髄芽腫 定義(概念)

髄芽腫

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/27 10:10 UTC 版)

定義(概念)

神経細胞グリア細胞(神経膠細胞)に分化する前の未熟な細胞に由来する悪性腫瘍である。一般的に神経膠腫の一種ではなく別個の疾患として取り扱われることが多い。

髄芽腫と類似の腫瘍として、原始神経外胚葉性腫瘍(PNET; primitive neuroectodermal tumor)がある。小脳と大脳を分けている膜を小脳テントと呼び、PNETはテントより上の部分に発生することが多く、このようなものをテント上PNETと呼び、松果体大脳などに発生することが多い(まれに中脳などに発生することもある)。一方、髄芽腫はテント下に位置する小脳に発生し、特に小脳の中央に存在する小脳虫部に多く見られる。

PNETと小脳に発生する髄芽腫は、病理学的には極めて類似しており、一時は発生部位が異るだけで同一の腫瘍と考えられたこともあるが、異常を起している遺伝子が異り、またPNETは髄芽腫より予後が悪いなどの相違点も明らかとなり、現在では異なる腫瘍と考えられている。しかし、治療法などには大きな相違がない。

病態

90%以上が小脳虫部に発生するほか、小脳半球にも発生することがある。腫瘍細胞は細胞質に乏しく、細胞密度が高くなる。ロゼット状に形成され、壊死巣が見られることがある。実験動物[パポバウイルスを接種することで人為的に髄芽腫を発生させられるので、ウイルスが発生に何らかの形で関与しているのではないかと考えられている。

大半が散発性のものであるが、(1)ゴーリン症候群(母斑性基底細胞癌症候群)、(2)青色ゴム乳首様母斑症候群、(3)ターコット症候群(例えば、 グリオーマポリポーシス症候群)、および(4)ルビンスタイン-テイビ症候群が見られる場合には遺伝性の条件が関連している。

髄液を介して中枢神経系播種(種を撒いたように広がる)転移する傾向があり、全身、特に骨に転移することがある。

髄芽腫の細胞起源については明らかとはなっていない。1つの仮説は腫瘍が小脳の外顆粒層細胞に由来しているとするものであり、もう一つの仮説は、髄芽腫の源は後部の髄帆であるとする。

髄芽腫で見られる最も一般的な遺伝子の異常は17qiである。これは17番染色体の長腕上の同腕染色体であり、髄芽腫の3分の1から3分の2で見られる。この部位の異常は白血病を含む他の腫瘍でも良く見られるものである。 同腕染色体17qiに伴うのは、有名な癌抑制遺伝子P53遺伝子が位置している17番染色体の短腕(17p13.1)からの遺伝学的物質の欠落である。しかし、P53部分の欠落か損傷が髄芽腫ではまれであることが研究によって示されている。現在、17番染色体の短腕からの遺伝学的物質が、P53の機能に変調を来たしているのか、それともそれ自身にがん抑制遺伝子があるのかという点が研究されている。

疫学

小児に好発し、10歳以下の子どもに多く、15歳未満が約84%である。3、4歳が発症のピークである。20歳代でも稀に発生することがある。男女比は1.7:1と男性に多い。原発性脳腫瘍の1.2%、脳腫瘍全体では0.9%を占める。

小児悪性脳腫瘍の中で最も多く、小脳腫瘍の40%を占める。全国統計で小児の髄芽腫は年間40例-50例と言われているが、登録漏れの症例が多く、この倍の発生があるものと推測される。








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