嫉妬と不和の攻撃から真理を救う時とは? わかりやすく解説

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嫉妬と不和の攻撃から真理を救う時

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/07 03:39 UTC 版)

『嫉妬と不和の攻撃から真理を救う時』
フランス語: Le Temps soustrait la Vérité aux atteintes de l'Envie et de la Discorde
英語: Time Defending Truth against the Attacks of Envy and Discord
作者ニコラ・プッサン
製作年1641年
種類キャンバス油彩
寸法297 cm × 297 cm (117 in × 117 in)
所蔵ルーヴル美術館パリ

嫉妬と不和の攻撃から真理を救う時』(しっととふわのこうげきからしんりをすくうとき、: Le Temps soustrait la Vérité aux atteintes de l'Envie et de la Discorde: Time Defending Truth against the Attacks of Envy and Discord)は、17世紀フランスの巨匠ニコラ・プッサンが1641年にキャンバス上に油彩で制作した寓意画である。画家が居住していたローマを離れ、一時的にパリに滞在していた時期 (1640年10月より1642年11月まで) の作品で、リシュリュー枢機卿の邸宅のために天井画として描かれた[1][2][3]。作品は1793年以来[1]、パリのルーヴル美術館に展示されている[1][2][3]

作品

ルイ13世フランス政府は「フランスの栄光のために」プッサンにパリで仕事をさせ、フランスの最高目標である政治的社会的一体化を象徴する、統合的な芸術様式の指導者としてプッサンを立てようと考えた[3]。彼は気が進まなかったものの、1640年10月より1642年11月までパリに滞在した。プッサンは、この時期にシモン・ヴーエを中心とするパリ画壇の安易で趣味の良い「中和されたバロック」ともいうべき装飾画の世界に引き入れられ、自身で好む主題を描くことができなかった[3]

本作もまた、リシュリュー枢機卿のために描かざるをえなかった作品であり[3]、ヴーエへの対抗意識があったと想像される[2]。画面は、「時」の擬人像である翼の生えた老人が若い女性の姿をした「真理」の擬人像を引き上げている情景を表している[1][2]。「真理」は、罪深き現実の世から永遠の天上の世界に飛翔するところである[2]。2人の右側にいるプットは、「時」のアトリビュート (人物を特定する事物) である、「神性」を表す大鎌とウロボロス (ヘビが円形を形作っている) を持っている[1][2]。円形は、古代においては「永遠」を示すものであった[2]

前景に、プッサンは燃える松明と短剣を持つ「不和」(左側) と、緑色がかった肌とヘビの髪の毛を持つ「嫉妬」 (右側) を前面短縮法で描いている[1][2]オウディウスの『変身物語』 (II-768) によれば、嫉妬の女神インヴィンディアは、その悪業の糧であるヘビの肉にむしゃぶりつくのが習いであった[2]。「不和」と「嫉妬」は、取り逃がした「真理」という獲物を歯ぎしりしながら眺めている[2]

この絵画は当然、リシュリュー枢機卿の栄光を示す政治的寓意である。枢機卿は「時」の経過により正当化され、「嫉妬」の攻撃から逃げ、フランス王国の平和と協調を確かなものとするのである[1]。しかし、作品が何ら新たな感動を起こさせない、陳腐なものとなっていることは否めない[3]

脚注

  1. ^ a b c d e f g Le Temps soustrait la Vérité aux atteintes de l'Envie et de la Discorde”. ルーヴル美術館公式サイト (フランス語). 2024年10月7日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j 辻邦生・高階秀爾・木村三郎、1984年、86頁。
  3. ^ a b c d e f W.フリードレンダー 1970年、60頁。

参考文献

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