語幹用法 語幹用法の概要

語幹用法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/07/09 00:34 UTC 版)

形態

形態としては、語幹と一致するが、機能としては連用形としても解釈しうる。「甘酸っぱい」「面白おかしい」の「甘」「面白」は語幹だが、「甘く酸っぱい」「面白くおかしい」の省略形であるとも謂える。ただし、「赤黒い」の「赤」は形容詞の語幹でも名詞でもあるので、解釈は複数ありうる。なお、形容詞のうち語幹が名詞と一致する語は「赤い」「青い」「黒い」「白い」であり、「名詞→形容詞」となったとも考えられる。「黄色い」「茶色い」はその例とみなせる。

使用実態

歴史的に古くからある用法であり、俗語でもなければ誤用でもない。しかし、使用には地域差があり、中部地方から九州地方にかけて盛んに用いられるのに対し、東日本ではほとんど用いられてこなかった(例えば、痛みを覚えた際、西日本では「いた!」と言う人が多いが、東日本では「いたい!」や「いてえ!」と言う人が多い)。東日本における語幹用法の使用は、テレビなどのマスメディアを通じて、若者世代を中心に急速に広まったと考えられている[1]

急速な使用の拡大から、東日本では語幹用法を「若者言葉」や「日本語の変化」と捉える人々も存在し、それを踏まえて文化庁は語幹用法を平成22年度国語に関する世論調査の調査対象とした。国語に関する世論調査では、「寒っ」「すごっ」「短っ」「長っ」「うるさっ」の5種類について、どの程度使われているか、また気にされているかが調査された。その結果、「寒っ」では「自分も使う(又は,使うことがあると思う)し,他人が言うのも気にならない」と回答した人が6割を超え、「自分は使わないし,他人が言うのも気になる」と回答した人は1割に留まった。「寒っ」以外では「自分も使う(又は,使うことがあると思う)し,他人が言うのも気にならない」と回答した人は2〜3割台に減少したが、それでも「自分は使わないが,他人が言うのは気にならない」と回答した人が4割前後あり、「自分は使わないし,他人が言うのも気になる」と回答した人は1〜2割台に留まった。 ただし、これはハレの場では使われず、ケ(褻。くだけた日常の場)でのみ使われるという解釈もある(ハレとケ)。「苦い」を「にっがぁあ!」、「早い」を「早っ!」と表現することは、ケの場であるバラエティ番組の場面では珍しくない。

語幹用法の作り方

古典語においては、感動詞「あな」などとともに用いたり、語幹の後ろに終助詞「や」などを付けたりすることが多い。

  • 古典語の語幹用法の例[2]
    • うれし→あな、うれし(『竹取物語』火鼠の皮衣)
    • めでたし→あな、めでたや(『徒然草』236段)
    • うまげなり→あな、うまげ、ただ一口(『今昔物語集』巻27の15)

現代語においては、語幹用法を文字化する際、末尾に小書きの「つ」を添えることがある。しかし、促音は前後の音節に挟まれていなければ発音できないので、実際には促音ではない。語幹の部分を長音化させることも多い。

  • 現代語の語幹用法の例
    • 早い→はや!/はやー!/はっやー!
    • 痛い→いた!/いたー!/いったー!
    • 怪しい→あやし!/あやしー!/あっやしー!

出典


  1. ^ 『ものの言いかた西東』岩波書店、2014年、小林隆・澤村美幸、62-63頁
  2. ^ 『標準 新 古典文法』文英堂、2009年、山口尭二、36頁


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