樊氏とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 樊氏の意味・解説 

樊氏

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/20 15:21 UTC 版)

樊氏
三国演義(繡像本)「趙子龍計取桂陽」
後漢
出生 ?(生年不詳)
死去 ?(没年不詳)
拼音 Fán Shì
兄弟 趙範(義弟)、銭氏(義妹)※京劇、樊虎(弟)※京劇2001年
テンプレートを表示

樊氏(はん し、拼音: Fán Shì、生没年不詳)は、中国後漢末期の女性。趙範兄嫁は不詳。

事跡

劉備長江南岸を平定したとき、趙範に代わって趙雲桂陽太守になった。樊氏は中華一の色香の持ち主で、既に夫を失っていたため、趙範が趙雲に引き合わせた。しかし趙雲は「貴男とは同姓なのだから、貴男の兄は我が兄も同然ではないか」と言い、固辞して承諾しなかった。当時、承諾するよう趙雲に勧めた人もいたが、趙雲は「趙範は追い詰められて降ったに過ぎず、彼の心も知れたものではない。また天下にも女性は少なくない」と言い、ついに娶らなかった。その後、趙雲の警戒通り趙範は逃亡したが、趙雲は全く気にしなかったという[1]。樊氏がその後どうなったかの記述はない。

盧弼の『三国志集解』では「趙雲が樊氏を娶らなかったのは、関羽秦宜禄の前妻の杜氏を娶りたいと曹操に請願したのに対し、はるかに賢明な行ないである」と称えられている[2]

三国志演義

小説『三国志演義』第52回「諸葛亮智辞魯粛・趙子龍計取桂陽」に登場。趙雲との顛末が詳細に描かれるが、正史同様、二人が結ばれることはない。(詳細は趙範#演義での趙範を参照)

京劇

取桂陽

京劇・三国志の演目のひとつ「取桂陽」(別名:打趙範[3]、または拳打趙範、趙子龍招親)に登場。演目内容は『演義』とほぼ同じで、樊氏と趙雲が結ばれることはない[4]。趙範の妻の銭氏(後述の『2001年京劇三国志スペシャル』での名は金氏)といったオリジナルの登場人物が追加されている[4]

2001年日本公演版・龍鳳呈祥

2001年に財団法人日本青少年文化センター創立50周年記念事業として日本で上演された『京劇三国志スペシャル』の『龍鳳呈祥』(甘露寺(美人計)・回荊州の総称で、『演義』第54-56回に相当)では、この公演のために「取桂陽」が新たに加えられ、樊氏は文武両道に秀でた女将軍・樊玉鳳として描かれ、趙雲と結ばれるという独自の展開となっている[5]。そのため、通常の『龍鳳呈祥』は劉備孫夫人(孫尚香)の婚姻を描く演目であり、「取桂陽」は含まれない。趙雲と樊玉鳳が結ばれるのは、この『2001年京劇三国志スペシャル』に限った演出である[5][注 1]

以下は『2001年京劇三国志スペシャル・龍鳳呈祥』のあらすじ[6]

赤壁の戦いで孫劉(孫権と劉備)連合軍が曹操を破り、諸葛亮の「天下三分の計」は実現したかに見えた。しかし、魏の残党は依然として勢力を保っており、諸葛亮は趙雲に桂陽攻略を命じる際、「戦わずして桂陽を取れ」「龍は鳳に七分を譲れ」と意味深な言葉を添えた。「龍」が趙雲の字「子龍」を指すのは明らかだが、「鳳」の意味は趙雲には皆目見当がつかなかった。

桂陽太守の趙範は、趙雲との戦を前に自信を失い、兄嫁の寡婦(未亡人)、樊玉鳳の助言に従い、戦わずして降伏する。趙雲と趙範は同姓同郷の同年生まれと知り、意気投合して義兄弟の契りを結んだ。宴席で趙範と妻の金氏は、樊玉鳳との縁談を持ちかけるが、趙雲は「義兄弟の姉との婚姻は道義に悖る!」と怒って固辞し、単身桂陽攻略を決意する。すると、戦場に現れたのは綸子を纏った武者姿の樊玉鳳……これこそ諸葛亮の言う「鳳」だった。

趙雲は樊玉鳳の美貌に、樊玉鳳は趙雲の勇姿に惹かれ合うが、樊玉鳳は容赦なく攻めかかる。趙雲は諸葛亮の言葉通り七分を譲り(わざと敗れる)、そこへ諸葛亮が現れ、趙雲と趙範の仲を取りなし、両者は和解する。
【取桂陽】

の孫権から妹の孫尚香との縁談を持ちかけられた劉備は、趙雲を伴い呉へ赴く。これは周瑜が仕組んだ劉備暗殺の計略であったが、樊玉鳳とその弟、樊虎の助けもあり、趙雲は劉備と孫尚香を守り抜き、無事荊州へ帰還する。祝宴が開かれ、劉備と孫尚香に手を取られた趙雲と樊玉鳳は、めでたく結ばれるのであった。
【甘露寺(美人計)・回荊州】

家族

  • 樊虎:『2001年京劇三国志スペシャル』のオリジナル武将。
    樊氏の弟という設定で、外国人初のプロの京劇俳優・石山雄太が演じた[7]

民間伝承

  • 民間伝承によると、樊氏は樊玉鳳のほかに樊雲仙・樊娟と呼ばれていたらしい。正史・演義同様、趙雲とは結ばれない。[要出典]

関連作品

評書

漫画

ゲーム

日本

中国

  • 三国趙雲伝 ※『Three Kingdoms Zhao Yun』の元作品(樊娟
    (第三波珠海工作室、北京白勺音楽工作室、2001年)
  • Three Kingdoms Zhao Yun (原題・趙雲伝:雲漢騰龍)(樊娟
    (ZUIJIANGYUE Game、ETime Studio、Merlion Games、2024年)
    三国趙雲伝のリメイク作品[9]。ゲーム中、趙雲の伴侶の選択候補として3人のヒロインである馬超の妹の馬雲騄公孫瓚の娘の公孫玥、趙雲の幼馴染の樊娟として登場する(DLCページ参照)。

カードゲーム

  • 三国殺樊玉鳳
    (中国:Yoka Games(游卡桌游)、日本:株式会社ミント、2008年)

脚注

注釈

  1. ^ 本作は日本青少年文化センターの創立50周年記念事業として企画され、「祝いの席に相応しい演目を」という意向から『龍鳳呈祥』が選定された。さらに、趙雲と樊氏を結びつけることで、祝賀ムードを一層高める演出が加えられた。

出典

  1. ^ 『三國志』巻三十六「趙雲伝」裴松之注《雲別伝》従平江南,以為偏将軍,領桂陽太守,代趙範。範寡嫂曰樊氏,有国色,範欲以配雲。雲辞曰:「相与同姓,卿兄猶我兄。」固辞不許。時有人勧雲納之,雲曰:「範迫降耳,心未可測;天下女不少。」遂不取。範果逃走,雲無繊介。
  2. ^ 『三国志集解』 樊氏国色,而子龍不取,賢于関羽之乞娶秦宜禄妻去遠矣。
  3. ^ 沈伯俊、譚良嘯『三国志演義大事典』潮出版社、1996年。 p.126.
  4. ^ a b 趙春陽『完美武将:趙雲』江蘇鳳凰文芸出版社、2019年。 pp.270-271.
  5. ^ a b 有限会社楽戯舎『京劇三国志スペシャル「龍鳳呈祥」パンフレット』(発行・製作・編集)有限会社楽戯舎、2001年。 pp.11,20-21.
  6. ^ 有限会社楽戯舎 2001, pp. 29–41.
  7. ^ 有限会社楽戯舎 2001, p. 24.
  8. ^ 袁闊成評書『長坂雄風』中央人民広播電台、1988年。
  9. ^ [CJ2023]三国志の趙雲を主人公にしたアクションRPG「Three Kingdoms Zhao Yun」が出展。日本語版も制作予定”. ウェイバックマシン(4Gamer.net). 2023年7月31日閲覧。


参考文献

関連事項




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「樊氏」の関連用語

樊氏のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



樊氏のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの樊氏 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS