スリップコーチとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > ウィキペディア小見出し辞書 > スリップコーチの意味・解説 

スリップ・コーチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/28 19:16 UTC 版)

スリップ・コーチ英語: Slip coachあるいはSlip carriage)は、イギリスアイルランド鉄道で用いられていた客車(コーチ)で、走行中に急行列車から切り離されて、車内に乗務している車掌手ブレーキを操作して減速し、停車させる運行方法に用いられた。スリップという言葉は列車から「外れる」という意味を表しているが、北米ではフライング・スイッチ(Flying switch)とも呼ばれる。

これにより、列車自体を止めずに乗客は途中の駅に降りることができ、列車の所要時間を短縮することができた。鉄道会社同士の競争が激しかった時代、各社ともできるだけ所要時間を短縮しようと努めており、可能な限り途中駅への停車を減らそうとしていた。

運行方法

走行中の列車から突放されたスリップ・コーチ

急行列車が目的の駅に接近すると、スリップ・コーチは車掌の操作により列車から切り離されて惰性で走行する。目的地の駅が近づくと、車掌はブレーキを操作して駅に停車させていた。目的の駅で急行列車がプラットホームのない線路を通過する場合、スリップ・コーチを駅の少し手前に停車させ、入換機関車でプラットホームまで移動させていた[1]。列車によっては、何両ものスリップ・コーチをつないで走り、駅ごとに切り離していったり、1つの駅に数両のスリップ・コーチを切り離したりすることもあった。場合によっては途中駅に停車したスリップ・コーチは、その後支線の列車に連結されてその支線の終点まで行くこともあり、急行列車に乗っていた乗客が支線の駅まで乗り換えなしに行くことができた。

これとは逆方向の旅行をするときには、乗客は途中駅からスリップ・コーチに乗車し、各駅停車の列車に連結されて急行列車が停車する近くの駅まで行き、そこで最終的な目的地まで行く急行列車に連結されていた。

今日の観点からすれば、走行中に客車を切り離して惰性で走らせることは危険に思われるが、この扱いはよく訓練された乗務員によって行われており、何十年にも渡って事故なしに運行されていた。

車両

スリップ・コーチはそれ専用の車両が製造され、通常は合造車で各等級の席が1両にまとめられていた。車両の一端に連結器の切り離しとブレーキ操作を行う部屋が用意されており、車掌がそこで操作を行うとともに、荷物の保管も行えるようになっていた。

歴史

スリップ・コーチは、機関車ではなくケーブルで列車を牽引していた頃の1840年にロンドン・アンド・ブラックウォール鉄道で1840年に使用していた例がある。機関車牽引の列車でスリップ・コーチの運転が行われた最初の例は、ロンドン・ブライトン・アンド・サウス・コースト鉄道ヘイワーズ・ヒース駅で、1858年2月のことであった。同年中に追随する会社があり、次第にスリップ・コーチは増加していった。

1914年の時点では、合計200両ほどのスリップ・コーチが運用されていた。しかし第一次世界大戦によりイギリスの鉄道網は政府の監督下におかれ、軍事輸送が優先されてこうした手間のかかる運行方法は廃れていった。1918年には17両しか残っておらず、戦後もこれを復活させる会社は少なくほとんどの会社は運行を廃止した。これは列車の加速性能が改善されたこと、固定編成の列車が導入されたこと、スリップ・コーチの運行に伴う乗客1人あたりの費用がかさむことなどが理由とされている。

サザン鉄道は、ブライトン本線英語版電化された1932年4月にスリップ・コーチを廃止した[2]ロンドン・アンド・ノース・イースタン鉄道における最後のスリップ・コーチ使用例は、リバプール・ストリート駅からの2本の列車で1936年のことであった。18時発の列車がウォルサム・クロスで古いグレート・イースタン鉄道英語版製3軸スリップ・コーチを切り離したものと、クラクトン=オン=シー英語版行き急行列車がマークス・テイ駅英語版にてベリー・セント・エドモンド駅英語版行きの貫通路つきの新しい世代のスリップ・コーチを切り離したものであった。残されたスリップ・コーチも、第二次世界大戦中に一旦全廃された。

第二次世界大戦後、四大鉄道会社(ビッグ・フォー)の国有化によりイギリス国鉄が発足すると、旧グレート・ウェスタン鉄道を引き継いだウェスタン・リージョンでは数両のスリップ・コーチを復活させた。これはウェスタン・リージョン名物とも言うべき存在であった。このスリップ・コーチも最終的にビスター・ノース駅英語版において1960年9月10日の運行を最後に廃止された。

脚注

  1. ^ Rex Conway's Steam Album, Sutton Publishing, ISBN 978-0-75094626-1, p 81.
  2. ^ Kidner, R.W. (1984). Southern suburban steam 1860-1967. The Oakwood Press. pp. 11. ISBN 0853612986 

参考文献

外部リンク

  • SLIP COACHES - スリップ・コーチの仕組みや使用している様子の写真などの紹介。(英語)

スリップコーチ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/11 16:58 UTC 版)

きかんしゃトーマス とびだせ!友情の大冒険」の記事における「スリップコーチ」の解説

クリーム色小豆色客車

※この「スリップコーチ」の解説は、「きかんしゃトーマス とびだせ!友情の大冒険」の解説の一部です。
「スリップコーチ」を含む「きかんしゃトーマス とびだせ!友情の大冒険」の記事については、「きかんしゃトーマス とびだせ!友情の大冒険」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「スリップコーチ」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「スリップコーチ」の関連用語

スリップコーチのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



スリップコーチのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのスリップ・コーチ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのきかんしゃトーマス とびだせ!友情の大冒険 (改訂履歴)、ロンドン・ブライトン・アンド・サウス・コースト鉄道 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS