インガ・ルギニエネ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/09/30 01:03 UTC 版)
インガ・ルギニエネ
Inga Ruginienė
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2025年
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生年月日 | 1981年5月24日(44歳) |
出生地 | ![]() |
出身校 | ヴィリニュス大学 (VU) 医学部(2003年) 同修士課程(2005年) カウナス森林環境工学カレッジ(2015年) ミーコラス・ロメリス大学修士課程(2022年) |
所属政党 | リトアニア社会民主党 (LSDP) |
配偶者 | ヴィスマンタス・ルギニス[1][2] |
親族 | アンドリュス・バルズダ(父)[3] 、ディアナ・ライテライティエネ(母) |
在任期間 | 2025年9月25日 - |
大統領 | ギタナス・ナウセダ |
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在任期間 | 2024年12月12日 - 2025年8月4日 |
在任期間 | 2025年8月4日 - 2025年9月25日 |
インガ・ルギニエネ(Inga Ruginienė、旧姓: ライテライティーテ(Raitelaitytė)、1981年5月24日 - )は、リトアニアの労働運動家で政治家。2025年9月25日よりリトアニアの首相を務める。
2024年10月の国会(セイマス)議員選挙に出馬し、当選。同年12月から2025年9月までパルツカス内閣で社会保障労働相を務めた。
経歴
学歴
1981年5月24日、トラカイでリトアニア人の両親のもとに生まれる[4][5]。グリギリュケスで育つも、夏はウクライナ東部のクラマトルスクで過ごした[6][7]。1999年、グリギシュケス・シュヴィエサ・ギムナジウムを卒業[8]。
2003年、ヴィリニュス大学医学部卒業(公衆衛生学士)。2005年、同大学で修士号を取得(公衆衛生)[4][5]。2015年、カウナス森林環境工学カレッジで学士号を取得(森林経営学)[5]。2022年、ミーコラス・ロメリス大学で修士号を取得(労働法)[4][5]。
職歴と労働組合での活動
2004年よりリトアニア赤十字社で応急処置インストラクターとして勤務[4][5]。2005年から2008年まで国立環境健康センターで公衆衛生の専門家として勤務[4][5]。2008年から2010年まで「S stata」社で勤務[4][5]。
2012年から2014年までリトアニア林業労働組合連盟の副会長として会長のアルギルダス・ラウカを支える。ラウカが2014年に35年間務めた会長職を退くと、ルギニエネがこれを引き継ぎ、2018年まで務める[4][5]。なお、ルギニエネが2018年に会長を退いたのちには、ルギニエネの母ディアナ・ライテライティエネが会長に就任。
ルギニエネ自身はその後、2018年から2024年まで労組のナショナルセンターであるリトアニア労働組合連合の会長を務めた(2期)[4][5][1]。同連合会長として、政労使の協議の場であるリトアニア共和国三者評議会に参加し、最低賃金などの労働条件や労働者の権利に関する交渉に臨んだ。また、2023年から2024年までは欧州労働組合連合の副会長を務めた[4][5][1]ほか、国際労働組合総連合欧州支部の副支部長も務めた。
労働法に関する専門家としてメディアでコメンテーターを務めたほか、2016年から2019年までリトアニア赤十字社役員[4][5]、2021年から2023年までカウナス森林環境工学カレッジ評議員も担った[1][4][5]。
政治家として
2024年10月、リトアニア国会(セイマス)議員選挙にリトアニア社会民主党 (LSDP) から立候補[9][4][5]。ただし選挙時は同党に所属していなかった[9][10][11]。ルギニエネ本人によれば、彼女の政界進出は、LSDP所属のロベルト・ドゥフニェヴィチ・ヴィリニュス地区自治体長の勧めによるものであったという。国会議員選挙では、ナウイニンカイ=ラソス(第14)小選挙区で得票数6位で敗れる[1][12]も、比例で当選を果たす[13]。選挙後の11月、LSDPに入党[10]。
同年12月からギンタウタス・パルツカス内閣(第19次内閣)で社会保障労働相を務める[14]。2025年8月4日にパルツカス首相がスキャンダルを受けて辞任すると、新内閣発足まで社会保障労働相代行を務めた[15][16]。
国会内では、2024年11月19日から2025年9月26日まで人権委員会に所属[5]。そのほか、森林保護に関する議連、大量移民に反対する議連、「ネリンガの友」議連、女性議連、アゼルバイジャン友好議連、英国友好議連、カナダ友好議連、韓国友好議連、ウクライナ友好議連にも所属する[5]。
パルツカス首相辞任後の2025年8月6日、LSDP指導部はルギニエネを次期首相候補に選出[17][18][19]。このとき次期首相候補としてはエウゲニユス・サブティスやユオザス・オレカスの名も挙がっていたが、サブティスは直前で立候補を取り下げ、オレカスも党指導部に立候補を届け出なかった。
8月26日、国会がルギニエネを次期首相とすることを承認(賛成78、反対35、棄権14)[14]。同日午後、ギタナス・ナウセダ大統領がルギニエネを次期首相に任命。翌月25日、ルギニエネ新首相率いる連立内閣が発足した(賛成80、反対42)[19][20][21]。
政治思想
ジャーナリストのスタシース・グダヴィチュスによれば、ルギニエネは左派社会民主主義の立場をとる[22]。
社会問題
同性パートナーシップに賛成で、LSDP指導部が次期首相候補に選出した翌日、同性パートナーシップの法制化に関する議論を再開すると表明[23]。
また、中絶の無料化と薬剤による妊娠中絶の合法化を目的とするリプロダクティブ・ヘルス法案にも賛成[24]。
経済
「公共部門は〔民間ではなく〕国に委ねられるべき」として、国がエネルギー持株会社イグニティスの株式を購入することに賛成[25]。
また、アルコールやタバコに対する税の引き上げも示唆している[26]。
防衛
国家安全保障を最優先事項としており、防衛支出を対GDP比5–6%に引き上げるとしたパルツカス政権の計画を引き継ぐ考えを示している[27]。
また、国民皆兵制の導入も検討している[28]。
外交
ウクライナ紛争 (2014年-)に関してウクライナを強力に支持する意向を表明している[7]。ただし、リトアニアが平和維持軍の一部として軍をウクライナに派兵すべきかについては明確な立場はないとしている[29]。
中国についてはリトアニアにとっての脅威であるとしつつも、欧州連合 (EU) 共通外交政策に従い、対中関係を正常化する意向を示す[30]。なお、両国の外交に関して、2021年にリトアニアに開設された台湾代表処が「台北」ではなく「台湾」という名称を用いていることから、両国の外交関係は格下げされていた[30]。ルギニエネは、中国との外交関係を正常化することを目指すものの「友好関係」は追求しないと述べている[31]。
移民問題
大量移民に反対する議連に所属しており[5]、安全保障上の理由から移民管理を厳格化しつつ、税収基盤に貢献する熟練労働者の誘致に注力し、移民の統合を優先すべきとの見解を示している[32]。
人物
リトアニア語、英語、ロシア語を話す[4][5]。リトアニア語にわずかなロシア語訛りがあるとも指摘されるが、これはグリギシュケスというリトアニア語とロシア語のバイリンガル地域で育ったこと、また幼少期にウクライナのロシア語圏地域で多くの時間を過ごしたことによるものであると自身は説明している[7]。
夫は複数の企業を経営する実業家のヴィスマンタス・ルギニス[33][34]で、彼もまたグリギシュケスで育った。二人のあいだには子供が2人いる。
両親はともにリトアニア人で、母のディアナ・ライテライティエネはリトアニア林業労働組合連盟で30年以上勤務し、同連盟の役員を長年務めた[34]。
ルギニエネによれば、彼女の曽祖母とその姉妹は第二次世界大戦中にウクライナに住んでいたといい、また彼女の祖父はシベリアに追放され、追放先で彼女の祖母と出会ったという。そのほか遠い親戚がモスクワに住んでいるが、ほとんど連絡をとっていないとしている[7]。
推理小説を読むことを好み、最も好きな本の一つに『星の王子さま』を挙げる[1][33]。そのほかの趣味として、旅行と絵画も挙げている[1][4][5]。
脚注
- ^ a b c d e f g “Naujoji socialdemokratų kandidatė į premjeres: kas yra Inga Ruginienė?”. LRT.lt. (2025年8月4日) 2025年9月29日閲覧。
- ^ Deveikis, Jonas (2025年8月6日). “Kiek turto turi Ruginienė ir kokius verslus valdo jos vyras” (リトアニア語). LRT.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ Griežė, Dominykas (2025年8月8日). “Įdomios I. Ruginienės biografijos detalės: kas buvo jos tėvas ir kokią mokyklą baigė”. Alfa.lt. 2025年8月24日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n “2024 parliamentary elections. Candidate biography: Inga RUGINIENĖ” (リトアニア語). Lietuvos Respublikos vyriausioji rinkimų komisija (2024年). 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r “Inga Ruginienė” (リトアニア語). Seimas. 2025年8月7日閲覧。
- ^ Liubertaitė, Agnė (2025年8月9日). “Lrytas apsilankė Grigiškėse, kur augo ir gyvena I. Ruginienė: ką apie ją sako gyventojai?” (リトアニア語). Lrytas.lt
- ^ a b c d Jakučionis, Saulius (2025年8月7日). “Lithuanian PM candidate Ruginienė addresses past trips to Russia, family ties to Ukraine” (英語). LRT.lt
- ^ Griežė, Dominykas (2025年8月8日). “Įdomios I. Ruginienės biografijos detalės: kas buvo jos tėvas ir kokią mokyklą baigė” (リトアニア語). Alfa.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b Lyberytė, Augustė (2024年6月15日). “Profsąjungų vadovė Ruginienė kartu su LSDP kandidatuos į Seimą” (リトアニア語). LRT.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b Lėka, Aušra (2025年8月8日). “LSDP – už nepatyrusią, bet populiarią lyderę” (リトアニア語). Kauno diena 2025年9月29日閲覧。
- ^ Dobrovolskas, Ignas (2024年11月16日). “Potencialia ministre įvardijama I. Ruginienė: keturių darbo dienų savaitė – neišvengiama (interviu)” (リトアニア語). diena.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ “2024 m. spalio 13 d. Lietuvos Respublikos Seimo rinkimai (I turas)” (リトアニア語). Lietuvos Respublikos vyriausioji rinkimų komisija (2024年). 2025年9月29日閲覧。
- ^ “Išrinkti Lietuvos Respublikos Seimo nariais 2024–2028” (リトアニア語). Lietuvos Respublikos vyriausioji rinkimų komisija (2024年). 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b “Trade union veteran becomes new Lithuanian PM”. Politico Europe 2025年9月29日閲覧。
- ^ “Ruginienė: tikiu, kad darbais ir savo pasiryžimu galėsiu nuneigti bet kokias abejones” (リトアニア語). LRT.lt. (2025年8月5日) 2025年9月29日閲覧。
- ^ Gaidamavičius, Giedrius (2025年8月13日). “I. Ruginienė ketina skirti dėmesį socialiniams reikalams, sveikatos paslaugoms, biudžetui” (リトアニア語). Bernardinai.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ Jakučionis, Saulius (2025年8月6日). “Lithuania's Social Democrats nominate former trade unionist Ruginienė for prime minister” (英語). LRT.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ Andrulytė, Toma (2025年8月6日). “Paaiškėjo, ką kandidatu į premjerus išrinko LSDP” (リトアニア語). TV3.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b 重松尚 (2025年9月28日). “リトアニア社会民主党(LSDP)”. Hisashi Shigematsu – リトアニア研究リソース. 2025年9月28日閲覧。
- ^ “Lithuania appoints pro-Ukraine government”. The Straits Times (2025年9月25日). 2025年9月26日閲覧。
- ^ Sytas, Andrius (2025年9月25日). “Ruginiene becomes Lithuania's prime minister, pledges more defence spending”. Reuters. 2025年9月26日閲覧。
- ^ “Apžvalgininkas apie Ruginienę: tvirta, laikosi kairesnių socialdemokratinių pozicijų” (リトアニア語). LRT.lt (2025年8月7日). 2025年9月29日閲覧。
- ^ “Ruginienė: man tapus premjere, diskusijos Seime dėl partnerystės įteisinimo bus atnaujintos” (リトアニア語). Delfi (2025年8月7日). 2025年9月29日閲覧。
- ^ “Ruginienė: sutarimą progresyviais klausimais gali būti sunku rasti ne tik su prezidentu” (リトアニア語). LRT.lt (2025年8月28日). 2025年9月29日閲覧。
- ^ “Ruginienė toliau stumia idėją dėl "Ignitis grupės"” (リトアニア語). LNK.lt (2025年8月28日). 2025年9月29日閲覧。
- ^ “Ruginienė pripažįsta – teks didinti mokesčius: vardija, kurios prekės brangs” (リトアニア語). TV3 (2025年9月23日). 2025年9月26日閲覧。
- ^ “PM-nominee Ruginienė says she'll stick to Lithuania's military spending targets” (英語). LRT.lt. (2025年8月7日) 2025年9月29日閲覧。
- ^ Augustas Stankevičius (2025年8月27日). “Lithuania ‘may not be able to avoid’ universal conscription – PM designate” (英語). LRT.lt 2025年9月28日閲覧。
- ^ “Incoming PM says she has no 'clear position' yet on sending Lithuanian troops to Ukraine” (英語). LRT.lt. (2025年8月27日) 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b Venckūnas, Vilmantas; Skėrytė, Jūratė (2025年8月27日). “Budrys to remain Lithuania's foreign minister, says mending ties with China remains a task” (英語). LRT.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ Skėrytė, Jūratė (2025年9月10日). “Inga Ruginienė: nekalbame apie draugiškus santykius su Kinija” (リトアニア語). Kauno diena 2025年9月29日閲覧。
- ^ Jursevičius, Deividas (2025年1月29日). “Ruginienė apie tamsiąją migracijos pusę: grėsmė Lietuvai ir nesumokami mokesčiai” (リトアニア語). LRT.lt 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b “New Social Democrat candidate for prime minister: who is Inga Ruginienė?” (英語). LRT.lt. (2025年8月7日) 2025年9月29日閲覧。
- ^ a b “2024 parliamentary elections. Candidate's declared private interests: Inga RUGINIENĖ.” (リトアニア語). Lietuvos Respublikos vyriausioji rinkimų komisija (2024年). 2025年9月29日閲覧。
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