあしたのことも解りますの 空に鳥たち茗荷はうすく礼装して 秋が来る美しいノートなどそろえる 飛魚焼いてかすみたなびく命なり 妹が言うあなたは冬の防波堤 「リズムは思想だ」というのが涯子さんの持説だったが、これらの句はそれを裏付ける。 |
評 者 |
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備 考 |
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