モンキーラップとは? わかりやすく解説

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モンキーラップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/06 17:08 UTC 版)

モンキーラップまたは原題のDKラップ(DK Rap)は1999年に発売されたNINTENDO64のゲーム『ドンキーコング64』の起動時に流れるゲーム音楽。オリジナル・サウンドトラックでのタイトルは『Da Banana Bunch(ダ・バナナ・バンチ)』。原案は開発を担当したレア社のデザイナーであるジョージ・アンドレアス、作曲はグラント・カークホープ。アンドレアスは共同で作詞・作曲にも関わり、その他のスタッフもコーラスで参加している。この曲の歌詞は、ゲームでの操作キャラクターである5体のコングたちを説明する趣旨のものである。

カークホープとしては前作にあたる『スーパードンキーコングシリーズ』(1994年-1996年)と本作の新しいドンキーコングを対比させることを意図しており、また楽曲そのものはお遊び的なものであった。しかし、真面目に作曲されたラップと受け取られ、その結果、賛否両論または否定的な評価を受けることとなり、不名誉な賞も受賞した。後に『大乱闘スマッシュブラザーズDX』(2001年)などの任天堂の作品においてリミックス版が製作され、同社のウェブサイトからダウンロードすることが可能である。

コンセプトと経緯 

本曲を作曲したグラント・カークホープの写真

モンキーラップ(DKラップ)は、NINTENDO64のテレビゲーム『ドンキーコング64』の起動時のイントロダクションで流れる楽曲であり、ゲーム中で操作可能な5匹のキャラクター(ドンキー、ディディー、タイニー、ランキー、チャンキー)を説明する趣旨ものである。ディレクターのジョージ・アンドレアスが提案し、音楽担当のグラント・カークホープが作曲した。 アンドレアスはRun DMCというバンドからインスピレーションを得た[1] カークホープの狙いは『スーパードンキーコングシリーズ』におけるドンキーコングと、新しいドンキーコングを並べるというコンセプトであった。アンドレアスは作詞も行い、リードプログラマーのクリス・サザーランドと演奏も行った。コーラスにはレア社の社員であるグレッグ・メイルズ、スティーブ・メイルズ、エド・ブライアン、クリス・ペイルが参加した。また、各キャラクターの説明部分では、そのキャラクターが作中で用いる楽器を反映したインストゥルメンタルがフィーチャーされている[1]。 カークホープは真面目なラップではなく、お遊び的なものだったと述べている[2][3]

しかし、消費者や批評家の反応は概ね否定的であり、この曲は真面目に作ったものだと捉えられた[1]。 カークホープは任天堂が「hell(地獄)」という言葉の使用に難色を示したことに驚き、これはバイブル・ベルトに起因したものと考察している[1]。 日本語版のリリースにあたっては、本曲はローカライズされず、字幕も付けられなかった[4]。 ただし、任天堂と関係が深いコピーライターの糸井重里が自身のサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」で「モンキーラップ」の和訳を載せている[4]ドンキーコング64第1回)。

本曲は1999年に発売されたオリジナル・サウンドトラックでは『Da Banana Bunch』のタイトルで1曲目に収録されていた[5]。 『ドンキーコング64』のリリースに前後して、プロモーションの一環としてニンテンドー・オブ・アメリカは、ファンがラップを演奏する「DKラップ」コンテスト「DK Rap Attack Contest」を開催した。優勝者にはドンキーコング64とNINTENDO64本体、ワシントン州レドモンドのニンテンドー・オブ・アメリカ本社への旅行が贈られ、優勝作品はドンキーコング64の公式サイトで公開された。このプロモーションのために、本曲は任天堂のウェブサイトからダウンロードすることもできた[6]

リミックス版

大乱闘スマッシュブラザーズDX』では本作のリミックス版が収録された。当初は作曲家の安藤浩和が作曲を担当する予定だったが、技術的な問題からディレクターの桜井政博と作曲家の酒井省吾が手伝うことになった。問題を解決するために、まず背後で流れる音楽を録音してから、そこにラップを乗せるという手法を取らなければならなかった。リミックス版のラップはスピードが早く(一部のキャラクターは、さらにテンポが早かった)、生で録音することは不可能であった。DJの練習中にも、それを録音し、その中から良いものを採用して混ぜるように録音していった。このラップの録音に2日を要した[7]。新バージョンではJames W. Norwood Jr.が、各キャラクターの歌詞ごとに異なる声を使って演奏した。オリジナルで用いられていた「hell」は、「heck」(Hellの婉曲語で、軽い不快感を示す)に変更された[1]。このバージョンは、その後、シリーズの続編にあたる『大乱闘スマッシュブラザーズX』(2008年)、『大乱闘スマッシュブラザーズ for Nintendo 3DS / Wii U』(2014年)、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』(2018年)でも採用され、また、2003年のゲームキューブの音楽ゲーム『ドンキーコンガ』でも、収録曲の1つに採用されている[8]。 また、後にカークホープは、元レアのスタッフたちによって、キックスターターで資金集めして製作された『Yooka-Laylee』(2017年)において、本曲の本歌取り的な作品として『Yooka-Laylee Rap』を作曲した[9]

評価

『ドンキーコング64』の発売以来、本曲は賛否両論か否定的な評価が占めた。そのクオリティから「胡散臭い賞」を受賞している。また、ESRBレーティングを受けなら、歌詞に「hell(地獄)」が登場することでも批判を受けた[10]。 1Up.comのスコット・シャーキーは「ゾッとするようなゲームのラップ曲TOP5(top 5 cringe-inducing videogame raps)」に本曲を選び、タバコ休憩したくて「中座するのに100%最適な方法」とコメントした[11]。 また、最悪のゲームのテーマ曲の1つとし、「根本的に無知」であるがゆえに「酷すぎて逆に笑えてくる(so-bad-it-good)」、「マジで、スラム街の即興音楽について考えると、最初に思い浮かぶのはネクタイをつけた日本ゴリラなんだ。うん」と述べた[12]。 DestructoidのDale Northは、最も不快なゲームの曲の一覧に本曲を含め、コメディドラマ(シットコム)の『ベルエアのフレッシュ・プリンス英語版』に登場するカールトン・バンクス英語版がこの曲で踊っているのを想像したと揶揄した[13]。 NGamer UKは「お子様向けゲームの悪の側面」についての記事で本曲を取り上げ、「酷すぎて耳から血が吹き出す」と評した[14]。 IGNはゲームにおいて最悪として引用されるものの8位に本曲を挙げた。スタッフは、テレビゲームにおいて「史上最悪の瞬間」について考える時、この曲が「頭に浮かぶ」とした。また、「ゲロのように聞こえる史上唯一の曲」とも称した[15]。 Game InformerのO'Dell Harmonは「テレビゲームにおける斬新なラップ曲」のリストに、2位として選んだ[16]。 Electronic Gaming Monthlyの2002年1月号に掲載された史上最悪のゲームのセリフには、曲中の「His coconut gun can fire in spurts. If he shoots ya, it's gonna hurt!(ヤツのココナッツキャノンはスゴイはかいりょく もしこれがヒットすりゃ すっごくイターイぜ!)」 [注釈 1]の一節が第4位に選ばれた[18] 。 カークホープはBig Huge Games在籍時に、同僚からこの曲に関してからかわれ、カークホープの墓碑には「ここにグラント・カークホープ眠る。彼はモンキーラップを書いた。彼の魂に神の慈悲があらんことを」と記されるだろうと揶揄された[3]

しかしながら、ゲーム発売から10年以上経ってからインターネットミームとして人気が急上昇した[1]。この現象についてサザーランドは、子供の頃にゲームをプレイした人たちが、大人になって、この曲が真面目なものではなく、お遊び的なものだと気づいたからじゃないかと考察している[19]。 同様にカークホープは「ABBAがそうだったように、何年もかけて流行が戻ってきたようなものだ」とコメントした[1]。 OC WeeklyのPeter Maiは、「最もチープな(ただ良さもある)テレビゲームの曲TOP5(Top 5 Cheesiest (Yet Somehow Awesome) Video Game Songs)」の中で本曲を取り上げ、「おそらくこれまでに書かれたラップの中で最悪なものだが、愛されていることも知っているだろう」と述べた[20]。GamesRadarのBob Mackeyは、この曲がドンキーコングら『ドンキーコング64』のキャラクターたちへの最大の付加価値であると述べた[21]

脚注

注釈

  1. ^ 和訳は糸井重里のサイトに掲載されたバージョン[17]

出典

  1. ^ a b c d e f g James B (2012年9月14日). “A Rare Breed Part 2 – Nintendo Nation talks to Grant Kirkhope”. Nintendo Nation. 2012年10月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月5日閲覧。
  2. ^ Weiss, Josh. “'Donkey Kong 64' Composer Grant Kirkhope Looks Back On 20 Years Of The 'DK Rap'” (英語). https://www.forbes.com/sites/joshweiss/2019/11/22/donkey-kong-64-composer-grant-kirkhope-looks-back-on-20-years-of-the-dk-rap/ 2019年11月29日閲覧。 
  3. ^ a b Greening, Chris (May 2010). “Interview with Grant Kirkhope (May 2010)”. Square Enix Music Online. 2014年6月5日閲覧。
  4. ^ a b Mandelin, Clyde (2013年7月1日). “Q&A: What's the Donkey Kong 64 Rap Like in Japanese?”. Legends of Localization. 2014年6月5日閲覧。
  5. ^ Donkey Kong 64 Soundtrack -Da Banana Bunch-”. Video Game Music Online (August 2012). June 6, 2019閲覧。
  6. ^ Chatter Like a Monkey and Win”. IGN (1999年12月8日). 2014年6月5日閲覧。
  7. ^ Brando (May 29, 2016). “Melee Music Developer Roundtable: Monkey Rap”. Source Gaming. June 6, 2019閲覧。
  8. ^ Castro, Juan (2004年9月23日). “Donkey Konga”. IGN. 2014年6月5日閲覧。
  9. ^ Update 4: 1 Million & More Stretch Goals! · Yooka-Laylee - A 3D Platformer Rare-vival!”. 2022年7月24日閲覧。
  10. ^ Scullion, Chris (2013年10月26日). “Retro Vault: Mario Sunshine, Aladdin, Majora's Mask”. CVG Online. 2014年6月5日閲覧。
  11. ^ Sharkey, Scott. “Top 5 Cringe Inducing Videogame Raps”. 1Up.com. 2014年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月5日閲覧。
  12. ^ Sharkey, Scott (2011年10月24日). “The Nine Worst Video Game Themes”. 1Up.com. 2014年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年6月5日閲覧。
  13. ^ North, Dale (2008年9月12日). “The Sound Card 005: The top ten most obnoxious game songs”. Destructoid. 2014年6月5日閲覧。
  14. ^ Sintendo: The evil side of kiddy gaming”. GamesRadar (2008年6月13日). 2014年6月5日閲覧。
  15. ^ Top 10 Tuesday: Worst In-Game Quotes”. IGN (2006年4月18日). 2014年6月5日閲覧。
  16. ^ Harmon, O'Dell (2012-12-18). “The Freshest Rap Songs In Video Games”. Game Informer. http://www.gameinformer.com/b/features/archive/2012/12/18/the-freshest-rap-songs-in-video-games.aspx 2014年6月5日閲覧。. 
  17. ^ ドンキーコング64第1回”. ほぼ日刊イトイ新聞. 2022年7月24日閲覧。
  18. ^ Seanbaby (January 2002). “EGM's Crapstravaganza 20 Worst Games Ever”. Electronic Gaming Monthly (150): 162. 
  19. ^ As Donkey Kong 64 turns 20, the devs reflect on its design, the infamous DK Rap, and how a shocked Shigeru Miyamoto created the Coconut Shooter”. GamesRadar+ (December 6, 2019). December 7, 2019閲覧。
  20. ^ Mai, Peter (2011年8月10日). “Top 5 Cheesiest (Yet Somehow Awesome) Video Game Songs”. OC Weekly. 2019年6月11日閲覧。
  21. ^ Mackey, Bob (2014年2月27日). “It's On Like... Him: How Donkey Kong's design has evolved over three decades”. GamesRadar. 2014年6月5日閲覧。

外部リンク


モンキーラップ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 16:09 UTC 版)

グラント・カークホープ」の記事における「モンキーラップ」の解説

詳細は「モンキーラップ」を参照 モンキーラップ(DK Rap)はカークホープが作曲したドンキーコング64』のオープニングで流れ楽曲で、日本版CMにも使われた。歌詞中ではゲーム登場するコングラップ乗せて紹介される。後に『大乱闘スマッシュブラザーズDX』でアレンジされ、『Yooka-Laylee』ではこの曲の後継となる曲も作られ伝説的な楽曲であるが発売当時多く酷評を受け、ファン好かれるまで15年かかったとカークホープは述懐している。

※この「モンキーラップ」の解説は、「グラント・カークホープ」の解説の一部です。
「モンキーラップ」を含む「グラント・カークホープ」の記事については、「グラント・カークホープ」の概要を参照ください。

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