通奏低音
(コンティヌオ から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/12/07 06:20 UTC 版)
通奏低音(つうそうていおん)とは、主にバロック音楽において行われる伴奏の形態。一般に楽譜上では低音部の旋律のみが示され、奏者はそれに適切な和音を付けて演奏する。イタリア語のバッソ・コンティヌオ (Basso continuo) の訳語で、伴奏楽器が間断なく演奏し続けるということからこの名がある。略してコンティヌオと呼ぶことも多い。ドイツ語でゲネラルバス (Generalbass) とも呼ばれる。
記譜された音から和音をつくることをリアライズ (英: realize) という。演奏されるべき和音の構成音を指示するために、記譜音からの音程を示す数字や変化記号を音符に添えることが一般的であり、これを数字付き低音という。現代では専門家でない演奏者のためにリアリゼーションを楽譜に書き起こしたものも多く市販されている。
通奏低音の演奏には、オルガン、チェンバロなどの鍵盤楽器や、リュート(テオルボ)、ハープ、ギターなどの撥弦楽器といった和音の出せる楽器が用いられ、しばしばヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロ、ヴィオローネ、ファゴットなどの低音旋律楽器が併用される。一般には楽譜に演奏楽器の指定は無く、演奏時にこれらの楽器を任意で選択する。ただし歴史的には必ずしも和音楽器と共に低音旋律楽器が使われていたわけではない。イギリスのP.ホールマンによれば「(17世紀初期の)ソナタでこれらの楽器が使われたのは、音楽がオブリガートのバス・パート(コンティヌオのバス・ラインより手がこんでいる)を含むときだったと思われる」という[1]。一方、楽器編成の都合上や古楽の様式に則らない近代的な楽団による演奏では、旋律楽器のみで和音を伴わない楽譜どおりの演奏がなされることもあるが、これは本来の通奏低音の形態からすれば不完全なものといえる。
このような通奏低音という形態は、バロック音楽の根幹をなす要素であり、バロック時代を指して「通奏低音の時代」と称することがある。また、ポピュラー音楽における「コードネーム」の概念にも通じる原理がある。
日本では「通奏低音」という語は「常に底流としてある、考えや主張」[2][3]、「物事の底流にあって、知らない間に全体に影響を与えるような雰囲気」[4]などの比喩に用いられる場合があるが、「ドローン」や「オスティナート・バス」の方がイメージに近いという指摘もある[5]。モスコ・カーナ著、加納泰訳『プッチーニ 生涯・芸術』には、「プッチーニの生涯と彼の芸術の根底に絶えず鳴り響いてた、いわば「通奏低音」は、「哀愁」であった。」(243頁)という表現があるが、その原文は、「The ground-bass(=オスティナート・バス) of Puccini's life and his art」[6]である。
脚注
- ^ 音楽の友社 A.バートン編 / 角倉一朗訳 「バロック音楽 歴史的背景と演奏習慣」 第二章 記譜法、楽器法の項目
- ^ 「通奏低音」『デジタル大辞泉』小学館。コトバンクより2018年12月19日閲覧。
- ^ 例えば、山本文茂『音楽教育研究の方法と分野』においても、「(高久清吉の精神は)まるで通奏低音のように、各教科の研究文献の中に脈々と生き続けている」(222頁)という用例がある。ただし、当時の音楽は、「思想」や「主張」を表現するものでないという指摘がある(“比喩的に使われた「通奏低音」というコトバは、たいていは誤用です”. クラングレーデ コンサート事務局ブログ. 2016年8月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年12月19日閲覧。)。
- ^ 「通奏低音」『精選版日本国語大辞典』小学館。コトバンクより2025年12月6日閲覧。
- ^ 吉松隆. “バロック音楽についての雑感”. 月刊クラシック音楽探偵事務所. 2018年12月19日閲覧。
- ^ Carner, Mosco『Puccini: A critical biography』Alfred A. Knopf、1959年、156頁。
関連項目
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