エジプトへの逃避 (クロード・ロラン)とは? わかりやすく解説

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エジプトへの逃避 (クロード・ロラン)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/12/05 06:28 UTC 版)

『エジプトへの逃避』
フランス語: La Fuite en Égypte
英語: The Flight into Egypt
作者 クロード・ロラン
製作年 1635年ごろ
種類 油彩キャンバス
寸法 71 cm × 98 cm (28 in × 39 in)
所蔵 インディアナポリス美術館インディアナ州インディアナポリス

エジプトへの逃避』(エジプトへのとうひ、: La Fuite en Égypte, : The Flight into Egypt)は、フランスバロック画家クロード・ロランが1635年ごろに制作した絵画である。油彩。主題は『新約聖書』「マタイによる福音書」で語られている聖家族エジプトへの逃避から取られている。クロード・ロラン現在はインディアナ州インディアナポリス美術館に所蔵されている[1][2]

主題

聖家族のエジプトへの逃避は「マタイによる福音書」2章13節から23節で言及されている。それによると、東方の三博士が幼児のイエス・キリストを礼拝して帰ったのち、聖ヨセフの夢に主の御使いが現れた。そしてヘロデ大王ベツレヘムに生まれたユダヤ人の王となる子供を恐れて国内の新生児を虐殺することを予言し、この災厄から逃れるため、幼児キリストを連れてエジプトに行き、知らせがあるまでそこに留まっているよう告げた。そこでヨセフは夜の間に幼児と聖母マリアを連れてエジプトに逃亡し、ヘロデ大王が死ぬまでその地に留まった。ヘロデ大王が死ぬと再びヨセフの夢の中に使いが現れて、イスラエルに帰るよう告げたので、ヨセフは帰国し、ナザレの地に移り住んだ[3]

作品

クロード・ロランによるこの初期の絵画は幼児虐殺から逃亡する聖ヨセフ、聖母マリア、幼児キリストを描いている。将来の役割を予感させるため、幼児キリストはロバ手綱を握っている。クロード・ロランは苛烈な虐殺から逃亡する3人を穏やかな風景の中に描いた。このような風景は、ローマの田園地帯を羊飼いの素朴なグループとリアルに描写したそびえ立つ木々を組み合わせることでクロード・ロランを有名にした。画家はカンパーニャ地方の金色の太陽の光と大気の効果を捉えることを可能にするスケッチを作成するため、マラリアの危険を冒して後者の描写を完成させた[1]。主題は聖家族であるかもしれないが、実際に焦点を当てているのは物語ではなく光である。クロード・ロランの理想的なアルカディアの風景は、宗教的なテーマは二次的であり、光と大気を研究したものである[4]

クロード・ロランは特に初期の作品で「エジプトへの逃避」を繰り返し描いた。彼は風景画以外の作品を描いたことはないが、このジャンルを新たな高みに引き上げるほどの技量で風景を制作した[5]。彼の自然に対する詩的なビジョンは、宗教画や歴史画と同様に、風景画をそれ自体独立したジャンルとして確立するのに役立った17世紀の裕福な後援者によって非常に高く評価された[4]

来歴

絵画は18世紀にパリのヴァンサン・ドンジュー(Vincent Donjeux)が所有していたことが知られている。所有者は1773年に第2代パーマストン子爵ヘンリー・テンプル英語版に売却した。絵画は1世紀以上の間、パーマストン子爵家で相続されていたが、1889年に初代アイヴァー伯爵エドワード・セシル・ギネスに売却された。初代アイヴァー伯爵の死後、絵画は息子のアーネスト・ギネス英語版に相続されたが、彼が1949年に死去すると、遺産相続人によって1953年に売却された。当初の予定では絵画はクリスティーズ競売にかけられるはずであったが、おそらく競売前に美術商ノードラー商会アグニューズ英語版ルドルフ・J・ハイネマン英語版に売却された。これを1959年に購入したのはインディアナポリスの美術収集家ジョージ・ヘンリー・アレクサンダー・クロウズ英語版の未亡人イーディス・ホワイトヒル・ヒンケル・クロウズ(Edith Whitehill Hinkel Clowes)であった。これ以降、絵画はクロウズ基金コレクション(Clowes Fund Collection)が所有していたが、1971 年からインディアナポリス美術館に長期貸与し、2003年に同美術館に寄贈された[1]

ギャラリー

クロード・ロランの同主題の作例

脚注

  1. ^ a b c The Flight into Egypt”. インディアナポリス美術館公式サイト. 2024年5月5日閲覧。
  2. ^ Lee, Ellen, RobinsonAnne 2005.
  3. ^ 「マタイによる福音書」2章13節-23節。
  4. ^ a b Day 1988.
  5. ^ Harris 2004.
  6. ^ Rest on the Flight into Egypt”. クリーブランド美術館公式サイト. 2024年5月5日閲覧。
  7. ^ Rest on the Flight into Egypt”. クラーク・アート・インスティテュート英語版公式サイト. 2024年5月5日閲覧。
  8. ^ Landschaft mit der Flucht nach Ägypten”. ドレスデン国立美術館公式サイト. 2024年5月5日閲覧。
  9. ^ Pastoral Landscape with the Flight into Egypt”. ティッセン=ボルネミッサ美術館公式サイト. 2024年5月5日閲覧。
  10. ^ Landscape with the Rest on the Flight into Egypt”. エルミタージュ美術館公式サイト. 2024年5月5日閲覧。

参考文献

外部リンク




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