さまよえる宇宙船とは? わかりやすく解説

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さまよえる宇宙船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/23 15:32 UTC 版)

さまよえる宇宙船』(さまよえるうちゅうせん、英語:Starship Traveller)はイギリスゲームブック。著者はスティーブ・ジャクソン

ファイティング・ファンタジー』シリーズ第4巻。原書は1983年にパフィンブックスより刊行された。

概要

ブラックホールに吸い込まれて未知の空間に転移した宇宙船の船長として、星々を渡り歩きながら既知の宇宙への帰還を目指す作品。

FFシリーズで最初にSFを題材とした1冊である[1]。同シリーズのSF作品はゲームシステムに凝ったものが多い傾向にあるが、その先駆けたる本書ではとりわけ顕著であり、戦闘方法が3種類もあるうえ、シリーズで唯一の複数キャラクター操作システムまで使っている[2]

第4作で突然に、異様なまでの分量のルールシステムが追加された理由は、ひとえに「作者がスティーブ・ジャクソンだから」で説明がつく[1]。ジャクソンはもともと斬新な発想に長けており、同僚のイアン・リビングストンが基本線を守るのに対し、派手な作品を生み出すことが多かった[1]。ただ、ジャクソンは新機軸を導入する際、うまく機能することを考え、よく練り上げてから使うので、派手と言ってもやり過ぎない点が優れていた[1]。本書はそのジャクソンの数少ない失敗例であると、安田均は評している[3]

本書の総パラグラフ数は340であり、ストーリー中で訪問することになる星は20近くあるので、平均するとひとつの星では17パラグラフ前後しか費やしていない[4]。そのためどの星で起こる事件も、通り一遍の物となってしまっている[4]。このストーリー面での単純さを、ルールの複雑化で補おうとした節が見受けられるが、かえって煩雑なだけに終わっている[4]。つまりストーリーの面白さと、複雑なルールを活用する面白さを両立させるには、400にも満たないパラグラフ数では不十分だったのである[5]

ジャクソンは本書での失敗を踏まえて、ある程度の複雑さを追求するならば『ソーサリー』のような大作に仕上げる一方で、新しいアイディアをルールで表現するならば『地獄の館』の「恐怖点」のようなワンポイントに留めるという方法を確立し、いずれも成功している[6]

また、シリーズ後続のSF作品が有望な新人作家のデビュー作となり、それぞれが新しいルールの実験の場として機能するようになったのも、本書が生んだ結果と言える[6]

ゲームシステム

戦闘

船対船の戦闘
  1. 原則として、読者側が先手を取る。
  2. 〈サイコロ2個〉を振り、出目が自分の船の「武器力」よりも低ければ、攻撃が命中する。
  3. 命中した場合は再度〈サイコロ2個〉を振る。出目が敵船の「防衛力」以下であれば2点、上回っていれば4点の被害を与える。もし6のゾロ目が出たら、自動的に6点の被害を与える。
  4. 算出された被害の点数を敵船の「防衛力」から減らす。つまり、攻撃を当てれば当てるほど、被害が大きくなりやすい。
  5. 敵船に交代して、上記の手順を繰り返す。
  6. 以上をどちらかの「防衛力」がゼロになるまで交互に続ける。ゼロの状態でさらに被害を受けると、その船は爆散する。
素手での格闘戦
従来作に同じ。詳細はファイティング・ファンタジー#システムを参照。
フェーザー銃撃戦
  1. 原則として、読者側が先手を取る。
  2. フェーザーの目盛を「ショック」か「致死」のどちらかに合わせる。
  3. 戦闘の参加者が3人以上の場合、誰がどの敵を狙うのか決めておく。
  4. 〈サイコロ2個〉を振り、出目が自分の「技術点」よりも低ければ、攻撃が命中する。フェーザーの設定に応じて、敵は気絶するか、あるいは死ぬ。
  5. 敵側に交代して、上記の手順を繰り返す。なお、敵のフェーザーは「致死」に設定されており、標的はランダムに決める。
  6. 以上をどちらかが全滅するまで交互に続ける。ただし船長が死亡した場合は、直ちにゲームオーバーとなる。

宇宙船の乗組員

主要乗組員7名は、それぞれ〈サイコロ1個+6〉の「技術点」と〈サイコロ2個+12〉の「体力点」を備えている。

船長
作中で「君」と呼称される、読者の分身。
科学官
コンピュータの専門家。戦闘時は技術点が-3される。
医務官
医療の専門家。戦闘時は技術点が-3される。
技官
船の整備を担当する。戦闘時は技術点が-3される。
保安官
戦闘に長けている。
警備員
2名いる。

船長以外の乗組員が死亡した場合、その助手が昇格することになる。体力点は通常通りに決め直すが、技術点は前任者から-2した値となる。また、惑星に降りる際に助手を連れていくことはできない。それ以上の人員損失の危険を冒せないからである。

あらすじ

宇宙船「トラベラー号」は、ブラックホールとして知られるセルツィア空間に捕らわれ、次元を超えて並行宇宙に転移してしまう。

君は船長として、未知の星々をめぐりながら、元の宇宙に帰る手立てを探さねばならない。

書誌情報

脚注

  1. ^ a b c d 安田 1990, p. 116.
  2. ^ 安田 1990, pp. 115–116.
  3. ^ 安田 1990, pp. 116–117.
  4. ^ a b c 安田 1990, p. 117.
  5. ^ 安田 1990, pp. 117–118.
  6. ^ a b 安田 1990, p. 118.

参考文献

  • 安田均『ファイティング・ファンタジー ゲームブックの楽しみ方』社会思想社、1990年8月30日。ISBN 4-390-11350-X 

さまよえる宇宙船

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/22 15:17 UTC 版)

ファイティング・ファンタジー」の記事における「さまよえる宇宙船」の解説

スタートレック風の宇宙冒険SF未知宙域迷い込んだ宇宙船トラベラー号による、幾つかの惑星上で冒険を扱う。船長である主人公以外にも、技術点と体力点を持つ6人の乗組員科学官、医務官技官保安官警備員2名)が登場し銃撃戦ルール追加されている。

※この「さまよえる宇宙船」の解説は、「ファイティング・ファンタジー」の解説の一部です。
「さまよえる宇宙船」を含む「ファイティング・ファンタジー」の記事については、「ファイティング・ファンタジー」の概要を参照ください。

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