テニスラケットの定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/01 04:51 UTC 版)


古典力学におけるテニスラケットの定理(テニスラケットのていり、英: tennis racket theorem)または中間軸の定理とは、3つの異なった主慣性モーメントをもつ剛体の運動に関する結果の一つである。この定理に基づく現象を1985年に宇宙空間で再発見した[1]ロシア人宇宙飛行士ウラジーミル・ジャニベコフにちなんでジャニベコフ効果と呼ばれることもある。ただし、この効果自体は少なくとも150年以上前には知られており[2]、現代の古典力学の教科書にも詳述されている[3][4]ので、ジャニベコフも既に知っていたと思われる。この効果を説明する論文が1991年に出ている[5]。
概要
定理の内容は次のとおりである。主慣性モーメントの順に慣性主軸を並べると、「剛体の第1,第3の慣性主軸のまわりの回転は安定しているが、第2の慣性主軸(中間軸)のまわりの回転は不安定である。」
このことは次のような実験で確かめられる。面(ラケットフェイス)を水平にしてテニスラケットのグリップを握り、グリップと垂直かつ面と平行な軸のまわりに1回転するようにラケットを放り上げ、キャッチする。ほとんどの場合、この回転の間に面もまた半回転し、逆の面が上になる。対照的に、(他の軸のまわりに半回転させずに)グリップと平行な軸(第1の軸)のまわりに1回転させることはたやすい。(他の軸のまわりに半回転させずに)面に垂直な軸(第3の軸)のまわりに1回転させることもまたたやすい。
また、スマートフォンを空中に回転させながら放り上げる場合、ピザ回しのように回転させる(第1軸)のと、縦に持ったときに横向きに回転させる(第3軸)のは安定しているが、縦向きに回転させる(第2軸)と横向きにも回転する。
他に本やリモコンなど、3つの異なった主慣性モーメントをもつ物体であれば何を使ってもこの実験はできる。この効果は、回転の軸が第2慣性主軸から大きく乖離していないときにはいつでも起き、空気抵抗や重力とは関係がない[6]。
理論

テニスラケットの定理はオイラーの運動方程式を用いて定量的に分析できる。トルクがゼロならば、次の方程式が成り立つ:
- テニスラケットの定理のページへのリンク