アドミラル・シュパウン (軽巡洋艦)とは? わかりやすく解説

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アドミラル・シュパウン (軽巡洋艦)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/01/08 03:41 UTC 版)


竣工当時の「アドミラル・シュパウン」
艦歴
発注 ポーラ工廠
起工 1908年5月30日
進水 1909年8月30日
就役 1910年11月15日
退役
その後 1920年賠償艦としてイギリスに引き渡し後、1921年に解体
除籍 1920年
前級 ツェンタ級
次級 ヘルゴラント級
性能諸元
排水量 常備:3,500トン
満載:3,943トン
全長 130.6m
水線長 129.65m
全幅 12.8m
吃水 5.3m
機関 ヤーロー石炭専焼水管缶16基
パーソンズ直結タービン機関2組4軸推進
最大出力 25,130hp
最大速力 27.07ノット
航続距離 24ノット/1,600海里
燃料 石炭:786トン
乗員 327名
兵装 スコダ 10cm(47口径)単装砲7基
スコダ 4.7cm(44口径)単装砲1基
7.62mm単装機銃1基
45cm単装魚雷発射管2基(1917年:4基)
機雷60個
装甲 舷側:60mm(水線最厚部)
甲板:20mm
主砲防盾:40mm(最厚部)
司令塔:60mm(最厚部)

アドミラル・シュパウン (Admiral Spaun) はオーストリア=ハンガリー帝国海軍軽巡洋艦。同型艦はない。艦名は帝国海軍総司令官であったヘルマン・フォン・シュパウンドイツ語版に因む。

概要

本艦は、オーストリア=ハンガリー帝国海軍が防護巡洋艦ツェンタ級に続いて建造・就役させた軽巡洋艦の一隻である。本艦は1906年度海軍計画において通商破壊任務を主任務として設計・建造され、高速力発揮のため、推進機関としてレシプロ機関に代えて蒸気タービン機関を採用し、同海軍初のタービン推進巡洋艦となった。高圧・低圧タービン各1基を1組とする構成の機関を2組備え、計4軸推進で当時としては高速となる27ノットを発揮した。オーストリア=ハンガリー帝国海軍においては偵察巡洋艦に類別された[要出典]

次級のヘルゴラント級軽巡洋艦とともに第一次世界大戦期のオーストリア=ハンガリー帝国海軍では最良の軽巡洋艦であり、アドリア海域各地の機動作戦に使用された。

艦形

本艦の船体は船首楼型船体を採用していた。船首楼甲板上には10cm単装主砲2基を並列に配置。船首楼甲板後端には二層の艦橋構造物と棒檣構造の前がある。その後方の上甲板下は缶室区画で、甲板上に等間隔に4本の煙突が設けられた。煙突付近の舷側は端艇揚収位置となっている。また、この付近の舷側甲板上には10cm単装主砲が片舷2基ずつ置かれ、各舷の主砲の間に45cm単装魚雷発射管1基が配置された。後檣後方の後甲板上にも単装主砲1基が配置された。

兵装

本艦の主砲にはシュコダ社でオーストリア=ハンガリー帝国海軍向けに製造したK11型 10cm(47口径)砲を採用した。この砲は後に自国の軽巡洋艦「ヘルゴラント級」や「サイダ」、駆逐艦タトラ級」の主砲にも採用された。

その性能は、26.2kgの砲弾を用いた場合、仰角14度での射程11,000mであった。これを防盾の付いた単装砲架で搭載した。旋回と俯仰は主に人力で行われ、砲身の仰角18度・俯角4度で砲架は左右に180度旋回できたが実際は上部構造物により射界に制限があった。発射速度は毎分8~10発だった。

他に対水雷艇迎撃用にシュコダ製4.7cm(44口径)砲を1基搭載した。

水雷兵装として45cm単装魚雷発射管を2基装備した。

機関

本艦はヤーロー式石炭専焼水管缶16基とパーソンズ式直結タービンを採用した。この蒸気タービン機関は、それぞれ別個の推進器を有する高圧タービンと低圧タービン各1基を1組とする構成としており、両舷2組4軸で最大出力25,130shpを発揮し、最大速力27.07ノットを得た。機関配置は、艦中央部前寄りに缶室、その後方に機械室をそれぞれまとめて配置する形態を採っていた。

艦歴

1908年5月30日起工[1]。1909年10月30日進水[1]。1910年11月15日就役[1]

1912年5月17日、駆逐艦「シャルフシュツェ」と衝突[2]

第一次世界大戦

1915年5月23日、イタリアはオーストリア=ハンガリー帝国に宣戦布告。同日、オーストリア=ハンガリー帝国海軍の戦艦などは出撃し、アンコーナなどの攻撃へと向かった。それに先立つ5月19日、南からのイタリア艦隊来襲に備え偵察部隊が出撃した[3]。そのうちの一つは巡洋艦「アドミラル・シュパウン」と駆逐艦「シュトライター」、「ヴィルトファング」、「ウスコケ」からなるHグループで、ラゴスタ島とペラゴーザ島との間へと向かった[4]。5月23から24日の夜に偵察部隊はイタリア沿岸の目標攻撃を命じられ、Hグループは24日にテルモリカンポマリーノ間の鉄道上の目標とトレーミティ諸島を攻撃した[5]

7月27日、巡洋艦「アドミラル・シュパウン」、「ノファラ」は駆逐艦「ウスコケ」、「シャルフシュツェ」、水雷艇「75T」、「76T」、「79T」とともにアンコーナペーザロ間の鉄道を攻撃した[6]

1916年4月3日、「アドミラル・シュパウン」はPorer沖で触礁[7]。艦底を損傷し、舵を失った[7]。4月7日から5月12日までポーラで修理が行われた[7]

1917年3月15日、Fasana海峡で潜水艦「U20」と衝突[7]

11月16日にBrioni諸島西方で海底に接触して舵を失い、1916年の触礁時に失われその後回収されていた舵が取り付けられた[7]

12月19日、Cortellazzo砲撃を行う戦艦「Árpád」、「ブダペスト」を駆逐艦6隻などとともに護衛[8]

戦後はイギリスに引き渡され、1922年からベネチアで解体された[7]

脚注

  1. ^ a b c Austro-Hungarian Cruisers in World War One, p. 189
  2. ^ Austro-Hungarian Cruisers in World War One, p. 181
  3. ^ Austro-Hungarian Cruisers and Destroyers 1914-18, p. 29
  4. ^ The Great War in the Adriatic Sea 1914-1918, p. 171, Austro-Hungarian Cruisers and Destroyers 1914-18, p. 29
  5. ^ Austro-Hungarian Cruisers and Destroyers 1914-18, p. 30
  6. ^ The Great War in the Adriatic Sea 1914-1918, p. 186
  7. ^ a b c d e f Austro-Hungarian Cruisers in World War One, p. 182
  8. ^ The Great War in the Adriatic Sea 1914-1918, pp. 339-340

参考文献

  • 「Conway All The World's Fightingships 1860-1905」(Conway)
  • 「Conway All The World's Fightingships 1906–1921」(Conway)
  • 世界の艦船 第718号 近代巡洋艦史」(海人社
  • Zvonimir Freivogel, The Great War in the Adriatic Sea 1914-1918, Despot Infinitus, 2019, ISBN 978-953-8218-40-8
  • Zvonimir Freivogel, Austro-Hungarian Cruisers in World War One, Despot Infinitus, 2017, ISBN 978-953-7892-85-2
  • Ryan K. Noppen, Austro-Hungarian Cruisers and Destroyers 1914-18, Bloomsbury Publishing, 2016

関連項目

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