牝猫 (バレエ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/11 23:23 UTC 版)
『牝猫』(めすねこ[1]、La Chatte)は、1927年に初演されたバレエ・リュスによる1幕のバレエ。ジョージ・バランシン振付、ボリス・コフノ台本、アンリ・ソーゲ作曲。バレエ・リュスの後期作品のうちで特に優れたものの一つで、ディアギレフが没するまで毎年上演された[2]:403-404。
イソップ寓話の「鼬とアプロディテ」、およびそれを元にしたラ・フォンテーヌの「女に化けた牝猫」を元にしている。
概要
『牝猫』は1927年2月、ロシア構成主義のナウム・ガボおよびアントワーヌ・ペヴスナーの兄弟とディアギレフの話し合いから生まれた[2]:403-404。ナウム・ガボによる構成主義的な舞台装置と衣装、およびジョージ・バランシンによる振付は画期的なものだった[2]:403-404。一方でアンリ・ソーゲによる音楽はそれほど画期的ではなかった[2]:403-404。
初演時の舞台装置はまばゆく反射する透明な素材を使用していた[1][3]。
1927年4月30日にモンテカルロ歌劇場で初演された[1][4]。作品は即座に人気を博し、広く上演された[5]:76-77。
1927年5月27日にパリのサラ・ベルナール劇場においてロジェ・デゾルミエール指揮で上演された[6]。
ディアギレフはこの作品でオリガ・スペシフツェワを売り出す狙いを持っていたが、結果的にはセルジュ・リファールをスターにした[1][3]。モンテカルロでの初演を演じたスペシフツェワは怪我のため、パリ公演からはアリス・ニキーチナが演じた[3][6]。後にアリシア・マルコワが牝猫役をつとめて人気を博した[3]。
1978年、同じ曲を使用してロンドン・フェスティバル・バレエ団(イングリッシュ・ナショナル・バレエ団の前身)でロナルド・ハインドの新しい振付による新しい版が上演された[1]。
スタッフ
- 台本:ソベカ(Sobeka、ボリス・コフノの別名[1][4][注釈 1])、イソップ寓話による
- 音楽:アンリ・ソーゲ
- 振付:ジョージ・バランシン
- 美術:ナウム・ガボ、アントワーヌ・ペヴスナー
- 初演の指揮:マルク=セザール・スコット
- 初演時のダンサー:オリガ・スペシフツェワ(牝猫)、セルジュ・リファール(若い男)
あらすじ
若い男が猫を人間の娘に変えてほしいと女神アフロディテに祈る。祈りは叶えられるが、娘は男の愛に応えず、男は死んでしまう[1][3][4]。
曲の構成
アンリ・ソーゲによる音楽は以下の9曲からなる。
- Ouverture
- Jeux des garçons. Allegro
- Invocation à Aphrodite. Andante ma non troppo
- La Métamorphose
- Danse de la chatte
- Adagio
- Retour des garçons. Allegretto
- Scherzo. Vivace
- Hymne final
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f g デブラ・クレイン、ジュディス・マックレル 著、鈴木晶監訳、赤尾雄人・海野敏・鈴木晶・長野由紀 訳「牝猫」『オックスフォード バレエ ダンス事典』平凡社、2010年、541-542頁。ISBN 9784582125221。
- ^ a b c d シェング・スヘイエン 著、鈴木晶 訳『ディアギレフ 芸術に捧げた生涯』みすず書房、2012年。 ISBN 9784622076544。
- ^ a b c d e 『薄井憲二 バレエ・コレクション 2021 企画展『牝鹿』と『牝猫』』兵庫県立芸術文化センター、2021年 。
- ^ a b c 72. La Chatte 1927 (Also called The Cat) Ballet in One Act, Balanchine Catalogue
- ^ ナンシー・レイノルズ、マルコム・マコーミック 著、松澤慶信 訳「バレエにおける実験」『20世紀ダンス史』慶應義塾大学出版会、2013年。 ISBN 9784766420920。
- ^ a b c Wild, Nicole (1979). “La Chatte”. Diaghilev : les ballets russes : [exposition, Paris]. Bibliothèque nationale. pp. 142-143. ISBN 2717714863
外部リンク
- 牝猫の楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト
- 牝猫_(バレエ)のページへのリンク