エリマイス文字 (Unicodeのブロック)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/29 09:29 UTC 版)
エリマイス文字 (Unicodeのブロック) | |
---|---|
Elymaic | |
範囲 | U+10FE0..U+10FFF (32 個の符号位置) |
面 | 追加多言語面 |
用字 | エリマイス文字 |
主な言語・文字体系 | |
割当済 | 23 個の符号位置 |
未使用 | 9 個の保留 |
Unicodeのバージョン履歴 | |
12.0 | 23 (+23) |
公式ページ | |
コード表 ∣ ウェブページ |
エリマイス文字(エリマイスもじ、英語: Elymaic)は、Unicodeのブロックの一つ。
解説
2世紀から3世紀初頭にかけて[1]現在のイラン、フーゼスターン州に相当する地域に存在していた、パルティア帝国(紀元前247年~紀元後224年)内の国家エリマイス王国において話された[2]、古エラム語の表記に用いられていたエリマイス文字を収録している。
この文字体系自体は"Elymaean"とも呼ばれており、「エリマイス(Elymaic)」という名称は、シュメール語でエラム(Elam)、アッカド語でエラムー(Elamū)或いはエランマトゥ(Elammatu)[1]、古エラム語自身ではハルタムティ(ḫaltamti)或いはハタムティ(ḫatamti)[1]として知られる地域のギリシャ語表記(Ἐλυμαΐς)に由来しており、これらの地域は現在の英語ではエラム(Elam)と呼ばれている[2]。
エリマイス文字はアラム文字から派生した文字体系であり[2]、音素文字のうち基本的に母音を表記せず、子音字のみで綴られるアブジャドに分類される。アラビア文字やヘブライ文字などと同様に右から左への横書き(右横書き)である。単語ごとの分かち書きは基本的にしないが、碑文によってはスペースによって分かち書きがされている場合がある[1]。
符号位置の順序はおおむね伝統的なエリマイス文字の順序に従っている。
Unicodeのバージョン12.0において初めて追加された。
収録文字
「ラテン文字転写」の列はエリマイス文字のラテン文字への翻字方式の一つである○○に従う。
コード | 文字 | 文字名(英語) | 用例・説明 | ラテン文字転写 |
---|---|---|---|---|
字母 | ||||
U+10FE0 | 𐿠 | ELYMAIC LETTER ALEPH | 子音[ʔ]を表す。 | ʾ |
U+10FE1 | 𐿡 | ELYMAIC LETTER BETH | 子音[b]を表す。 | b |
U+10FE2 | 𐿢 | ELYMAIC LETTER GIMEL | 子音[ɡ]を表す。 | g |
U+10FE3 | 𐿣 | ELYMAIC LETTER DALETH | 子音[d]を表す。 | d |
U+10FE4 | 𐿤 | ELYMAIC LETTER HE | 子音[h]を表す。 | h |
U+10FE5 | 𐿥 | ELYMAIC LETTER WAW | 子音[w]を表す。 | w |
U+10FE6 | 𐿦 | ELYMAIC LETTER ZAYIN | 子音[z]を表す。 | z |
U+10FE7 | 𐿧 | ELYMAIC LETTER HETH | 子音[ħ]を表す。 | ḥ |
U+10FE8 | 𐿨 | ELYMAIC LETTER TETH | 子音[tˤ]を表す。 | ṭ |
U+10FE9 | 𐿩 | ELYMAIC LETTER YODH | 子音[j]を表す。 | y |
U+10FEA | 𐿪 | ELYMAIC LETTER KAPH | 子音[k]を表す。 | k |
U+10FEB | 𐿫 | ELYMAIC LETTER LAMEDH | 子音[l]を表す。 | l |
U+10FEC | 𐿬 | ELYMAIC LETTER MEM | 子音[m]を表す。 | m |
U+10FED | 𐿭 | ELYMAIC LETTER NUN | 子音[n]を表す。 | n |
U+10FEE | 𐿮 | ELYMAIC LETTER SAMEKH | 子音[s]を表す。 | s |
U+10FEF | 𐿯 | ELYMAIC LETTER AYIN | 子音[ʕ]を表す。 | ʿ |
U+10FF0 | 𐿰 | ELYMAIC LETTER PE | 子音[p]を表す。 | p |
U+10FF1 | 𐿱 | ELYMAIC LETTER SADHE | 子音[sˤ]を表す。 | ṣ |
U+10FF2 | 𐿲 | ELYMAIC LETTER QOPH | 子音[q]を表す。 | q |
U+10FF3 | 𐿳 | ELYMAIC LETTER RESH | 子音[r]を表す。 | r |
U+10FF4 | 𐿴 | ELYMAIC LETTER SHIN | 子音[ʃ]を表す。 | š |
U+10FF5 | 𐿵 | ELYMAIC LETTER TAW | 子音[t]を表す。 | t |
合字 | ||||
U+10FF6 | 𐿶 | ELYMAIC LIGATURE ZAYIN-YODH | アラム語のヘテログラム(他の言語から借用されて一塊で表語文字のように扱われる文字列)zyに使用される[3]。 | zy |
小分類
このブロックの小分類は「字母」(Letters)、「合字」(Ligature)の2つとなっている[3]。
字母(Letters)
この小分類にはエリマイス文字のうち、基本的な字母が収録されている。
合字(Ligature)
この小分類にはエリマイス文字のうち、アラム語のヘテログラム(他の言語から借用されて一塊で表語文字のように扱われる文字列)zyを表すために用いられる字母zayinとyodhの合字1文字のみが収録されている。
文字コード
エリマイス文字(Elymaic)[1] Official Unicode Consortium code chart (PDF) |
||||||||||||||||
0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | A | B | C | D | E | F | |
U+10FEx | 𐿠 | 𐿡 | 𐿢 | 𐿣 | 𐿤 | 𐿥 | 𐿦 | 𐿧 | 𐿨 | 𐿩 | 𐿪 | 𐿫 | 𐿬 | 𐿭 | 𐿮 | 𐿯 |
U+10FFx | 𐿰 | 𐿱 | 𐿲 | 𐿳 | 𐿴 | 𐿵 | 𐿶 | |||||||||
注釈
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履歴
以下の表に挙げられているUnicode関連のドキュメントには、このブロックの特定の文字を定義する目的とプロセスが記録されている。
バージョン | コードポイント[a] | 文字数 | L2 ID | ドキュメント |
---|---|---|---|---|
12.0 | U+10FE0..10FF6 | 23 | L2/17-055 | Anshuman Pandey (3 February 2017), Preliminary proposal to encode the Elymaic script (英語) |
L2/17-226 | Anshuman Pandey (24 October 2017), Proposal to encode the Elymaic script in Unicode (revised; supercedes L2/17-055) (英語) | |||
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出典
- ^ a b c d Anshuman Pandey (2017年10月24日). “Proposal to encode the Elymaic script in Unicode (revised; supercedes L2/17-055)” (英語). Unicode. 2025年5月29日閲覧。
- ^ a b c Anshuman Pandey (2017年2月3日). “Preliminary proposal to encode the Elymaic script” (英語). Unicode. 2025年5月29日閲覧。
- ^ a b "The Unicode Standard, Version 15.1 - U10FE0.pdf" (PDF). The Unicode Standard (英語). 2025年5月29日閲覧。
関連項目
- エリマイス文字
- エリマイス文字_(Unicodeのブロック)のページへのリンク