沙漠の花園
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沙漠の花園 | |
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The Garden of Allah | |
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画像は1927年版の映画ポスターを使用
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監督 | ルイシャルト・ボレスワフスキ |
脚本 | ウィリアム・P・リップスコーム リン・リッグス ウィリス・ゴールドベック[1](協力) |
原作 | ロバート・S・ヒチェンス 『The Garden of Allah』 |
製作 | デヴィッド・O・セルズニック |
出演者 | マレーネ・ディートリヒ シャルル・ボワイエ |
音楽 | マックス・スタイナー |
撮影 | ヴァージル・ミラー[1](撮影監督) W・ハワード・グリーン[1] ハロルド・ロッソン[1] |
編集 | ハル・C・カーン アンソン・スティーヴンソン[1] |
製作会社 | セルズニック・インターナショナル・ピクチャーズ |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 | ![]() ![]() |
上映時間 | 79分 |
製作国 | ![]() |
言語 | 英語 |
製作費 | $2,200,000(見積値)[2] |
『沙漠の花園』(さばくのはなぞの、The Garden of Allah)は、1936年のアメリカ合衆国の恋愛映画。ロバート・S・ヒチェンスの1904年の小説『The Garden of Allah』をデヴィッド・O・セルズニックがルイシャルト・ボレスワフスキ監督を起用して映画化した作品である。出演はマレーネ・ディートリヒとシャルル・ボワイエなど。
同原作の映像化は、1916年と1927年のサイレント映画に次いで3度目であり、トーキーとしては初の映画化である。また、当時はまだ珍しかったテクニカラー(三色法)作品であり、第9回アカデミー賞において撮影担当のW・ハワード・グリーンとハロルド・ロッソンがアカデミー特別賞を受賞した。
ストーリー
主人公のボリス・アンドロヴスキーがチュニジア近くにある厳律シトー会教派のエル・ラガルニネ修道院(el Lagarnine)で育てられ、しかも、生涯奉仕の誓いも立てた修士であった。修道院は外部世界、特に女性と殆ど接触しない男性のみとなる閉鎖的な宗教団体である。外部世界を殆ど知らないボリス・アンドロヴスキーは、こうした閉鎖的な修道院生活に退屈したというよりも、寧ろ、心の安らぎとハーピーという気分であった。彼は修行生活をしながら、庭園で栽培されたブドウを用いて、身に付けられた醸造の秘訣で“Lagarnine”という修道院の名に因んだブラントのワインを作り上げ、修道院の誇りとなった。
古参修道院院長が亡くなった後、ボリス・アンドロヴスキーが修道院傘下の旅館の受付仕事を対応するよう新しい修道院院長から依頼された。これがきっかけとなって、ボリス・アンドロヴスキーは外部世界との関わりを始めた。特に生来に初めて男女の恋を目の当たりにして、心を打たれた。今まで知らなかった外部の世界で暮らすのはがもっと幸せだろうと思い込み、自分が閉鎖された修道院生活をこのように続けていいかと悩み始め、ついにほかの僧侶たちの目を盗み、密かに修道院から逃げ出した。
一方、裕福な家庭に生まれ、サンテ・セシル女子修道院(Le Couvent de Ste. Cecile)育ちのドミニ・エンフィルデンが父を亡くし、深刻な悲しみに浸ったため、久しぶりに元の修道院を訪れ、院長から心霊的な助けを求めるつもりであった。院長は暫くして華やかな都会生活を離れておき、北アフリカへ行き、無限なサハラ砂漠の世界を見渡し、そこから心霊の慰みを獲得し、すべての悩みはこれによって消え去るようになるだろうと彼女にアドバイスした。その助言に従ったドミニ・エンフィルデンはアメリカより北アフリカにやってきた。
世俗な幸せさを求めるボリス・アンドロヴスキーと霊的な慰めを求めるドミニ・エンフィルデンは偶然に旅路で知り合い、しかも、すぐに恋に落ち、また、地元の教会で結婚式まで挙げた。結婚式後、ドミニ・エンフィルデンが思案しておいた巡礼コースの通りに、二人は地元の案内者たちを連れ、砂漠の中へ出発した。ボリス・アンドロヴスキーは新婚の喜びを味わったが、自分が修道院から脱出したことをドミニ・エンフィルデンに明かさなかった。それが寧ろ重圧となって、時々にボリス・アンドロヴスキーの心理に圧し掛かっていた。ドミニ・エンフィルデンもボリス・アンドロヴスキーに何か彼女へ隠されることがあるのではないかと察しており、「私たちがお互いに内心の世界を明かさない限り、二人とも幸せになれないわ。」と言い放った。
砂漠の旅が数日間に続き、ある日、フェルディナンド・アンテオーニ伯爵が二人の旅先を訪れた。それはボリス・アンドロヴスキーの正体がド・トレヴィニャック大尉から教えられたフェルディナンド・アンテオーニ伯爵は、ドミニ・エンフィルデンが嘘つきと裏切りを厭悪し、真実を人生理念とする宗教信仰の強い女性である故、その真相を彼女へ明かさなければならないと思い、わざと二人に会いに来たのであった。話し合いの際にアンテオーニ伯爵は“Lagarnine”ブラントのワインのことを持ち出し、脆弱な心理がこれで崩れたボリス・アンドロヴスキーに自分過去の話を引き出させた。真相を知ったドミニ・エンフィルデンはボリス・アンドロヴスキーのことを許したが、二人のハーピーな婚姻生活を貫くかそれとも修道院への約束を守るかの選択が迫られた二人とも迷っていた。最後にボリス・アンドロヴスキーは自分の過失を改めるため、ドミニ・エンフィルデンとの繋がりを割愛し、修道院へ復帰することに決めた。ドミニ・エンフィルデンにとって、婚姻を放棄させられることは辛いが、それより、ボリス・アンドロヴスキーが修道院へ誓った約束を守ることがもっと大事だ思い、彼の選択決定を尊重していた。
砂漠の旅がこうして終わり、二人もついに別れるようになったが、別れる前こう話し合った。「目の前のことはすべてでないかもしれませんが、われわれはいつか必ず永遠なる真実な世界で再会するようになるのでしょう。この世では私のことを忘れるなら、あなたが修道会でハーピーを取り戻すことができると思うわ。」とドミニ・エンフィルデンが言い、これに対し、「僕は生涯に君のことが忘れられない。僕の人生を神様へ捧げることは宿命であるかもしれないが、僕がこの世に生まれたことも素敵な君のお陰だ。君を知ったと同時に僕も神様のことを改めて認識した。」とボリス・アンドロヴスキーは答えた。
二人は切ない恋に苛まれながらも、結局、各自でそれぞれの人生帰路を辿ることになった。
この映画は男女ロマンティックの物語だけでなく、キリスト教信仰のニュアンスに満ちたものでもあった。映画の中には二曲のクラシック音楽がバックグラウンドミュージックに使用され、その一曲は結婚式で響かれたメンデルスゾーンによる「結婚行進曲」で、もう一曲は砂丘で二人がお互いに心境を告白した時に響かれた「アヴェ・マリア」であった。
物語はサハラ砂漠を舞台に展開したのであったが、映画のロケ地はアメリカのカリフォルニア州のアルゴドンエス砂丘地帯(英語: Algodones Dunes)とアリゾナ州のユマであった。
キャスト
- ドミニ・エンフィルデン: マレーネ・ディートリヒ
- ボリス・アンドロヴスキー: シャルル・ボワイエ
- フェルディナンド・アンテオーニ伯爵: ベイジル・ラスボーン
- J・ルービエ神父: C・オーブリー・スミス
- バトゥーシュ: ジョセフ・シルドクラウト
- 占い師: ジョン・キャラダイン
- ド・トレヴィニャック大尉: アラン・マーシャル
作品の評価
映画批評家によるレビュー
Rotten Tomatoesによれば、11件の評論のうち高評価は36%にあたる4件で、平均点は10点満点中5.5点となっている[3]。
受賞歴
賞 | 部門 | 対象者 | 結果 |
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第9回アカデミー賞 | 作曲賞 | マックス・スタイナー | ノミネート |
助監督賞 | エリック・G・ステイシー | ||
特別賞 | W・ハワード・グリーン ハロルド・ロッソン ※カラー撮影に対して |
受賞 |
出典
- ^ a b c d e クレジットなし。“The Garden of Allah (1936) - Full Cast & Crew” (英語). IMDb. 2012年4月28日閲覧。
- ^ “The Garden of Allah (1936)” (英語). IMDb. 2011年7月2日閲覧。
- ^ “The Garden of Allah (1936)” (英語). Rotten Tomatoes. 2021年2月19日閲覧。
外部リンク
固有名詞の分類
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