牛川の渡船とは? わかりやすく解説

牛川の渡船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/02 00:41 UTC 版)

2024年に新調した三代目「ちぎり丸」

牛川の渡船(うしかわのとせん)は、愛知県豊橋市牛川町大村町の間にある豊川の両岸(約70m)を結ぶ豊橋市営の渡し船である。「牛川の渡し」とも呼ばれる。市道牛川町・大村町244号線の一部を構成しており、無料で乗船することができる[1]

概要

旧ちぎり丸
川の上空に張られたワイヤーロープ

この渡船に関する古文書は存在せず、起源は不明であるが、835年(承和2年)頃の平安時代からあったものと考えられている。渡船には自転車も載せることができるため、通勤・通学の利用がある他、豊川を巡る観光客にも利用されている。全国的にも珍しい手漕ぎ操船となっている。

1982年(昭和57年)以降、使用されている船舶には「ちぎり丸」の名称が用いられている。船名は、建材同士を繋ぎとめるための部品である「ちぎり」に由来している。この「ちぎり」は旧吉田藩の団結(契り)の意味合いがあり、船体には旧吉田藩の馬印が施されている。この図案は豊橋市の市章でもある[2]

同渡船の上空には、金属製のワイヤーロープが豊川両岸から張られており、船はこのロープの滑車を通じて結ばれている。海へ下る水流と上流に向けて吹く風の強さのバランスを滑車を通じて利用し、竹竿で川底を押しながらの操船を容易にしており、多少の増水でも下流に流されることはない(岡田式渡船を参照)。

なお、現時点での同航路は牛川西部土地区画整理事業に伴う工事の影響で、2015年(平成27年)10月28日以降“仮航路”となっており[3]、本来の航路は現在地から約450mほど上流の位置にある。

令和5年台風第2号の影響による休航と再開

2023年令和5年)6月2日、台風2号によって発生した線状降水帯が記録的な大雨をもたらし、豊橋市では豊川・梅田川柳生川が越水しているとして、一時緊急安全確保が発表された[4]。この時、渡船に用いる唯一の船体である[5]二代目「ちぎり丸」は、係留していたロープが切れて増水した水流に流され、一時行方不明となった[6]

2日後の6月4日、二代目「ちぎり丸」は約25km離れた田原市宇津江町三河湾岸で発見された[7]。奇しくも二代目「ちぎり丸」は田原市で製造され、建造した造船所が所在する集落の沿岸に漂着していた。しかも発見された6月4日は、26年前(1997年)に就航したのと同じ日だった[8]。見つかった二代目「ちぎり丸」は損傷が激しく、豊橋市は廃船を決定[8]。渡船は、新たな船が調達されるまで休航となった。

市は、座席の土台や手すり等、二代目の部品を一部再利用した[9]「ちぎり丸」の名を受け継ぐ新しい船体を約900万円で調達[10]2024年(令和6年)3月3日に運航を再開した[9][11][12]

沿革

  • 明治末期 - 下川村村営となる
  • 1932年(昭和7年) - 豊橋市が下川村を吸収合併したため豊橋市営となる
  • 1982年(昭和57年) - 初代「ちぎり丸」(強化プラスチック製)就航
  • 1994年(平成6年) - 業務を民間業者に委託
  • 1997年(平成9年)6月4日 - 二代目「ちぎり丸」(強化プラスチック製)就航
  • 2015年(平成27年)10月28日 - 仮航路での運航開始
  • 2023年(令和5年)6月2日 - 使用船流失・損傷のため以降休航
  • 2024年(令和6年)3月3日 - 三代目「ちぎり丸」(強化プラスチック製)就航、運航再開

運航データ

運航員詰所(牛川町側)
呼び出し音用の金属筒と運航時間(大村町側)
  • 運航時間
    • 4月~9月:①8:00~12:00 ②13:00~18:00
    • 10月~3月:①8:00~12:00 ②13:00~17:00
  • 定員:11名(救命胴衣不要・自転車も乗船可・船頭含む)
  • 利用料金:無料
  • 休航日:なし。但し、以下のような条件により休航となることがある
  1. 豊川石田水位観測所における水位が1m超となったとき
  2. 強風注意報、洪水注意報等の気象注意報・警報が発令される等安全運航上支障となる天候のとき
  3. 乗船場所の水位が著しく低い時間帯
  4. その他、運航上危険が予想されるとき

乗船場へのアクセス

豊川の水面に映る渡船「ちぎり丸」
  • 市内電車(豊橋鉄道東八町停留場下車 徒歩約20分
  • 豊鉄バス(豊橋和田辻線) 豊橋創造大学正門または創造大東バス停下車 徒歩約7分
    • いずれも牛川町側へのアクセスである

脚注

  1. ^ 豊橋市/牛川の渡船
  2. ^ 愛知県庁水資源課
  3. ^ 牛川渡船の仮航路での運行について
  4. ^ 東三河でも記録的大雨が猛威”. 東愛知新聞 (2023年6月4日). 2024年2月28日閲覧。
  5. ^ 「豊橋市議会一般質問 牛川の渡し復旧「年度内考えている」 6月豪雨から運休 再開要望受け」、『中日新聞』2023年12月7日朝刊、東三河版、15頁。
  6. ^ 「「牛川の渡し」船体所在不明 当面、運航を休止」、『中日新聞』2023年6月4日朝刊、東三河版、14頁。
  7. ^ 「「牛川の渡し」船体 田原の海岸で発見」、『中日新聞』2023年6月5日朝刊、三河版、10頁。
  8. ^ a b 渡し船、大雨で流され25キロ先の「故郷」に 就航式と同じ日に発見”. 朝日新聞デジタル (2023年6月9日). 2024年2月28日閲覧。
  9. ^ a b 牛川の渡しが復活”. 東日新聞 (2024年3月4日). 2024年3月5日閲覧。
  10. ^ 「牛川の渡し 来月3日再開 昨年豪雨で損傷の船体 新調」、『中日新聞』2024年2月21日朝刊、東三河版、15頁。
  11. ^ 「牛川の渡し 9カ月ぶり再開 豊橋」、『中日新聞』2024年3月4日朝刊、三河版、10頁。
  12. ^ 【報道発表資料】牛川の渡しの運航再開について”. 豊橋市 (2024年2月20日). 2024年2月28日閲覧。

関連項目

外部リンク

座標: 北緯34度46分39.3秒 東経137度24分25.1秒 / 北緯34.777583度 東経137.406972度 / 34.777583; 137.406972


牛川の渡船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 20:51 UTC 版)

渡し船」の記事における「牛川の渡船」の解説

詳細は「牛川の渡船」を参照愛知県豊橋市豊川両岸を結ぶ。豊橋市営。無料豊橋市大村町牛川町175号線に含まれる航路起源不明だが、平安時代から運航されていたという。 ※参考:牛川の渡船 - 豊橋市公式サイト

※この「牛川の渡船」の解説は、「渡し船」の解説の一部です。
「牛川の渡船」を含む「渡し船」の記事については、「渡し船」の概要を参照ください。

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